5月23日(日)~28日(金) 自分がいない町
5月23日(日)
友人宅で昼頃目覚める。近所の商店街を散歩してタピオカを飲んだりした。
友人は夕方頃に起きてきて、そのまま夜中までだらだら。人生は無だな、という話をずっとしていた。何もしなかった。
5月24日(月)
電車に乗ろうかと思っていたけど、天気も悪くないので歩くことにした。
四条大宮から北東の方角へとひたすら歩く。京都は歩こうと思えば歩けなくないサイズ感がいい。飽きない。
寺町丸太町上がるのUCHUでおしゃれな落雁をお土産に買った。
そしてそのまま出町柳まで歩く。
今回京都に来た薄い目的としては、訪問したい本屋が2つあったのだけど、急な訪問すぎてどちらも店の人と会えなかった。予定を立てるのが苦手だからしかたない。
1つ目、CAVA BOOKS出町座という映画館に併設された書店。ここに来るのは初めて。いい品揃えでいい雰囲気。こういう店が何でもない商店街にあるのが京都っぽいなと思う。
2つ目は京都大学生協。京大卒の作家が在学時に影響を受けた本を紹介するフェアに参加しているのでそれを見たかったのだ。
フリーペーパーがたくさんあったのでいろいろもらいまくってしまった。
ちょっとだけ京大のキャンパスの中も歩いた。
キャンパスは昔とあまり変わらないのに、自分はすっかり年をとってしまった。この空間で過ごすあのキラキラした唯一無二の時間はもう自分のものではなく、今の時代の若者たちのものなのだ。なぜだ。あの経験は自分だけのかけがえのないもののはずなのに、もう自分のものじゃないなんておかしい。そのことに少し納得がいかないような気分になって悲しくなる。京大に来るたびにそんなよくわからない気持ちになってしまうな。
歩き疲れたので帰りはタクシーに乗った。
行き先を告げると、運転手さんがいきなり飴を渡してきた。しかも包み紙を開けて、中身だけを。つらい。正直いって全然食べたくないんだけど、こんな形で渡されると食べるしかない。口に入れると甘ったるい懐かしい味が広がった。黄金糖だ。昔食べたな。
運転手さんは70過ぎで、もう何十年も青森に帰ってないみたいな話をする。「帰りたくても今さら帰れねえよ」とか言うので、「いやー、帰れるうちに一度帰ったらどうですか」みたいな適当な返事で流していたんだけど、ふと車内の手すりを見ると、そのくぼみに何かが入っている。なんだろう、とよく見ると、それは、どろどろに溶けた黄金糖が、べったりとくっついていたのだった。うわあ……。無理やり黄金糖を渡された前のお客さんがここに棄てたのだろう……。
そんな体験を最後の思い出として、東京へと戻った。
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