数学の記述答案を見るたび思うこと
自分の所属している予備校では、毎年前期・後期に数回ずつ、東大志望の理系生を対象に演習テストが実施される
そして、テスト答案の採点を(一部ではあるが)私も担当している
ちょうど先日、前期分の採点業務が一区切りついたところであり、また今年も同じようなことをぼやきながら赤入れをしているなと振り返っていた
ふと、せっかくだしどんなことをぼやきながら普段採点しているかをnoteに残して見るのも良いかと思い立った結果が、この記事である
あくまでも1個人のぼやきではあるが、これらのぼやきを教訓に読者にとってよりよい答案作成につながれば、ぼやきも無駄ではないだろう
1:この字は読めないなぁ
大前提として、書いていないことは示されていないこと扱いであり、「読めない=書いてない」と見なさざるを得ない
採点するときは最大限文字の判読を頑張るが、どう頑張っても読めない字はままある
誤解をしないでいただきたいのが、癖で字が汚いだけなら頑張って読めることであり、ここで言う「読めない字」の大半は「雑な字」であることだ
試験時間内で急いでるのはわかるが、その結果読めない字になっては意味がない
日頃から気をつけて字を扱うようにして欲しい
2:あー、ここからここの変形でミスしてるよ
失点や減点の多くは、ケアレスミスによるものである
論理的に正しくとも、ケアレスミスで数値が誤っている解答は大変多い
大問の最初の最初でミスをしようものなら、解答全体に影響が波及する
いくら理屈が正しくても、違う数字で違うことをし始めたら採点はされない
自分のケアレスミスに対して、短い時間内でもチェックするタイミングを必ず取り、取り返しのつかないミスをしていないか確かめて解き進めよう
3:いや、それはそんなに自明じゃないでしょ
個人的に、採点していて一番「イラっ」とくることの第1位は「〜〜は自明である」と書かれた答案をみることである
自明なら書かなければよいし、わざわざ「自明である」とかいわず「〜〜である」と断言すれば良い
また、このように「自明」と書いてある答案には、非自明なことを証明抜きで使おうとしているものが散見される
このような「誤魔化し」は通用しないので覚えておいて欲しい
4:なんでこの答えでいけると思ったんだろ
最終的に得られた答えについて、すこし考えればこれはあり得ないってわかりそうなものを、と思うことは多い
確率の問題で負の数になったり1を超える・距離を答えるのに負の数・異なる2数を使っているはずなのに、分数=1になっている etc...
問題を解き終えて、「はい終わり!次!」となる気持ちはわかるが、ものの数十秒解答を吟味するだけで避けられるミスなのだから、得られた解答を精査する習慣を身につけよう
5:図を描け、図を
図形的な話をしているのに、解答用紙に図が書いてないことがある
多分、問題用紙の余白かどこかに図はあるのだろうが、それは採点する側にはわからない
図が書いてない状態で図のことを説明されても、「いやわからんがな」となることの方が大半である
自分が考えている図を描けばそれで解決する問題なので、「図を描け、図を」の一言に尽きる
6:この部分、根拠が薄いなぁ
「自明」うんぬんにも通じるのだが、根拠となる条件が足りない解答をよく見る
多分解いている側は、問題を解く時にあれこれと頭を悩ませ、そのときに考えた条件が頭の中にはあるのかもしれないが、問題文や解答用紙に書いてないことは示していないことと同じである
よく見る例は、未知数での割り算である
未知数が0にならないことの確認をしないで割り算を実行している解答が多く見られる
また、根拠が薄いとは少し違うが、全く根拠にならないことを理由にして説明されている答案もたまに見かける
「それは何故か」と自問する習慣をしっかりと身につけて欲しい
答案を作るということ
数学の記述答案作成は「自分はこの問題をここまで理解しています」というアピールと心得るのが良い
自分の理解のアピールのためには、多くの場合日本語を併用した説明が欠かせないし、そもそも読んでもらえないのではアピールには到底なり得ない
自分の数式がどこから来ているのかを採点側に適切に伝えようと思えば、何を根拠としているのかが希薄になることも減るだろう
こういった「自分の理解のアピール」と捉えれば、ケアレスミスでアピールに失敗するのがどれほど馬鹿らしいかもわかるだろう
上記のことをできるようになるためには、それ相応の訓練と環境がいる
まずは日頃の学習から自分の理解に関心を持ち、何故そうなるのか自問する習慣が必須である
また、自分の理解を確認するチャンスとして模試を利用することも考えたいし、模試や演習授業を通じて答案に赤を入れてもらう機会は極力逃すべきではない
場合によっては学校の先生や塾の先生に自分の答案を見てもらえないか打診するくらいの積極性を持ち、より良い学習環境を自ら作ろうという気概を見せて欲しい
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