最初から最後までジャンプしかできない男『FF4』カインの男らしさ

『ファイナルファンタジー4』の竜騎士カインの話です。

『FF4』の主要キャラであるカイン。見た目のカッコよさに反して、様々な要素が絡み合った結果、作中屈指のネタキャラとして扱われる一面をもっています。

ヒロインのローザに思いを寄せるも、彼女のはセシルにひたすら一途でカインは箸にも棒にもかかりません。作中では敵に操られて味方を何度も裏切ることに。もちろん彼が望んでそうなったわけではありませんが、何度も裏切る展開や、「おれは しょうきに もどった」などのセリフも相まって裏切り者キャラとしての地位を確立。物語の最後には、自分の心の弱さを恥じ、山で1人修行の日々を送ることになるなど、負け犬のレッテルを貼られています。

ストーリー的に悲しい役回りであるだけでなく、ゲーム攻略の上でも今ひとつパッとしない役回り。なにしろ彼は最初から最後までジャンプしかできません。

ローザなど魔法使いキャラはレベルアップでどんどん魔法を覚え、最初と最後で比べると、著しい成長を見せてくれます。ヤンやギルバートは中盤のみの参戦ですが、多彩なコマンドを所持。戦闘に様々なバリエーションを加えてくれます。

なのにカインはジャンプだけ。1番最初から1番最後までひたすらジャンプするだけです。

リディアには物語途中で、恐怖の対象である炎を克服してファイアを覚えるというドラマチックなイベントが。エッジはルビカンテとの戦いの前に覚醒して忍術を使えるようになるという熱い展開が待っています。我らがセシルは自分自身と対峙し、暗黒騎士からパラディンへ転身し、戦闘面での立ち回り方も大きく変化します。

なのにカインはジャンプだけ。操られて裏切ったり、バルバリシア戦前にカッコつけたりとイベントは豊富に用意されているのに、使えるコマンドはジャンプだけ。

ラスボスであるゼロムス戦前、パーティメンバーを見返しみて愕然とします。それぞれに多彩な技や、新しい能力を得て、見た目が変わった人もいるのに対し、カインだけはオープニング直後とまったく同じ。コマンド欄に燦然と輝くのは、ゴブリン達をポコポコ叩いていたころに愛用していたあの「ジャンプ」です。

最後の戦いも、とにかくジャンプ、ひたすらジャンプ。

ゼロムスと戦いながらジャンプしかしない彼の姿が滑稽で、笑いがこみ上げてくる始末。ところが不思議なことに、何度も破れてゼロムスに再挑戦を繰り返すうちに、次第にカインへの尊敬の念が湧いてきたのです。

レベル10に満たない頃から、レベル40~50になるまで、ジャンプ一本で生きる戦士。その姿は、ひたすら野球に打ち込み続けるイチローや、テレビ、映画、ネットメディアと場所を変えながらも常に笑いを探求し続ける松本人志のようなその道を極めようとする男の生きざまを感じました。

物語冒頭で彼自身が語った、「おれには こっちのほうが しょうにあう」という言葉が、深みを帯びて聞こえてきます。

結果、FF4のプレイ以降、「竜騎士」、「槍使い」、そして「ジャンプ」に魅入られてしまいました。

その後も、FF5ではバッツにジャンプのアビリティを持たせ続け、FF6ではロックに竜騎士の靴をはかせ、もちろんFF7はシドをばりばり育てました。聖剣2ではランディにヤリを使わせ、聖剣3ではもちろんリースを主人公にし、LoMでもヤリ一本で戦い抜きました。ロマサガ2では下り飛竜を愛用し、少し飛んでドラクエ9の主人公は槍使いのパラディンに転職させたものです。

カインに魅入られ、あらゆるゲームでもカインのように生きようとする人間になってしまいました。

いろんなことができる、多芸でマルチな男はかっこいい。

でも、カインのように、一点集中で極め続ける職人のような男もかっこよくて捨てがたい。

理想的な、古き良き男です。