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こはる奥様ストーリー【1】


 こはるさんは、見た目クールでお淑やかなお嬢様と言った感じなのに、とても人当たりの言い人だった。
「はじめまして。今日はよろしくお願いしますね」
 僕が約束をした相手だとわかるや、その涼やかな顔に可愛らしい笑みを浮かべてくれる。
 想像してみて欲しい。
 待ち合わせ場所に涼やかな顔で立っているちょっと近寄り難いくらい美人な女性が、こっちのことを認識した途端、少女のような微笑みを浮かべる様子を。
(そんなの好きになっちゃうに決まってるじゃんか……!)
 毎月何度かデリヘルを利用し、当たりも外れも経験して来た僕でも、そう思ってしまうくらいには、こはるさんの魅力は素晴らしかった。
 僕は若干緊張している様子のこはるさんを連れ、ホテルまでの道のりをゆっくり歩くことにした。
 しかしこういう時、どんな話をしたらいいのか、若干悩んでしまう。
(なんせ僕はただの事務員だしなぁ……)
 何か面白い仕事でもしていれば話も膨らませやすいのだけど、当たり障りのない話しか出来ない。
 せっかくの楽しい時間なのに、仕事の愚痴なんて言いたくなかった。
 これからこはるさんと夢のようなひと時を過ごすのだから。
 こはるさんは僕の隣を歩きながら、笑顔を浮かべてくれていた。

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