れな奥様ストーリー【1】
1:
ごくりと喉が鳴る。ついにこの時が来た。
寒いふりをしてポケットに手を入れているが、中にはプラスチックのリモコン。
目の前では、それはもう可愛らしい”奥様”が、目を潤ませてこちらを見ている。
(飛ばすなよ、俺。じっくりやらないと……)
駅の雑踏が遠のく。マスクの下で唇を舐めた。
*
夜のコンビニで、缶ビールとつまみの惣菜をレジに出す。冬の寒さが身に堪えるが、冷えたビールは止められそうにない。
スマホを読み取り機にかざしたとき、ふわりと鼻に良い匂いが届いた。
(お、いい女)
ちょうど入店した若い女性が後ろを通り過ぎていく。仕事帰りで疲れ顔だが、小綺麗な服装とのギャップでむしろそそられる。
どことは言わない、体が熱くなる。些細なきっかけで、無視されていた性欲がむくむくと主張してきた。
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