見出し画像

れな奥様ストーリー【1】

1:
 ごくりと喉が鳴る。ついにこの時が来た。
 寒いふりをしてポケットに手を入れているが、中にはプラスチックのリモコン。
 目の前では、それはもう可愛らしい”奥様”が、目を潤ませてこちらを見ている。
(飛ばすなよ、俺。じっくりやらないと……)
 駅の雑踏が遠のく。マスクの下で唇を舐めた。

 夜のコンビニで、缶ビールとつまみの惣菜をレジに出す。冬の寒さが身に堪えるが、冷えたビールは止められそうにない。
 スマホを読み取り機にかざしたとき、ふわりと鼻に良い匂いが届いた。
(お、いい女)
 ちょうど入店した若い女性が後ろを通り過ぎていく。仕事帰りで疲れ顔だが、小綺麗な服装とのギャップでむしろそそられる。
 どことは言わない、体が熱くなる。些細なきっかけで、無視されていた性欲がむくむくと主張してきた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?