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心理臨床セミナー2023 第5回(2024/2/4)に参加して

心理臨床プラットフォームが企画に参与している「2023年度心理臨床セミナー」(主催:心理相談室アフォーダンス)の、第5回「セラピストが『不安・葛藤・迷い』を感じること ―― その重要性を考える」に参加した。

不安や葛藤や迷いを感じながらクライエントに会うことは、面接者にとって決して楽なことではない。
筆者は初心の頃、<この理解で良いのだろうか><どう応答すれば良いのだろう><クライエントからの贈り物を受けとるべきか受けとらないべきか>等々等々、面接の度に千々に思いは乱れ、呻吟していた。そして、勉強や経験を積み重ねていけば、不安や葛藤や不安を感じることや度合いや頻度は少なくなり、自信をもって臨床実践に臨むことができるようになるのだろうと期待していた。
ところが、まったくそうではなかった。今でも筆者は、不安や葛藤を感じながら、迷いながら、毎回の面接に臨んでいるし、むしろそれは当然のことだと思っている。
今回のセミナーでの講師の話は、そうした筆者の思いが間違いではないと、力づよく保障してくれるものであった。

面接における不安・葛藤・迷いは、なくなるものではないと講師は言う。しかし、それは決して消極的でネガティブな意味をもつことではなく、むしろ、クライエントからの「呼びかけ」を捉えるために、そしてクライエントとの面接が「生きたもの」となるために必須であり、積極的な意味をもつものであることを明らかにしてくれた。

今回のセミナーは、これまでの筆者の思いを力づけてくれただけではなく、これまであまり考えたことがなかったこと、あるいは盲点となっていたことを考えるためのいくつかのきっかけを、筆者に与えてくれるものでもあった。その一つが、「葛藤」の意味である。

筆者はこれまで「葛藤」という言葉を、英語の“conflict”の意味、すなわち「二項対立」という意味でのみ捉えていた。自身のクライエントとの関わりについても「葛藤」をそのように考えていたし、学生にもそのように説明していた。
しかし、そもそも「葛藤」を、なぜ「葛(かずら)」と「藤(ふじ)」と書くのか。それは、葛と藤が絡みつき、もつれて、どうにもこうにも解きほぐせない様子を示しているのだということを講師は示し、それを「もつれとしての葛藤」と表現した。
―― まさに、目から鱗。だから「葛」と「藤」なのだ! そして、この気づきは、面接におけるクライエントとの関係を、より多面的に、精密に、陰影深く捉える上で、筆者にとって大いに資するものになるだろうと感じた。
と同時に、「葛藤」という言葉に何ら疑問をもつことなく、調べることもせず、心理学の授業で教えられたままに受け取ることしかしていなかったことを恥じた。そして、同じようなことをクライエントに対しても、自分はしているのだろうと、改めて思った。

このセミナーに参加して後、心理臨床についての筆者の不安や迷いは、一層深くなった ―― 良かった良かった。(右)

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