日本心理臨床学会第42回大会自主シンポジウム「心理臨床のコアを探す」を終えて

 心理臨床の本質、底に流れるもの、共有するものは何なのか・・・それを私たちの言葉で表現していこうというチャレンジとして、自主シンポジウムを開催しました。定員をほぼ満たす多くの方の参加があったことは、とても嬉しいことです。まず、安部先生から、心理臨床の専門家養成大学院の現場から話題提供がありました。曖昧さを回避しようとする近年の学生の指向と、大学教育の限界についての議論に触れて、既にできあがったものではなく、私たちで言葉にしていくものではないかという示唆と共に、「わたしの行為」として今のご自身のコアについて語ってくださいました。続いて青山先生には、学校臨床について、カウンセラーがどのように相談者と共に居るのか、ご自身の姿勢や立ち位置について教えていただきました。クライエントが「この人に話してみよう」と思えるところから、丁寧に一歩を始めようとされているところが、とても印象に残りました。病院臨床の森先生は、22年間という長きにわたっての実践を、病院の中での主たる一貫性のある実践と、周りの要請に応じての実践(周辺の実践)という2つに分けて示されました。視野を広げて自由に考え続ける営みが、ご自身の実践と共にあるのだということが伝わってきました。
 3名の話題提供の後、指定討論者である一丸先生からのお話がありました。一丸先生の臨床実践において、最初のスーパーバイザーの言葉に出会い、50年間をかけて「カウンセリングとは何か?」という問いに対する答えをご自身の言葉で紡ぎ出してこられたことを教えてくださいました。そこで印象に残ったのは、クライエントと「個と個の関係になる」ということでした。テキストに書いてあることの実践は、個人によってやり方が違っており、私たちが個々にそれを磨いていかなければいけないのだと心に刻みました。とてもボリュームのある話題提供と一丸先生のコメントの後に小松先生から、改めて心理臨床のコアを探すこと、探し続けることの意義について問いかけがありました。小松先生のお話の中で、「開かれていること」という言葉に刺激を受けて、自分自身の臨床への思いをめぐらせつつ考えがまとまらないまま(開かれたまま)、あっという間に終了時間となりました。参加されたみなさん、ありがとうございました。これを機に、小さな対話やつぶやきがあちこちで生まれてくることを願っています。(KF)


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