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【元店長が語る】ペットショップで迎えた直後にパルボウイルスで死亡。病院の対応は・・・

このようなニュースがありました。

ペットショップ「クーアンドリク」で買った子犬が
「恐怖のウイルス」に感染して4日後に死んだ

https://news.yahoo.co.jp/articles/14adac7def11fde9850c39c77c4fd40e80909624
ペットショップ「クーアンドリク」で買った子犬が「恐怖のウイルス」に感染して4日後に死んだ 飼い主の悲しみを踏みにじった店側の「非情な対応」デイリー新潮 2023/8/15

この記事で感じた、元ペットショップ店長として働いていた私の感想は、「遅い。全てが遅い。」です。

正直、飼い主さんの初動も早くはない、店員の危機感もない、獣医さんの判断にいたっては、遅すぎるというより、あり得ないー。

私はそう感じてしまいました。

今回の告発での世間の反応は、

「検査を怠った」「病気の子を販売した」「治療費を負担すべき」

などという声が上がっています。
しかし、どれも現実的ではありません。

今回子犬が亡くなった背景は、致死率が9割あると言われているパルボウイルスを発症によるものです。

パルボウイルスの潜伏期間は4日~2週間、そして特定の環境下では半年~1年の間生存すると言われています。

昨日まで元気だった子犬が、翌朝元気がなかったということもあります。発症しないと、検査をしても陰性になります。発症する前日でさえ陰性の場合が多いです。

そんなパルボウイルスを、ペットショップが発症前に見抜くというのは困難です。

では、どうしたらこのパルボウイルスを防ぎ、尊い命を守れるのでしょうか。

今回の投稿は専門的な話になりますが、これからワンちゃんや猫ちゃんを迎える方にとって、とても大切なことをまとめました。
最後まで一読いただけると幸いです。

今回はワンちゃんのパルボウイルスについてまとめましたが、猫にもパルボウイルスはあります。全く同じということではありませんが、猫ちゃんを検討している方も一読ください。

まずは事件の時系列を紹介します。

事件の時系列

8月3日 ペットショップで子犬を購入
自宅の掃除にて「最初の糞が緩くて、掴んだら崩れそう。2度目のはもっと柔らかかった。」「元気と食欲はあった。」

8月4日 食欲低下と水下痢で病院へ
から元気もなく、食欲もなく、下痢。
午後になっても下痢は止まらず、やがて水下痢に。

ペットショップへ電話 「そういう子はよくいます。環境の変化で食べなくなってしまうケースもあるし、寄生虫が孵化した可能性もある。心配だったら病院に電話してください。」

病院へ 病院では体温は39.7度とちょっと高めであり、獣医からは「体の冷やしすぎかもしれない」と言われ、栄養補助食を入れてもらって帰宅。

8月5日 再び病院へ 
同じ病院に連れて行って点滴、帰宅後嘔吐、回復の見込みはなし。

8月5日夜8時 ダメ元で別の病院へ
「もしかして下痢をしている?」と聞かれ、パルボウイルスの簡易検査をしたところ、陽性に。

8月6日 赤い液体垂れ流し
翌朝さらに症状は悪化。眠ることもできず、下痢をくり返し、赤い液体をお尻から垂れ流す。

8月7日 死亡

病院の対応は、あり得ない

パルボウイルスは、急に症状が出て、みるみるうちに衰弱していきます。

迎えた直後の子犬の下痢で考えられる原因は、①ストレス②食べすぎ③寄生虫、などが多いです。ですが、本当に怖いのは水下痢をした時です。子犬が水下痢をしたのであれば、最初にパルボウイルスを疑います。水下痢をしたと伝えていながら、しかも元気も食欲もない状態でパルボウイルスの検査をしなかったことに関して、開いた口が塞がりませんでした。

パルボウイルスは1分でも早期治療を行わなければならないウイルス性感染症です。パルボウイルス感染症は、食欲低下、嘔吐、水下痢、元気喪失などが起こります。

普通の下痢ではなく、鼻につくような悪臭の水下痢が特徴です。

ドラマ、「JIN -仁-」で話題になったコロリと症状は似ています。特効薬はなく、脱水を防ぐための対処療法しか術はありません。

そして、子犬の致死率は9割と言われており、子犬にとって一番危険といってもいい感染症のひとつです。

おそらく生後2か月の子犬だったのでしょう。
幼い子犬が水下痢だけではなく食欲も元気もないのであれば、もうパルボウイルスと判断して処置をはじめた方がいいぐらいです。(検査結果が全て正しいとは限らないため。)

ペットショップでは、パルボウイルスを発症する子犬が時々います。その多くが入荷されて1週間以内です。発症すると致死率は9割を超えると言われていますが、スピード感を大切に適切な治療を行えば、経験として致死率は5割もありません。

ペットショップでは防ぐことができない

パルボウイルスは、混合ワクチン接種で防ぐことができる感染症のひとつです。では、ペットショップでは混合ワクチンを打っていなかったのではないかと言えばそうではありません。必ずペットショップは混合ワクチン接種を入荷時に打っています

ワクチンさえ打てば発症しないはずのパルボウイルスが、なぜ発症してしまうのか。

それはペット業界として、集団免疫がないからです。その理由をひとつずつ解説していきます。

①ワクチンを打たずに流通へ

子犬の混合ワクチン接種スケジュールは以下の通りです。

1回目 生後8週齢頃
2回目 生後11~12週齢 (1回目の3~4週間後)
3回目 生後14~16週齢 (2回目の3~4週間後)

この1回目のワクチンを打つタイミングと、子犬を販売できる生後57日以降(生後8週齢)がかぶっている訳です。

つまり、子犬はワクチンを打っていない状態で、流通にでなければなりません

ワクチンにも種類がありますので、販売する子犬に接種するワクチンは一律してペットショップが管理しています。そのため、ブリーダーが子犬にワクチン接種することはありません。

ちなみに、ワクチンを3回打つ理由は、母親から貰える抗体が子犬に残っているうちは、ワクチンの効果がでないからです。子犬は初乳(最初の母乳)や胎盤などを通じて母犬から抗体をもらいますが、その効果が切れるタイミングが、子犬によって違います。生後7週〜12週の間で切れると言われています。

※法律では生後57日から販売することができますが、はやく販売するために誕生日を前倒しして偽るブリーダーは多いです。本当は生後45日なのに、生後57日と偽ることはペット業界として当たり前に行われています。

②母親に抗体がない

母親に抗体がなければ、子犬に抗体移行しないと言われています。
通常、子犬の頃は混合ワクチン接種を行いますが、大人になった時に、親にも混合ワクチンを打つブリーダーは多くはありません。

弊社、ペットの実家では、親への接種も行っているか確認していますが、接種について難色を示すブリーダーは意外と多いです。

親へ接種を行っていないということは、ペット業界として集団免疫を獲得できずに、パルボウイルスが蔓延してしまいます。

このように集団免疫がない状態で、子犬は抗体があるとは限らない状態でペットショップへやってきます。抗体がないまま流通にでて、ペットショップの管理センターなどに到着してからはじめてワクチンが打たれます。(ペットオークションで接種することもあります。)

ペットショップの子犬の出身地を見ていただければ、様々な地域からやってきていることが分かると思います。

福岡出身の子犬が東京にいることもありますよね。

抗体がないまま流通にでていることが原因で、子犬はパルボウイルスに感染しやすくなります。もっと怖いのは、ペットショップでは様々なところからやってきた子犬たちと生活を共にしなければならない点です。

最近は法改正もあり、子犬の展示スペースがかなり広くなりました。
運動場のように広く、5〜6頭同じスペースでじゃれ合いながら遊んでいるショップが増えています。じゃれ合っていて可愛らしいので、見栄えはいいですが、もしパルボウイルスに感染していたら悲惨です。想像したくもありません。
多頭飼育展示は見栄えと、子犬の心が成長する社会性にはいいですが、感染症のことを考えると、元店長として働いていた私から見れば、できればしたくありません。ショーケースで仕切りがしっかりあるところで飼育したいという気持ちが本音です。

パルボウイルスを防ぐためには

ここまで専門的な話にお付き合いいただきありがとうございます。

ここからが大切ですね。パルボウイルスを防ぐためには、ブリーダーや、ペットショップでの管理が大切なことは言うまでもありませんが、私たち、飼い主さんにもできることがあります。

それは、子犬を流通させないことです。

ペットショップがある立地は、私たちの生活圏内にありますよね。とても便利な場所にあります。

反対に、ブリーダーは便利な立地でブリーディングしている方はあまりいらっしゃいません。散歩やドックラン、鳴き声などの騒音を考え、地方へ引っ越すブリーダーも多くいます。

ペットショップで働いていると、電車で20分の距離でさえ移動したがらないお客さん、結構多いです。

あなたが移動したくない距離以上に、子犬を移動させていることに気付いてください。子犬の流通を、安易に考えすぎです。

片道3時間程度であれば、車で迎えに行ってあげてください。
できることなら、優良なブリーダーから迎えてください。

流通直後の子犬と子猫を実際にみると、悲惨ですよ。

特に子猫は1週間自分でご飯を食べません。強制給餌です。いやいやと顔を横にふる子猫の口に無理やりご飯を突っ込むのですから、心が痛くなります。

生後2か月未満の子が、段ボールに入り、トラックで運ばれてくるわけです。

オークションで段ボールに入れられ、ワンワンうるさい中でベルトコンベアで運ばれ、急に段ボールを開けられたと思えば、見ず知らずの人に健康診断をされ、そして見世物にされ、競られ、また閉じ込められ、移動し、到着した先でまた段ボールが開き、いきなりワクチン接種と、太い針で直径2mm以下のマイクロチップを挿入される。
その後店舗へ移動し、展示され、家族を待つ。

ペットショップで迎えるということは、オークションを経由していようがなかろうが、あなたは、家族にそんな仕打ちをするということです。

ペットショップという場所は便利ですが、あの子たちが家族と出会うまでが大変です。

そのため、ブリーダーから迎えた方がいいと思い「あなたと出会うまでも、幸せに。」というテーマでペットの実家をスタートさせましたが、

ブリーダーもピンキリです。
ブリーダーと直接取引するということは、リスクがあります。

不動産を通さず、直接オーナーと家を売買するようなものです。

YouTubeで有名なブリーダー、
テレビにでているような、悪徳とは到底思えないようなブリーダーから迎えた方から

ありえない相談を毎日のようにうけます。

「食器用洗剤で猫は月に2度洗うものだ」とか、「食べない時にどうしたらいいですか」と相談したら「ほっとけばいい」と回答した、有名なブリーダーもいます。

ペットショップは流通する分、感染症にはかかりやすです。しかし、第三者の目が入るために客観的に健康はチェックされます。反対にブリーダーと直接取引するときには、正直なブリーダーでないと騙されやすいです。ペットショップは不動産のような役割を果たしています。

迎える前に、できること

これから家族を迎えようとするとき、安易にペットショップに行かず、
そして安易にブリーダーを選ばない方がいいと考えています。

口コミで判断する前に、このブリーダーでいいのか、このペットショップでいいのか、たくさん調べてください。判断基準を増やしてください。

犬種や猫種の歴史や特徴、なりやすい病気、年間治療費なども調べてください。犬種によって年間治療費はかなり違います。

そして、今回のパルボウイルスも残念ながら決して珍しいものではありません

「子犬 なりやすい病気」で検索すると、ほとんどのサイトにその危険性と共に、詳細が書かれてあります。

そして、迎えた後に何かあれば、すぐ、すぐに、病院へ行ってください。獣医さんの説明に違和感を感じれば、すぐ次の病院へ行ってください。

子犬との生活は初めてだから、獣医さんがそういうのであれば・・・と思ってしまうのも無理はありませんが、家族のことを一番心配して、理解しているのはご家族、あなたです。
子犬、特に生後2か月であれば、営業時間外でもすぐに病院へ行ってください。食べない時、元気のない時も病院へ行ってください。朝まで待とうとしないください。

子犬、子猫と家族になるということは、幼稚園児を育てるのと一緒です。

感染症にもかかりやすいし、下痢もしやすい、食べすぎただけで下痢を起こし、遊びすぎただけで低血糖を起こし倒れてしまう。

そんな生き物です。生き物ですから絶対健康とも言えません。

しかし、管理を徹底していれば、こんな悲惨なことが起こる確率はゼロに近くなります。つまり、お迎え方法次第で、子犬・子猫の体力や免疫力、感染症や、性格にまで違いがでます。

たくさん不安を煽ってきましたが、ワンちゃん、猫ちゃんとの生活は怖いことだけではありません。たくさんの幸せを運んできてくれます。

私は飼い主さんの、引き渡し直後の、大事そうに、やさしくキャリーケースを抱えて帰っていく後ろ姿が大好きです。

これから子犬や子猫を迎えたい方、Instagramやメールでお問い合わせください。ペットの実家の詳細は概要欄に記載しています。

最後までお読みいただきありがとうございました。
この動画がためになったよという方、ぜひ良いねをしていただけると嬉しいです。

みなさんが素敵な家族と巡り会えますように。