三歳娘との焼肉ランチで考えた、仕事をする上で大切なこと
三歳の娘のために、美容院の予約をいれた。
七五三のまえに、少し整えておこうと思ったのだ。
美容院と病院の区別がついていない可能性があったので、私は「美容院は、まえに娘ちゃんがぶどうジュースもらったところだよ」と何度も言い聞かせた。
娘は「びよーいんで、ジュースのみたい!」とうれしそうだった。
*
当日。美容院に到着し、案内され、私は異変に気づいた。
ジュースが出てこない。
子どもへのごほうび(もとい、じっとしてもらう術)は、どうやらジュースではなく、タブレット端末に変更されているようなのだ。
毛量の少ない娘のカットは5分ほどで終了した。
料金を支払い、美容院をでてしばらくしたところで、娘は突如、立ち止まり、遠くを見ながらつぶやいた。
「あのさぁ…。ジュース、もらえなかったよね…」
*
ご、ごめんよ~~~。
家では飲ませてもらえないジュースを娘はたのしみにしていたにちがいなく、また、美容院では言わなかったあたり、三歳なりに気をつかっていたのだと思うといじらしく、私は、娘にごほうびをあげようと決意した。
ちょうど昼時だったので、目の前にあったチェーンの焼き肉店に入った。自分にはビビンパ、娘にはハーフサイズの子ども用クッパというものがあったので、店員さんを呼んでそれを注文した。
「さっきジュース飲めなかったし、デザート頼もっか」と提案すると、娘はぱぁ~~~っと顔を輝かせ、ウン!!!とうなずいたので、アイスクリームも頼んだ。
娘はクッパを食べているときから、「あとで、あいす…」と待ちきれない様子だった。
食後に提供されたアイスははたしてとても美味で、娘はたいへんうれしそうな顔をしてほおばっていた。
アイスを食べ終わったところで、さきほどの店員さんが、再びテーブルにやってきた。
「食後のサービスです!」
そこには…
アイスがあった。
*
いやいやいやいやいやいや。
そこは… 先にいってくれ~~~~~!!!
*
おそらくアルバイトであろう店員さんは、すべてをマニュアルどおりに、きっちりこなしていた。
ランチに子ども用クッパを頼んだ人に「ねぎは抜きますか?」「こしょうはかけますか?」と尋ねるのも忘れなかったし、こちらから言わなくても、子ども用食器とスプーンも出してくれた。
しかしながら、ランチの客が夜用メニューを引っぱり出してきてアイスをオーダーした場合に、どうするか…というマニュアルはなかったのであろう。
もし私がgoogleレビューに「アイスを注文したら被ってしまいました😡もう行きたくありません」などと書いたら、店側は「ランチメニューにはアイスがついています」とメニューに記載したり、事前の声がけを徹底するのだろう。トラブルが起こったとき、ワークフローやマニュアルを作る、というのはビジネスの鉄則だ。
しかし、マニュアルでは限界があるんだよなぁ~、と考え込んでしまった。
十年以上社会人をやっていたら、マニュアルに存在しないことが発生するなんて日常茶飯事だとわかる。そのたびにマニュアルを作っていたら、蟻地獄ならぬマニュアル地獄におぼれて窒息してしまう。
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店員さんを責めるつもりはまったくない。自分が大学生のころを振り返ると、マニュアルどおりにすら満足にできなかった。マニュアルにさらに、プラスアルファでなにか価値をつけることなんて到底不可能だった。マニュアルどおりにできているだけですごいと思う。
しかし、いつかは「いわれたことだけ、やってればいい」から「いわれたこと以上のことをやる」というフェーズに移行しないといけない時期がやってくる。
女性はお茶を入れろとか、年下は年上のために残業しろとか、そういう古き悪しきしきたりはもちろん廃止されるべきだけど、自分の生業で「いわれた以上のことをやる」ってけっこう大事だと思う。身分固定の江戸時代ならともかく、資本主義社会では、ずっと「いわれたことだけ」「マニュアルにあることだけ」やっていると、自分が永遠にその程度の仕事しかできなくなる。そういう社会の仕組みなのだ。
外資系の会社で十年以上働いているが、言われたことしかやらない人=すなわち思考停止状態の人は、やがて必要とされなくなる。どんなに小さなことであっても「ここって変えたほうがいいのでは?」とか「チームにシェアしましょう」とか、能動的に取り組める人が、会社に(というか、会社の外の労働市場でも)で評価され、つぎのステージに進むことができて、お金がもらえる。
だから「時給が安いアルバイトだから」とか「リーダーじゃないから」とか、理由をつけて受動的になる人は、一見エナジーセーブをしているようで、自分の価値を貶めている。長い目でみたとき、受動的でいて、稼げなくて、いいことなんて、何にもないんじゃないだろうか。
仕事は、つねに自分から、自分事として、「いく」しかない。
そのことを思い出させてくれて、仕事への気合を入れなおすきっかけをくれた焼肉屋さんには、とても感謝している。
「しろ」さんのこのnote、とても好き。
こんな風に前向きに取り組めるの理想だなぁ。
娘は、アイスをふたつも食べられて、終日たいそうご機嫌だった。
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