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伊藤大輔『獅子の座』メモ(1)

伊藤大輔監督『獅子の座』について、2016年3月6日にツイッター上に連投したのをまとめました。
一番下に元ツイート最初の1つだけリンク貼っておきます。

「承前」削除と「。」補ったのと、文章が2ツイートに分かれたのをくっつけて改行直した以外は元ツイートのままです。

(画像は映画とは無関係で、実家にあった古い写真です。差し替えるかも)

伊藤大輔「獅子の座」原作、松本たかし「初神鳴」はどうも単行本に収録されてないっぽいが、初出「苦楽」、角川「俳句」松本たかし追悼特集の再録は国会図書館でチェック可。原作はコピー6枚程度の短編。映画は田中絹代の超教育ママキャラや岸恵子の役など原作にない設定をかなり足している。

でも、冒頭「かんかんのう」の節で勧進能〜と歌うところは原作通りだったり。そして原作は勧進能を見に来た町人達の好き勝手にパァパァ喋ったり能役者が出てくると芝居小屋みたいに「いよっ」と威勢よい声が飛ぶ無礼講感が映画以上に落語のモブシーンぽくて萌える。

角川「俳句」伊藤大輔の寄稿から引用:「能樂を映畫の主題にすることは久しい間のタブーでした。能は難解なもの、退屈なもの、映畫には向かないものと頭ッから極めてかかッて、排撃されてゐました。私が三十何年間、各映畫會社を轉々の間、鏡花作「照葉狂言」「歌行燈」ーー新しいところでは夢野久作氏の「あやかしの鼓」などの映畫化を意圖しながら、どうしても實現出來なかつたのはその爲です。」
…「歌行燈」はガチとして「照葉狂言」「あやかしの鼓」の映画化ってけっこう凄くないか…

それで「初神鳴」ならイケる!クライマックス石橋の連獅子で超盛り上がるし!と大映は説得できたものの、次に能楽界の壁に直面。
宝生宗家から監督が信用できるか「今の言葉で云へば査問會で吊し上げにかけて、得心が行つたら許可しよう、と云ふことになりました。」
これにはわけがあって、過去に野口兼資か桜間弓川の舞台の記録映像を撮った映画監督が能に明るくなく、撮影現場も揉め、完成した映像もダメダメという悪しき前例があったため。伊藤は「口頭諮問」及び実際に水道橋の能楽堂で撮影という実技試験を受け見事合格。松本たかし原作もポイント高かった様子。

伊藤大輔は士族の出、宇和島生まれで松山中学出身。幼少期から能に親しんでいた可能性がありそうだがよくわからず。松山中学で文芸誌作っていた仲間に中村草田男がいるし「虚子翁」から宝生流に親しむルートもありそう。伊藤に電話でたかしの訃報を知らせたのがやはり虚子門下の伊藤伯翠だし。

時代劇の映画監督として好きな作品がある伊藤大輔と、能と俳句がこんなにがっつり繋がるとか思ってなかったんでいろいろびっくりしてるよ…ラピュタ阿佐ヶ谷さんに感謝。んでいつか「獅子の座」は新文芸坐さんくらいの大スクリーンで観たいす。そしてソフト化まじ希望。

https://twitter.com/mikiko_k/status/706274370117763072?s=21


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