風を切る

髪を切った
失恋したわけではない
新しいことを始めたわけでもない

自分をほんの少しでも変えたくて髪を切った

髪を切るくらいじゃ、何も変わらないかも知れないけれど
確かに肩が風を切るのを感じる

私の良くないところ、直すべきところ、それらが宙を舞って、はらはらと風に乗ってどこかへ行くところを想像する

何事も、まずはイメージを大切に

軽くなった頭
少し歩くのが速くなったかも知れない
少し、胸を張って歩けるようになったかも知れない

髪が切り落とされて、新しい私の形が抉り出されたようで、鏡の中の私は得意げだ。

風に乗って飛んで行った私の性格たちが、いい色になって戻ってきて、私の輪郭を作っていくのを感じる

「その髪似合ってるよ、元気そうに見えるよ」

そう自分に呟いて、私は風を切るように歩き出す
秋の風に、口角をきゅっとあげた

#旅する日本語 #エッセイ #涼飇 #髪