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DJ 恋人

こんな時世だから、恋人とは1月以来会っていない。
こんな時世だから、恋人と2日に1回くらい電話をしている。

2人とも大学生なので、授業がオンラインになったりレポートになったり、バイトもなくなって、家にいるのだ。恋人は「この時世に二人別々に住んでいることはめちゃくちゃ損な気がする」と言う。もちろん私もそう思う。けれど、自分が絶対にかかっていないとは言えないから、会えない。交通の問題もある。

電話で話したいと思う内容は以前に比べて少なくなった。仕方ない。身近な生活だけを見ると、本当に変化のないそれなのだから。恋人に聞かせてあげたい、聞いてもらいたいと思うような話が生まれない。

少し前の電話中「勉強したいから電話切るね。でも音楽聞きたい」と何の気なしに言うと、不意に恋人が「DJ ○○(恋人の呼び名)です!」と言い始めた。
普段携帯で電話をしているのだが、わざわざiPadで音楽を流し始めてくれたのだ。かなりくっきりと、悪すぎはしない音質で聞こえる。

選曲は二人が知っている曲。
昔「これいいよ」と言い合って聞かせ合ったり、「これはまってるんだよね」と延々と流して歌って、相手にしみこませた曲だったり。たまに東海オンエアのエンディングテーマや二人が好きなお笑いを挟んできたり。

ちょっと昔に私がはまってた曲を、驚異の記憶力でもってきてくれる。イントロでこれ何の曲だっけ?と聞くと「えー絶対知ってるよ」と言われて、確かに知ってる。「懐かしい~最高にいい曲~」と言うとはははと笑う。

DJ恋人は最高なのだ。

時間と寂しさと、お互いへの恋しさを持て余した、そこそこ音楽の好きな二人だから成り立つ遊びだけど、お互い別のことをしながらも同じ音楽を聴いているという嬉しさがあって、もちろん選曲も素晴らしくて、とても楽しい。

二人なら、というか恋人と一緒なら、一人では絶対に思いつかない、こういう素敵な遊びが見つかる。次に会えるのがいつかわからないけれど、こうやっていれば乗り切れる気がする。


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