2020.11.16 1年前のライブ


2019.11.16
BEST OF THE SUPER CINEMA JAPAN TOUR@SHIBUYA CLUB QUATTRO

あれから1年。
私の大好きな世界はどこへ行ってしまったのだろう。

同じ空間でたくさんの熱源がそれぞれに心を燃やし、拳を上げ、声を出し、汗をかき、心を打たれ、笑顔になり、時には涙する。
その瞬間にしか味わえない音や、匂いや、空気で身体中を満たし、また少しでも進むための力を持ち帰る、あの世界。

何一つ諦めていないし、絶望だってしていないけれど。
ライブのことを考えるとあの頃に戻りたいと思ってしまうし、取り戻せないものの大きさに押し潰されてしまうから、あまり考えないようにしていた。
でも、今日ぐらいは思いっきりあの日のことを掘り返してみようかな。


7年間。

その姿を見ることも、その身体から溢れる音を聞くことも叶わないと思っていた人を、再び目の当たりにして。
しかもそこにはcinema staffが一緒にいて。
それぞれの曲を鳴らし合って。
始まりと、ある意味での終わりとが入り混じって、受け止めるだけで精一杯だった。
終演後のビールも相まってか、渋谷の街に消え入りたいとさえ思った。
österreich、きみの新しい名前。


過去と未来、岐阜と東京、変わるものと変わらないもの。
あの頃と今を行き来するようなセットリストだった。
自分たちの足跡を確かめるように。
序盤の"白い砂漠のマーチ"と、まさかの"奇跡"は反則です。

本編後半。
"HYPER CHANT"の前に飯田くんが「みんなの声が聞きたい。歌えますか?僕はあなたのために歌うから、あなたはあなたのために歌って!」と言ったときのことが、今も心の奥で熱を持っている。
生まれて初めて、自分のために歌ってくれる人と一緒に自分のために歌ったら、涙が溢れて溢れて止まらなかった。
あの空間で4人を目の前にして声を出していたら、シネマの力を借りて自分で自分の背中を押せた気がしたというか。
今まで背中を押してもらってばかりだったけれど、やっと自分を奮い立たせられるだけの人間になれた気がしたというか。
あの感覚だけは、大袈裟ではなく、一生忘れない。

本編ラストの"斜陽"で國光が呼び込まれた瞬間からのことは、なんだかぼんやりとしか思い出せない。あの日私にとって一番焼き付けたかったことなのに。
揺れる前髪と、眼鏡と、眼鏡のチェーンと。

これは余談だけど。
きみのにせものを、私も見たことがある。
今だから笑って話せるけれど、埼京線の中で。
猫背と眼鏡がそっくりだった。
あの時と今、変わらず、君には、ただただ幸せでいてほしいと願っている。

むせ返るような斜陽のなか
いつも笑っていて
どうか笑っていて

本編が終わったと同時に、この7年間の全てが解き放たれたのか、思わず小さな声をあげて泣いてしまった。
震える私の背中に、触れるか触れないか、真綿のような優しさで誰かが手を添えてくれた。
後ろにいた、見知らぬ女性。

アンコール。
"海について"という曲は本当に不思議な曲で。
そのときの自分を写す鏡のような曲だと思っている。
救いや希望の光だと感じることもあれば、聴きながら心の中でひたすらに許しを乞うこともある。
大好きで、大っっっ嫌いで、それでもやっぱり大好き。
そんな曲に國光がいることが信じられなくて、胸がいっぱいになった。
あんなに許され解かれた気持ちになったのは初めてだった。

またひとつ、"海について"を聞いて思い浮かぶ風景が増えたような気がした。


噛み締めるように微笑みながら歌う飯田くんも。
曲中フロアを見ながら「すごい…!」と呟いていた辻くんも。
「歳かな?最近すぐ感謝しちゃうし感謝が止まらないんだよね」と笑った久野さんも。
言葉少なに、でも真っ直ぐな目で"武道館"と語った三島さんも。

あの頃と同じように、ありがとうと口の端で微笑んだ國光も。

全部全部、ほんものだった。


このときのツアーだけは、終わる感覚が全く掴めなかった。
それはやっぱり國光がいたからで。
シネマだけが好きでライブに来ていた人や、シネマを好きになったばかりで國光のことを知らない人。
とにかくあのメガネなんぞどうでもいい、という人もいたであろうに。
そこに在ることを許容してくれた方々には、本当に感謝してもしきれない。

そしてなにより。
österreichを、高橋國光を再びステージに引き上げてくれたcinema staff。
大人になるにつれ、大切にしたい想いや歯痒いほどの衝動だけで事は進まないことが増えてきた。
仕方ないと諦めることもたくさんある。
そんな中で、國光に対してきちんと責任のある寄り添い方をしてくれたシネマは、私にとって、そして國光にとってもきっと、間違いなくスーパーヒーローだ。

cinema staffはかっこいい。
世界一かっこいいバンドだ。
ありがとう。
本当にありがとう。

いつかシネマに返したい。
いちリスナーでしかないけれど、何らかの形で返していきたい。

だから、絶対に、取り戻す。
もりもろす。
諦めてたまるかよ。

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