終わりと始まりのあいだ
夏の朝帰りはたいへん気持ちいい。
思えば、朝帰りの日はいつも晴れている。
このままずっと、ここでこうして眠っていられたらな。
何もかもがどうでもよくなってしまう、だるくてやさしい夜が明けたら、わたしは少しだけ急いでうちに帰る。
誰かとの一日がまた始まってしまう前に。
ラッシュの時間帯に、空いているほうの電車に乗って、スタート地点に戻る。
雨に濡らしてしまった日傘を乾かすこと。
コンビニで支払いをすること。
大好きなひとの温度をおぼえること。
昨日忘れていたことたち。
日傘をゆらゆらさせながら、低いヒールでゆっくりどすどす歩く。
足早なひとたちとは反対方向に、誇らしげに。
コンビニで汗を冷やす。
朝帰りの道のりは長い。
誰かとの出来事を終わらせて、ひとりをちゃんと始めるための、あいだの時間。
玄関の前に立つ。
深呼吸をしたら、涙がこぼれた。
もう、思い出せない。
いただいたサポートで元気になって文章を書きますっ。