マガジンのカバー画像

【映画の中の詩】光は闇の中で輝く

62
映画と詩の交歓にまつわる文章を綴ります。 〈注:引用するのは主に1930〜50年代の映画です。 字幕と翻訳者明記のない引用詩は私の勝手訳(語句の入れ替え、省略有り)であることをご…
運営しているクリエイター

#フレッド・アステア

【映画の中の詩】『恋の情報網』(1942)

神、そらに知ろしめす。 すべて世は事も無し。『恋の情報網』(原題Once Upon a Honeymoon)。1942年。 ジンジャー・ロジャース、ケイリー・グラント主演。 戦時中の反ナチス・ドイツ映画ですがコメディ仕立ての展開の作品になっています。 朗読されるのはロバート・ブラウニングの長詩『ピッパが通る』のなかの一節。 上田敏が訳詩集『海潮音』で取り上げ、日本でもよく知られています。 『ハムレット』第一幕 第三場からの引用は名言集向きのセリフですね。 最後のはアーヴ

Backward and in High Heelsージンジャー・ロジャース

「もちろん彼(アステア)は素晴らしかったが、ジンジャーは彼がやったことすべてを後ろ向きに、そしてハイヒールを履いてやったことを忘れないでください」   (ボブ・セイブス『フランク・アンド・アーネスト』) 『ジンジャー・ロジャース自伝』(渡瀬ひとみ訳、キネマ旬報社)を読んで私が感じのは、ジンジャー・ロジャースという人は賢い女性だなあ、ということでした。 ジンジャーは自分を必要以上に大きく見せようとはせず、そうかといって逆に不必要に卑下することもなく、誇るべきところは大いに

【映画の中の詩】『恋愛手帖』(1940)

ダンサーから女優へーージンジャー・ロジャース 当時話題になったというクリストファー・モーリーの小説の映画化。サム・ウッド監督。 原作にはかなり露骨なラブシーンもあり主演の打診を受けたジンジャー・ロジャースは当初出演をためらいますが、ダルトン・トランボ(『ローマの休日』『ジョニーは戦場に行った』)の脚本を読んで出演を決めます。 そしてジンジャーはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞することとなります。 キャサリン・ヘップバーン(『フィラデルフィア物語』)、ベティ・デイヴィ

【映画の中の詩】『イースター・パレード』(1948)

フレッド・アステア&ジュディ・ガーランド。 ショー・ダンスの相方女性に去られてしまったアステアがダンスには素人同然のガーランドを仕込んで見返してやろうとする・・・。というピグマリオン風のストーリー。 客の悩みに対し格言や詩を引用してくれるいきつけの店のマスター。 ジョン・ダンの『DEVOTIONS:17』から。「問うなかれ 誰がために鐘は鳴るやと」とヘミングウェイが引用して有名になった句が含まれる詩です。 いっときはほとんど忘れられかけ、詩史の傍流に追いやられていたジョン