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【映画の中の詩】光は闇の中で輝く

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映画と詩の交歓にまつわる文章を綴ります。 〈注:引用するのは主に1930〜50年代の映画です。 字幕と翻訳者明記のない引用詩は私の勝手訳(語句の入れ替え、省略有り)であることをご…
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#キーツ

【映画の中の詩】『欲望という名の電車』(1951)

「欲望」という名の電車に乗って 「墓場」という電車に乗り換え   六つ目の角まで行くように言われたんです 「極楽」に着いたら降りるようにと―― エリア・カザン監督。原作はテネシー・ウィリアムズの同名戯曲。 主演ヴィヴィアン・リー、マーロン・ブランド。 南部の裕福な名家に生まれ職業は高校教師という未亡人ブランチ(ヴィヴィアン・リー)と粗野で暴力的な貧しい職工スタンリー(マーロン・ブランド)という分かりやすい対比。 もっともブランチの家は没落し、彼女自身も不行状(男と酒)が理

【映画の中の詩】『ブルックリン横丁』(1945)

古き良きアメリカ映画感一杯の隠れた名作 エリア・カザン監督。原作はアメリカの劇作家ベティ・スミスの自伝的小説。 大昔にTVで観て内容は忘れてしまっていたものの「良い映画だったな」という記憶だけはあり、見返してみました。 やはり古き良きアメリカ映画感一杯で楽しめました。 原題の『ブルックリンに育つ木』というのは貧しいけれども両親や周囲の人の愛と励ましによって成長してゆく、主人公フランシーの象徴です。 エリア・カザン監督作品としては最初期のもので地味ですが、ネットで検索する

【映画の中の詩】『剃刀の刃』(1946)

「僕は今でも、髪に蝶形リボンを結んで、生真面目な顔をしてさ、キーツの詩を読むと、それがとても美しいんで涙で声を震わせていた、痩せっぽちの小娘を、目のあたりに見ることができるよ。今いったいあの人はどこに住んでいるんだろう」 エドマンド・グールディング監督。サマセット・モーム原作。 グールディング監督は『グランド・ホテル』(1932)で有名ですが作曲もこなす才人。 ダンスシーンの伴奏曲「Mam'selle」はさまざまなアーティストにとりあげられてスタンダードナンバーとなってい

【映画の中の詩】「ローマの休日」(1953)

『ローマの休日』(1953)。ウィリアム・ワイラー監督。 主演オードリー・ヘプバーン、グレゴリー・ペック。 出会いの場面でオードリーは「この詩ご存じ?」と問いかけるが、検索しても出所は不明。脚本のダルトン・トランボ(『ジョニーは戦場へ行った』の原作、監督)の創作では、という意見が多いようです。 この後の会話で「何か声明がおありかな?」と聞かれたオードリーが暗記させられているのであろう、若者に対する提言を述べるのにつなげるために「葬られようとも その声を聞かば...」という