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No.75 2023年6月 46年ぶりに訪ねた国民宿舎「箱根太陽山荘」は登録有形文化財になっていた。

 エッセー67「1973年~ 趣味は素晴らし五感で温泉巡り 50年続けてきて」で長野県湯田中の旅館「よろづや」の登録有形文化財に指定されている「桃山風呂」をご紹介しました。その「桃山風呂」を経験した翌月に、やはり登録有形文化財に指定されている箱根の国民宿舎「太陽山荘」を妻と訪ねました。私は22歳の冬にこの「太陽山荘」に一人で宿泊したことがあり、実に46年ぶりの訪問になるのでした(当時は一人での宿泊も可能でしたが現在はできません)。「よろづや」の「桃山風呂」もこの「太陽山荘」も登録有形文化財になっていることはエッセー67でも紹介した温泉研究家・旅行作家の石井宏子氏の『感動の温泉宿100』(文藝春秋、2018年)を読んで知りました。


湯田中温泉「よろづや」の「桃山風呂」が国の登録有形文化財に指定


箱根強羅にある「太陽山荘」の「本館」(右)と「別館」(左)が国の登録有形文化財に指定

ところで、登録有形文化財とはどのようなものなのでしょうか。文化庁によると、「平成8年10月1日に施行された文化財保護法の一部を改正する法律によって,保存及び活用についての措置が特に必要とされる文化財建造物を,文部科学大臣が文化財登録原簿に登録する『文化財登録制度』が導入されました。」とあります。平成8年は1996年です。今から27年前に制定されました。
 2023年2月27日現在で、累計登録数は13637です。東京タワーや小湊鉄道第一養老川橋梁(きょうりょう)なども登録されています。
 
文化庁ホームページ「有形文化財(建造物)」参照
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/
 
 箱根太陽山荘の館主の本エッセーに掲載する許可を頂きました。登録有形文化財が制定された10年後の2006年に登録された日本旅館を写真でご紹介致します。
 
 箱根と言えば温泉、まずはお風呂場をご紹介致します。2つあるお風呂場は夕方から夜と朝で男女入れ替えになっています。ですから、2つのお風呂を体験できます。
 まずは木のお風呂です。檜でできているようです。窓が木枠でできていて光が入ってきます。その光にも癒されました。お湯は乳白色で私が最も好きな温泉の色です。太陽山荘のお湯は温泉黒卵で有名な大涌谷の源泉をかけ流しで注いでいます。2021年の夏に泊まる予定でしたが、少し前の大雨で大涌谷も被害にあい乳白色のお湯が宿に来ないことを館主の中山尚子さんから連絡がありました。まだコロナ禍の時でもありその時はキャンセルになりました。念願かなってのお湯です。

お湯が出てくる所に工夫がありました。

 大涌谷の源泉をかけ流しでここに注いでいます。どのようなしくみでしょうか。石井宏子氏の著書によると「源泉温度は59.2℃、それをできる限り多くの量を、できる限り加水・加温しないで注ぎたいと考えると、季節によって調整するのがとても大変になる。で、このつづら折り湯口を駆使すると、暑い季節には一番上から源泉を注ぎ一、二、三段のつづら折りの木の樋を通過させて少しさまして湯船へかけ流せる。寒い季節には中間の注ぎ口から源泉を流し、熱々のうちに湯船へと注ぎ込めるのだ。」とあります。
 私もこのつづら折り湯口をじっくり観察しましたが、よく工夫されているなと感心しました。
 
 もう一つの岩風呂は次のようになっていました。
 

 石井氏の著書によると「八角形のガラス天井と岩のコントラストが斬新でモダンな温泉だ。かつての太陽山荘の大浴場が自然の岩の斜面を利用していて作られていて、そのデザインをモチーフにして設計したそうだ。天井から降り注ぐ
光で温泉の青白い色が一層美しく見える。」とされています。
 私が46年前に入ったのもこのような岩風呂でした。こんなに広くはなく岩風呂に乳白色のお湯が注がれていました。大学4年生でこれから自分の人生をどう生きていくか悩んでいた時期でとても癒され方向が少し見えてきました。当時の館主が自慢していたお湯でした。
 さらに石井氏の著書で「夜のうちに湯を抜き、毎日完全に新しい湯に入れ替える。早朝に一番湯に入りにいくと、湯の表面に薄い膜ができていることがある。これは温泉の中のカルシウムやマグネシウムなどの成分によるもので、新鮮な温泉が注がれて、しばらく誰も入っていない時に起こる現象だ。」と書かれていました。その日の朝は男性が入浴できましたので、一番に入り新鮮な乳白色の温泉を経験しました。
 本館と別館が登録有形文化財の館内を探検しました。まるで竜宮城にいるような感覚になりました。

お風呂に行く途中で見上げて見た景色


本館と別館をつなぐ橋から見てみると


館内に貼ってあった歴史を感じる「国立公園 箱根観光案内図」


趣がある廊下


 部屋からは明星ヶ岳の大文字が見えました。宿泊の予約を入れる時に46年ぶりに訪ねることを伝えましたので、館主の中山尚子さんがこの部屋を選んで下さったようです。

 6月の梅雨の時期でしたが、このような青空も見えました。やはり、私は「晴男」でしょう。

国民宿舎「箱根太陽山荘」のパンフレットから


 館主の中山尚子さんにはいろいろなお話を伺いとても勉強になりました。お世話になりました。また、泊まりに行きます。
 
参考
箱根太陽山荘ホームページ
https://taiyosanso.com/
 

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