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No.30 2002年  4年生 声と表現の格闘技「詩のボクシング」

 2022年6月アマゾンプライムで映画「ポエトリーエンジェル」を見付けました。その解説に以下のような文章が掲載されていました。「玉置勤(岡山天音)は高校卒業後、実家の梅農家で働くが、その仕事に満足していない。妄想癖があり、自分の妄想を発揮できる場所を探していた。そんな玉置がふときっかけで声と言葉のスポーツ“詩のボクシング”の説明会に参加したところ興味を持ち、『詩のボクシング教室』に通うことになる。そこには指導する先生(角田晃広)、自称のラッパー(芹澤興人)、暗そうな女性(山田真歩)、年金暮らしの老人(下条アトム)などひとクセある面々が集まっていた。ボクシングに見立てたステージ上で、二人の朗読ボクサーがオリジナルの詩を声に出して表現し、どちらの言葉が聞き手の心に届いたかを判定して勝敗が決まる声と言葉の格闘技。©2017田辺・弁慶映画祭 第10回記念映画プロジェクト」
 この解説を読んで早速映画を鑑賞しました。解説に出てきた5人と高校生の「詩のボクシング」クラブの女性メンバーとの試合を観て、2002年に担任した4年生の国語の授業で「詩のボクシング」を実践したことを思い出しました。映画では主人公の玉置や年金暮らしの老人に代わって参加した老人の孫の女子高校生の成長も見られ、楽しくほのぼのとした映画に結構満足しました。
 「詩のボクシング」は解説にあるように「二人の朗読ボクサーがオリジナルの詩を声に出して表現し、どちらの言葉が聞き手の心に届いたかを判定して勝敗が決まる声と言葉の格闘技。」です。1997には活動が開始されていました。NHKで放送されて評判になり、教育界でも一部で導入されていました。
 私の「詩のボクシング」の授業で印象に残っているのは2002年4年生での実践でした。
 まず、NHKで放送された「詩のボクシング」のビデオを見て、どのようなものか理解します。その後で、4年生の子どもたち一人ひとり自作の詩をつくり、朗読の練習をします。リングネームも各自つけ、二人一組で対戦します。赤コーナーと青コーナーに分かれ、先攻後攻をじゃんけんできめ、それぞれ読みます。判定は他のクラス全員で、勝ちだと思う方の赤か青の札を出します。最後に、それぞれの詩の内容や朗読のいいところを出し合います。 いくつかの対戦を紹介します(朗読をお聞かせすることができなくて、残念ですが)。

赤コーナー「えんぴつ」
「使われてとしをとるほど ちっちゃいよ 新しくうまれたてほやよやほど 大きいよ バブー あたち赤ちゃん わたしももっと使われて 早く小さくなりたいな バブー」
青コーナー「月とどろぼう」
「お月様が まんまるになった どろぼうさんが返してくれたんだ やさしいどろぼうさん お月様 もとにもどってよかったね」

赤コーナー「ラーメン」
「ジュワー ジュジュジュー ガタガタ ガチャゴチャ ジョルルルル ビィー ボー ハイ、いらっしゃい ハイ、お待ち これこそラーメン屋の音」
青コーナー「秋」
「葉が赤くなってきた ルンルンルン 秋が来た ヒューと風がまるで 寒いだろ寒いだろ といっているように 秋が来た 秋が来た ドキドキ ワクワク ハロウィンがもうすぐ来るよ ルンルンルン 秋が来た 秋が来た こんなにこんなに 楽しい秋がまっているよ ルンルンルン」

 2002年8月に多摩川の丸子橋近くに現れたのがオスのアゴヒゲアザラシでした。愛称たまチャンでした。自宅から比較的近くでしたので現場を見に行きました。もちろん、子どもたちに大人気でした。そこで、たまチャンを詩にしての「詩のボクシング」も教室で開催されました。

赤コーナー「明るいたまチャン」
「たまチャーン! えっ?だれがたまチャン? たまチャーン! えっ?ぼくがたまチャン? そんなのいやだ ネコみたい かってに名前決められた… ぼくはみんなの希望の光 暗いニュースの中だって ぼくは明るいたまチャンさ みんなの心を明るくする 元気な元気なたまチャンさ!」
青コーナー「日本は迷路だ」
「ぼくたま みんなたまチャーンと言ってくる それにしても日本の川はきたない それに迷路になっている ボクの名前のゆらいは なんか多摩川とかいうところにはじめに行ったかららしい 夏はたまチャーンなんていう人がたくさんいた でもこのごろは静かで平和だ それにしても日本は迷路だ ひっこしてきてもう4カ月もたっている なのに道がわからない まあいいか ちゃんと食べているし」

児童が作成したイラスト

 「詩のボクシング」をしてみて次のような子どもの感想がありました。
 「詩のボクシングをやると、いろいろな人の詩が学べました。詩を聞いていると、その人の気持ちが込められているなって感じがしました。芸じゅつ的なのや、おもしろい詩があって、詩ってはば広いと思いました。読み方を工夫している人は、表現が本当にそれになりきっていていいと思いました。はんていする時、本当にこちらに気持ちが伝わってくるなと思う方に挙げました。最初は詩のボクシングは楽しいものなのかな、と思ったけれども、実際やってみると、みんなの前で発表するのも楽しいし、みんなの詩を聞くのも、すごく気持ちが伝わってきました。詩を書くことが楽しくなりました。私はこれからも身近なことを、詩で表現してみたいです。」
 教室での「声と言葉の格闘技」の実践でした。

参考
「詩のボクシング」公式サイト


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