No.９２ ２０２２年１月 卒業生からの年賀状に「お元気ですか？銭湯で働いていますか？」に思わず「座布団１枚」という楽しい気持ちに
２０１０年頃からでしょうか。個人情報保護で教員の住所も非公開になりました。ですから、初等科教員への暑中見舞いや年賀状は初等科に送るようになりました。現役の時は初等科で受け取れましたが、退職後は初等科の教員が自宅まで転送してくれます。２０２２年の卒業生からの年賀状の１枚は中等科に送ったものが初等科から転送されてきました。
文面を見て思わず笑ってしまいました。「お久しぶりです！お元気ですか？銭湯で働いていますか？……。」「銭湯で働いていますか？」という文面に思わず「座布団１枚」という楽しい気持ちになりました。理由があるのです。今回はこんな話題です。
私が６０歳の還暦を迎えるころから、６５歳の定年後にはどのような仕事をしていきたいか考えるようになりました。現実的には従来の教育の仕事を生かした方向を考えていましたが、温泉好きの私はもし空想で全く違う仕事を選ぶならば「湯守」（ゆもり、ゆまもり）がいいなと思っていました。
６０歳を過ぎると、学校の子どもたちはそろそろ定年で私がこの学校をやめた後にどんなことをやるのかに関心があるようで、「初等科をやめたらどんな仕事をするのですか？」とよく聞かれました。そこで、私はいつも「温泉の管理をする湯守をしたいな」と応えていました。実際は「湯守」の仕事を少し調べてみましたが、専門的な知識・技術が必要で熱い湯を扱うのですから危険なこともあります。とっても私にできる仕事ではありません。でも、私にとってこの「湯守」はとっても魅力的な仕事に映っていたのです。
２０１９年９月、最後の校外学習引率で６年生と一緒に清里清泉寮に宿泊した最後の夜でした。６年生の子どもたちが私の最後の校外学習ということを知っていて、一緒に「写真を撮りましょう」と言ってくれて全員で写真を撮ることができました。
教員最後の年ですから、子どもたちへも感謝の気持ちとともに、これからの仕事としてできることなら「湯守」をしてみたいなという夢を話しました。
でも、子どもたちにとって「湯守」とはどんなものなのか、温泉だけでなく銭湯でもお湯の管理をしているのでないかという考えも当然のことです。先ほどの子どもの「銭湯で働いていますか？」はものすごく面白い問いかけではないかと考えたのです。
２０２２年１０月に新型コロナも沈静化していて、久しぶりに中高の学園祭「みこころ祭」にご招待頂きました。私が直接教えた当時の８年生～１２年生（中２～高３）の展示の教室に行くとみんな歓迎してくれました。やはり「温泉で働いていますか？」の呼びかけは多かったです。
仕事として「湯守」をすることは叶わないにしても、趣味の温泉にプラスして「湯守」に関心を持ち続けることはできます。
私はＪＲ東日本の「大人の休日倶楽部」の会員になっているので、毎月旅に関する雑誌「大人の休日倶楽部」が送られてきます。２０２１年５月号の表紙は吉永小百合さんでした。
私が好きな俳優の一人でしたので、いつもより詳しく目次を見てみると、「ＮＥＷ 恵の湯の守り人 乳頭温泉郷 鶴の湯温泉（秋田県仙北市）」とあります。「湯守」の特集が始まったのです。２０２３年３月まで隔月号で１２本掲載されました。 第１回の乳頭温泉郷 鶴の湯温泉「恵みの湯の守り人」のページは次のようでした。
この乳頭温泉郷の「鶴の湯温泉」は私が訪ねた温泉の中でベスト１です。２０１９年３月の教員ラスト１年を前にしての春休みに妻と３泊４日で訪ねました。一号館と東本陣に泊まりましたが、白濁の温泉、宿泊棟の雰囲気、乳頭温泉郷巡り、雪景色など温泉の醍醐味を味わいました。その背景には「湯守」の方の働きがあったのです。次のような文章があります。「宿の名物でもある混浴露天風呂は、湯船の底から源泉がふつふつと湧き上がる。『源泉の湧く場所によって湯音も違いますから、広い湯船の中で自分好みの場所を探してみてください』と佐藤さん。また、露天はあえて板塀などで囲わずに、景観になじむよう周囲の草木を目隠しとした。ほんのりと青みを帯びた乳白色の湯は、肌あたりがやわらかく、浸かれば体がゆっくりとほぐれてゆく。葉ずれの音や沢のせせらぎなど、自然が奏でるＢＧＭも心地いい。」
私が訪ねた時の鶴の湯温泉のようすです。
今回紹介された「恵みの湯の守り人」がいる温泉地は以下でした。
１乳頭温泉郷 鶴の湯温泉（秋田） ２蔦温泉 蔦温泉旅館（青森） ３小川温泉元湯 ホテルおがわ（富山） ４松之山温泉 ひなの宿ちとせ（新潟） ５大沢温泉 大沢温泉山水閣（岩手） ６峩々（がが）温泉 峩々温泉（宮城） ７夏油（げとう）温泉 元湯夏油（岩手） ８後生掛（ごしょうがけ）温泉 後生掛温泉旅館（秋田） ９酸ヶ湯（すかゆ）温泉 酸ヶ湯温泉旅館（青森） 10高峰温泉 ランプの宿高峰温泉（長野） 11松川温泉 狭雲荘（岩手） 12高湯温泉 旅館玉子湯（福島）
この中で訪ねたことがあるのは「鶴の湯温泉」と「酸ヶ湯温泉旅館」しかありません。個人的には「元湯夏油」と「ランプの宿高峰温泉」は訪ねたいと思います。
これからも温泉地巡りとともに「湯守」の研究もしていく意向です。
参考
ＪＲ東日本 湯守たち・お宿一覧
https://www.jreast.co.jp/the-onsen/list/
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？