見出し画像

私的音楽同好会、スタート!

私的音楽同好会とは

 私たち「私的音楽同好会」(英名:Personal Song Club)は、2023年度の春より活動を開始したサークルである。主宰者は、伊原・中川の二人である。
 当同好会の目的は、ポピュラー音楽における新たな視座を提示し、また新たな魅力を見つけることにある。具体的なアウトプットとしては、雑誌の製作を行う。雑誌の内容としては、ポピュラー音楽論や社会学をはじめとした既存の知見に基づき、音楽に対する調査や分析、批評を行っていく。
 雑誌の第一号および第二号では、「キャラクター・ソング」を特集する予定である。第三号以降で何を特集するかは未定であるが、キャラクター・ソングではなく、その他のジャンルを特集することも見据えている

宣伝ポスター(2023年4月に作成)

設立の経緯

 私的音楽同好会の設立経緯について、紹介する。

 上にも書いた通り、私的音楽同好会の主宰者は、伊原中川の二人である。両者は大学や所属コミュニティが異なるのだが、お互いに(入居年は違うが)住んでいた学生寮の縁で知り合った。専攻が同じだったのでそれで話が盛り上がる部分もあったが、専攻のこと以上に、音楽やアニメの話で盛り上がってしまった。

 まず、どちらもシンガーソングライターの音楽表現に関心を持っていた。例えば、吉田拓郎の『今日までそして明日から』や尾崎豊の『15の夜』について、そこでは作り手の何が表現されているのか、あるいはリスナーはどのようにその曲を受け取っているのか、ということで話が盛り上がった。
 そこで話したのは、次のようなことである。シンガーソングライター、すなわち自分で作詞作曲して歌う人の音楽では、赤裸々な自己表現がよく見られないか? 例えば、自己のイメージ、自己の感情、自己の生活……自己に関することをテーマとすることがシンガーソングライターの歌には多く見られるのではないか?
 また、そうした自己の内面に関する歌はシンガーソングライターに限らず、他のジャンルでも見られるのではないか? 例えば、狐火の『27才のリアル』や神聖かまってちゃんの『ロックンロールは鳴り止まないっ』といった曲が、自己のことを歌っている曲として挙げられた。

 上のような話は、シンガーソングライターやロック、ヒップホップに触れたことがある方なら、どこかで聞いたことがあるようなものかもしれない。しかし、キャラクター・ソング(以下「キャラソン」)を、自己の表現として捉えるというのであれば、どうか? それは、これまであまりなかった考えなのではないだろうか?
 私たちの議論は、そのような方向に拡散していった。例えば、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』に登場する優木せつ菜の楽曲『CHASE!』だとか、『らき☆すた』に登場する柊かがみの『100%?ナイナイナイ』だとか、『ヤマノススメ』のEDの『スタッカート・デイズ』だとか。そのような曲を、シンガーソングライターなどと同じように、自己のことを歌っている曲として捉えることが可能ではないだろうか、とそんなことを語り合った。
 
 同じようなキャラソンの聴き方をしている同志に出会えたことに、伊原も中川も気分が盛り上がってしまった。そして、そのまま熱に突き動かされるようにして、新たな同好会が動き出した。

〈私的音楽〉とは

 サークルの名前になっている〈私的音楽〉(英名:personal song)とは何か。

 私たちは、〝私〟に関することをテーマとする曲を〈私的音楽〉と呼んでいる。簡潔に述べるならば、これは私たちが持っている一つの視点である。
 もちろん、このような曲は一般的にシンガーソングライターの音楽の特徴の一つとして挙げられるものの、他の音楽ジャンルでも同様の取り組みが見られるため、それらを包括するような概念として独自に設定した。
 他の芸術分野では、文学ならば私小説、詩ならば私性が特徴的である短歌、絵画なら自画像など、ジャンルを問わず、〝私〟に関することをテーマにした取り組みには名前が与えられている。しかし音楽では、同様の取り組みがあるにも関わらず、概念として十分に確立されていない。
 そこで、〈私的音楽〉という視点を用いてポピュラー音楽を新たに捉えなおし一つの音楽表現としてのキャラソンの魅力を考えていく。それが、今回の特集で目指しているところである。

 (そもそも、〈私的音楽〉とは何なのか? また、キャラソンは本当に〈私的音楽〉と言えるのだろうか? 皆さんの多くはそのような疑問を抱くかもしれない。これらの問いの詳細については、また雑誌の中などで述べることとしよう。)

キャラソンという未開拓領域

 私たちは〈私的音楽〉という視点に基づいて、キャラソンの魅力について考えていく。それでは、キャラソンに関する既存の文献について、ここで簡単に述べておきたい。

 まずは、キャラソンを取り上げた論考や書籍がそれほど多くないということを強調しておきたい。もちろん、『ラブライブ!』や『ぼっち・ざ・ろっく!』といった一つのコンテンツを特集した論考や書籍は多く存在しているが、各コンテンツを横断して一つの音楽ジャンルとしてキャラソンを取り上げたものはあまりない。
 その中でも、雑誌『リスアニ!』では、「別冊キャラクターソング」と題してキャラソンの特集号が2012年から2015年にかけて合計4冊発行されている。そこでは、「本誌のスピン・オフとして一冊丸ごとキャラクター・ソングを取り扱った、業界でも希有な誌面づくり」が敢行され、制作者や声優へのインタビューやディスクレビューなどを中心として、各コンテンツの楽曲を掘り下げながら、雑誌全体として「キャラソンの素晴らしさ」が考察されている。
 また、その他の文献としては、個人の同人誌として『アニソンサロンvol.4 ~キャラソン1万9千曲調べてみた~』という本が作られている。そこでは、2010年~2017年に発表・発売されたキャラソンについて、その基本的なデータが整理されている。
 しかし、上に挙げた文献では、キャラソンに対する批評=価値を論じることは行われていない。特に『リスアニ!』は、商業誌としての特性上、基本的な目的は商業物としての音楽作品を販促することであるため、そのための企画が組まれており、批評はほとんど行われていない。
 このように、キャラソンを批評するという試み自体が新しいため、ポピュラー音楽論などの知見を活かし、さらに〈私的音楽〉という視点に基づいた上で、キャラソンの魅力を改めて提示したい、と私たちは考えている。

活動計画

 最後に、今後の活動計画について述べよう。
 まずは、雑誌の第一号の制作を進めていく。また、第一号については、今年の12月に発行することを目標として動いている。それをコミックマーケット文学フリマ通販などで頒布していく計画だ。
 スケジュールについては、概ね上のポスターにも記したとおりである。2023年5月現在は、主宰者の知り合いを中心として何人かのメンバーが集まり、雑誌としてのテーマの設定や全体構成を検討している段階だ
 今の段階では、以下のようなメンバーが集まっている。

  • メンバー1 社会人。学生時代は音楽心理学に関係する研究をしていた。SSWを初めとしてアンビエントやフォークなど多くの音楽ジャンルを聴いているが、そのルーツは同人音楽にある。

  • メンバー2 早稲田大学で社会学を専攻するB4。SFロボットアニメやラノベ原作のアニメが好き。オタクカルチャーに関心があり、キャラソンとリスナー(社会)の関係を論じたいと思っている。

  • メンバー3 東京大学で美学・芸術学を専攻するD1。卒論でキャラソンを取り上げてキャラクター論について論じた。また、キャラソンに限らず、ロックやメタル、アイドルを好んで聴いている。

  • メンバー4 東京大学で言語学を専攻するB4。元々ロックやメタルが好きだったが、現在の趣味はクラブミュージックに寄っている。デジタル環境での音楽制作と受容に関心がある。

  • メンバー5 東京大学で美学・芸術学を専攻するB4。日常系アニメが好きな一方で、XTCなどのロック音楽を好む。リスナーがキャラソンを聴いてどういう体験をしているのかに興味がある。

 〈私的音楽〉というテーマを設定していることにも現れているように、私たちはある種のアマチュアリズムを大事にしたいと考えている。あえて「研究会」ではなく「同好会」という名前を冠しているのもそのためだ。
 活動に参加してみたい!と思った方は、ぜひお気軽に連絡してもらいたい。

2023年5月19日
私的音楽同好会 伊原・中川

いいなと思ったら応援しよう!