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経済制裁が与えるイラン国民へのダメージ。

2020年6月現在、イランの経済は過去最悪と言っても過言では無いくらいヤバイ状況です。

しかし、日本にとっては遠い国のお話であり、多くの日本人の生活にもあまり直結する問題では無い為、悲しいがな日本のニュースやメディアなどでもあまり報道されません。

そこで今回、イランの経済がどうして、どのようにヤバいのか、そしてそれがイランの国民の生活にどのような影響を与えているのかを、このnoteにて解説していきたいと思います。

この記事を通じて、少しでも「イラン」という国に興味を持って頂けますと幸いです。

1. イランの経済がとにかくヤバい

イランの経済がどうヤバいのか?

まずその国の経済状況の推移がわかるGDP成長率を見てみましょう。
イメージして頂きやすいように、イラン・日本・中国との比較グラフを作成しました。

経済成長率比較_アートボード 1

グラフ赤のイランは2016年に爆発的な復活を見せるものの、基本的には右肩下がりで、特に直近2年で共に-5%を超える程大きな下落を見せています。かつ、数値の変動が年により非常に大きく、経済が全くと言える程安定していません。

なぜ、こんなにも経済が安定せず、かつ直近2年でこんなにも大きな下落を見せているのでしょうか。

2. 経済の下落は経済制裁によるもの

イランの経済は、アメリカを筆頭に行っている経済制裁の影響を大きく受けています。

イランの経済成長率_アートボード 1

このグラフのように、2005年に開始した国連の経済制裁によってイランの経済成長はストップし、2012年のEUによる独自制裁で大幅に下落。16年の制裁解除で劇的に復活するが、18年のアメリカによる再制裁で急降下。

と、イランは核兵器開発疑惑による貿易制限や国際金融システムからの排除などの制裁により経済活動が制限されることで、経済が苦しくなっています。

この核開発疑惑による経済制裁に関しては、こちらの記事で詳しく解説していますので併せてどうぞ。

そしてこの制裁の中でも、特にイラン経済にとって生命線である原油の輸出制限は、非常に効果的かつ大きなダメージをイランに与えおり、GDP成長率と連動しているのがわかります。

イランの石油生産量_アートボード 1

3. イランの通貨が史上最安値を記録

制裁によるイラン経済の混乱は、具体的にイラン国民の生活にどのような影響を与えているのでしょうか?

その一つとしてイランリアルの大暴落を見てみましょう。

イランリアル推移_アートボード 1

こちらは2020年6月21日までの、過去4年間のイランリアル対ドルの為替チャートです。

2018年頭までは安定していたレートが、トランプ大統領の核合意離脱表明から急激に下がり、現在では2年前と比較し1/4以下まで価値が下がっています。

イラン国民がこれまで懸命に働き、稼いだ金の価値がたった2年で1/4以下まで下がってしまっているのです。

通貨の価値が下がるとどうなるのか?

イランでは急激な物価の向上が起こり、人々の生活を苦しめています。4。

4. 10年で6倍も増加した物価指数

通貨暴落の影響は、物価の激増として国民の生活に大きな打撃を与えましたた。

イランのCPI推移_アートボード 1

その国の物価の状態がわかる消費者物価指数の推移を見てみると、2006年の制裁開始時から徐々に上昇した物価が2018年のイランリアル大暴落と同時に急激に上昇しているのがわかります。なんと10年間で6倍も指数が上昇しています。

特に輸入品の物価向上が激しく、原材料を輸入に頼る紙オムツの不足などが日本国内でも少し報道されました。

物価が上がるのと併せて給料も上がれば何の問題もありませんが、如何せん経済が成長していないので、給料が上がる見込みはありません。

ただただ、生活が苦しくなるだけー。

5. ガソリン代引き上げによるデモ

そんな中、追い討ちをかけるかの如く「ガソリン代の値上げ」が国民の生活を襲います。

というのも、経済低迷によって苦しくなるのは国民の生活だけではなく、政府の財政事情も同じこと。

政府は財政収入増加策として、2019年11月に突如ガソリン代の値上げを実施し、これまでは10,000リアル / Lだったガソリンを、15,000リアル / L、そして月60リットル以上の場合は30,000リアル / Lまで値上がりしました。

イランはテヘランなどの都心部こそ、ある程度地下鉄は発達しているものの、鉄道はあまり発達しておらず、基本的には車社会です。

ただでさえ生活に苦しい国民はこの突然のガソリン代値上げに対して声を上げ、全国各地でデモが発生しました。

そして何より悲しいことに、このデモをイラン政府が制圧するにあたり、100人以上の国民が命を落としたとの報道もありました。

このように、制裁によるイランの経済低下によって国民の生活が苦しくなるばかりか、波及して発生したデモで命を落とす人たちも出てきている、というのがイランの現状です。(デモで命を落とすのは、制裁だけでなくイランの治安部隊の対応にも大きな問題がありますが。

6. まとめ

最後に、この記事を通じて私が何をお伝えしたいかというと、イラン「政府」が経済制裁を課せられることは、核開発に関して疑わしい行動をしている以上仕方がないことかもしれませんが、その影響を一番に受けているのは間違いなくイラン国民です。

政府のとばっちりで国民が苦しむ。

果たしてこのような状況を放っておいて良いのでしょうか。

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本記事を通じ、イラン国民の生活に関わる問題少しでも興味を持って頂けますと幸いです。


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