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代打を送るときは、代打であると言うことを直接本人に伝えた方が良い。

 中学校時代地区のソフトボール大会があった。子供会の延長のようなものであり、優勝を狙って頑張ると言う類のものではなかった。練習も数日間だけあったように記憶している。その時の監督は町内会長さんで、野球には素人ではあったが、勝負に関してはかなりこだわるタイプであった。自分とは合わないなと、子供心に感じていた。

 我々中学生は、まぁ楽しくソフトボールができればいいやと言う位に参加していた。皆が体格が大きくなっていく中、成長の遅かった自分はまだ体が小さくソフトボールでは、とてもレギュラーになれる立場ではないということを自覚をしていた。ただ代打で出て、その後少し守備につくことができるかな、まぁでも守備につかなくてもいいやという位に考えていた。

 勝敗がどのようだったかは全く覚えていない。終盤のある時、自分に代打のチャンスが回ってきた。だが打てる感じは全くせず、確かピッチャーゴロか何かで倒れたように思う。その後守備につくのか、それともそのまま退くのかが自分の興味であった。

 打ち取られてベンチに帰っていった後、監督から言われた事は、「この100円でジュースを買っておいで」ということだった。別に自分はジュースが欲しくはなかったし、その後自分がこのまま守備につくのかつかないのか、代打のみで終わるのかと言うことに関心を持っていた。しかし100円を渡されたときに悟った。「自分は守備に就く事はないんだな。代打で終わりなんだな」ということに。というのも、ジュース買いに行くのにはグランドを出なければならず、少し時間がかかるため、攻守交代の時に守備位置につくことができないからだ。

 この時に思った。この監督は「自分に代打だけでは申し訳ない」と思ったのかなと。ただ単に「お疲れ様、守備は〇〇君についてもらうから」と言ってもらえればよかったのに。それで充分納得でき、楽しいソフトボールの思い出で終わったはずである。そのような中途半端なゲームセットであり、ジュースを買いに行くという行為が、チームメイトからしても哀れな行為にみえただろうし、試合後の打ち上げに行ったかどうかすらあまり覚えていない。行ったとしても、あまり楽しんでなかったように思う。

 子供とは言え、相手の期待する通りにならないと思っている感情を持った時こそ面と向かって、ちゃんと相手に伝えなければならないと、この出来事を通して学んだ。また自分は実力的に代打で終わっても別に構わないと思っており、自分が代打で終わることを苦々しく思っていたわけではなかった。つまり代打で終わると言うことを監督は子供の期待にそぐわないと勝手に思っていたのであり、話し合いもせず、一方的に決めつけていた訳だ。

 しかし考えてみたら、この監督のおかげで、数十年経った今でもこの出来事を覚えており、良くないことを伝えるときには、相手はさほど良くないと思っていないかもしれない事、はっきりと相手に向かって告げなければいけないということを学んだ。

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