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【秒速理解】話題のカーボンフットプリント(CFP)とカーボンオフセットとは?活用方法は?

Q1. カーボンフットプリントとは? A1.商品サービスのライフサイクル全ての過程で作られたGHG排出量を把握すること(炭素の足跡)

Q2. カーボンオフセットとは? A2. 炭素排出量を相殺すること

Q3. 植林によるカーボンオフセットは可能? A3.概念的に可能で証明もされているが、物理的に不可能

Q4. 企業のカーボンオフセットの活用方法とは? A4. 答えは本編で!

以上、秒速理解でした。また来てね!
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【ゆっくり理解】

Q1. カーボンフットプリント(CFP)とは?

全ての商品・サービスは、つくられてから捨てられるまでの一生を通して多くのエネルギ を必要とします。 そのエネルギ ーは、主に石油や石炭 、天然ガスなど化石燃料から得られ、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを大気中に排出する。
カーボンフットプリント(CFP)とは、これら商品・サービスのライフサイクルの各過程で排出された「温室効果ガス(GHG)の量」を追跡した結果、得られた全体の量をCO2量に換算して表示することを言います。

参照元: 環境省 カーボンフットプリント資料

炭素の足跡を全て追跡しているんですね。

日本では先日、経産省がCFPの素案を提出したとニュースになっていましたね。国際基準に合わせる方向のようです。3月末までに公表とのことで、目が離せません。

Q2. カーボンオフセットとは?

炭素排出量を相殺することです。ある場所で炭素を排出するかわりに、1. 別の場所で大気中から炭素を取り除くか、2. 大気中への炭素排出を防ぐことでバランスを取る仕組みです。

脱炭素において高い目標「ネットゼロ」を目指す企業において、カーボンオフセットは目標達成計画の一つとして、とても重要です。近年、航空や石油・ガスなど脱炭素化が難しい産業において、カーボンオフセットへの支持が特に集まっています。

一方で、カーボンオフセットが何かと話題になるのは、大規模な排出者(例えば石油・ガス会社など)が削減を怠る口実になりえる、ズルできるのでは??という指摘です。実際に信頼できる唯一の情報源がなく、カーボンオフセットプロジェクトは無法状態が続いていることも否定できないようです。

ここでカーボンオフセットの 1) 仕組み、2) 購入までのステップ、3) 種類について説明します。


1)カーボンオフセットの仕組み

カーボンオフセットとは、企業が炭素削減プロジェクトの所有者や仲介者から削減量を買い取ることができる仕組みです。その収益は、炭素の除去や排出回避を計画・実行するための費用に充当可能です。最終的に、買い手企業は炭素情報開示でオフセット(相殺)を申告し、買い取った削減量を差し引いた排出量を報告できます。

オフセット用クレジットが売りに出された段階で、買い手企業はそのクレジットを吟味し、購入する手続きを始めることができます。

算定⇨吟味⇨購入⇨報告

2)カーボンオフセット購入までのステップ1,2,3,4

ステップ1. 自社の全ての排出量を算定する - 自社の炭素排出量を算定し、どこかに排出量削減の余地がないか確かめます。それでも削減できない排出量を、カーボンオフセットの仕組みを利用して相殺できます。

購入したオフセット削減量は、自組織のGHG排出量全般から差し引くことができますが、炭素会計の国際基準である「GHGプロトコル」では、スコープ1(自らによる直接の排出)、スコープ2(外から調達する電力や燃料を通じた排出)、スコープ3(バリューチェーンから生じる間接的な排出)のすべてを報告することが求められており、カーボンオフセットは報告自体の免除を意味するものではありません。

ステップ2. カーボンオフセットのプラットフォームやプロジェクトを吟味する - ネットで検索すると、カーボンオフセット用クレジットを売っているレジストリ(登録簿) がいくつか見つかります。例えば、国連カーボンオフセット・プラットフォームには、国連気候変動枠組み条約に基づき認証された温室効果ガス除去・排出回避・削減プロジェクトが掲載されています。
(ご参考:「レジストリ」)

他にも複数のプラットフォームや制度があり、さまざまな基準や認証方法によってカーボンオフセットの質を担保しています。たとえば「ISO 14064-2」などの規格は、カーボンオフセット制度において、プロジェクトの実効性を検証する手引きとして利用できます。その一方、独自の施策や手法でカーボンオフセットを管理する自治体もあります。例えば、米国の東部諸州が参加している地域温室効果ガスイニシアティブ(RGGI) がそうです。RGGIは厳格な申請手続きによってプロジェクトを審査するとともに、継続的な検証とモニタリングも義務付けています。
(ご参考:平成30年度国内における温室効果ガス排出削減・吸収量 認証制度の実施委託費
(温室効果ガス排出削減のためのカーボンプライシング等の政策手法に関する調査)報告書

ステップ3. カーボンオフセットを購入する - プラットフォームを見つけ、プロジェクトの質を確認した後、いよいよオフセットクレジットの購入です。購入する企業は、支払った代金の使われ方も理解しておく必要があります。なぜならプラットフォームや仲介者が、収益の一部を自らの取り分とすることもあるからです(プロジェクトに全額行くわけではない)。
逆に、資金が直接、確実にプロジェクトに行き着くような仕組みを設けている場合もあります。

ステップ4. カーボンオフセットを報告する- オフセット用クレジットを購入した企業は、その所有権の証明書を受け取ります。この証明書があれば、炭素情報開示などをする際、購入したクレジットを自社の排出量から差し引いて報告できます。質の高いプロジェクトなら、報告書の補強材料となりえる関連情報も手に入るでしょう。

カーボンオフセットの利点と課題 【利点】

3) カーボンオフセットの2つの種類

自然によるオフセット

(ナチュラル・オフセット)- 代表例は、森林保護です。ほかにも、1. バイオ炭による炭素固定(二酸化炭素を吸って育った間伐材などを分解しにくい炭にして、農地などに埋めて貯留する)や、2. 二酸化炭素(CO2)鉱物化(条件を満たす地層にCO2を注入し、地中の岩石の成分と結合させて個体にする)、3. 海洋肥沃化(海洋に栄養を加え、植物性プランクトンの光合成を促進する)などがあります。

自然によるオフセット(ナチュラル・オフセット)の利点は、炭素を吸収・固定する自然の営みを守り続けるよう、ただちに行動を起こせることです。
(ご参考:農林水産省 環境政策室「バイオ炭の農地施用を対象とした方法論について」

技術によるオフセット

(テクノロジカル・オフセット)- エネルギー作物から燃料をつくり、その過程で発生する二酸化炭素を回収して地中に埋める炭素回収・貯留付きバイオエネルギー(BECCS)はそういった炭素除去技術の一つです。また、大気中の二酸化炭素を吸収して地中に埋める直接空気回収(DAC)という技術もあります。
(ご参考:国⽴研究開発法⼈国⽴環境研究所 気候変動適応センター 「⽔資源の制約が世界規模でのバイオエネルギー⽣産にもたらす影響を推定」
ただし、技術によるオフセットは炭素排出量の相殺に役立つ一方、歴史の浅い手法が多く、成熟不足は否めません。また、コストやエネルギーがかかるため、炭素の回収量を十分な規模に引き上げることも困難です。

とはいえ、技術によるオフセットには即効性という大きな利点があります。直接空気回収のような手法なら、プロジェクトを開始した途端に炭素が取り除かれ始めます。


Q3. 植林によるカーボンオフセットは可能?

森林は光合成によって二酸化炭素を吸収するため、植林で炭素排出量を相殺することは理屈としては可能です。森林が大気中から炭素を取り除くことは証明されています。したがって、その自然の仕組みを活用できる植林事業は、カーボンオフセットの手法として広く支持されています。

しかし、森林再生や森林保護への投資だけでは、永続的に炭素排出を相殺し続けることは不可能です。森の木が切られれば、その時点でオフセット機能が果たせないことになるからです。。また、山火事が発生した場合も、二酸化炭素などの温室効果ガスとして炭素は大気中に再排出されることになります。
物理的に、森林や植林地は無限にあるわけではありません。つまり、大手企業や政府が、炭素排出の相殺を森林だけに頼ることは不可能といえるのです。

一方、森林以外にもバラエティ豊かなカーボンオフセット・プロジェクトは存在しています。それらに資金を導入することで、炭素除去・排出回避の取り組み全体を活性化することができるでしょう。

カーボンオフセットの利点と課題 【課題】

Q4. 企業のカーボンオフセットの活用方法とは?

オフセットは、企業の総合的な脱炭素化計画における一つの方法として利用できます。しかし、オフセット・プロジェクトを購入してさえいれば自らの炭素排出行動を変えずにすむ、ということではありません。最終的な目標は、総合的な炭素排出を減らし、組織の事業効率を長期的に高めることであるべきです。

炭素情報開示の義務付けが広がり、企業には炭素排出量の測定や削減が求められています。こうした状況に対し、オフセットは脱炭素化計画促進の有効な手段になりえます。
なぜなら、実質的な排出量削減実現のための業務改善はときに数年がかりの取り組みになりますが、その間、オフセットを購入する事で排出量の一部を打ち消すことができるからです。

オフセット市場の改善は引き続き、世界の潮流ではありますが、同時に企業としても、自らの責任でプロジェクトを吟味し、購入判断を下さなければなりません。
まだまだ完璧ではないものの、カーボンオフセットの必要性は高まっています。

ネットゼロ達成に炭素除去が必要なことは、もはや明白だからです。現状、世界の温室効果ガス排出量を差し引きゼロにできるオフセット市場の規模は、2021年の10億ドルに対し、2030年までに1800億ドルにも拡大するとみられています。

ただし何度も言いますが、吟味することがとても大事です。これはハードルが高そうですが、とても重要なのでもう一度言います。『吟味』してください!
もし購入したプロジェクトが【グリーンウォッシュ】と言われるものだったら、会社のイメージはどうなるでしょう。環境に対して配慮した結果、逆にブランドイメージを崩し、社会の信頼を失う可能性があるかもしれません。

【グリーンウォッシュ】
グリーンウォッシュとは、エコをイメージさせる「グリーン」と「ホワイトウォッシュ」(ごまかす、うわべを繕う)を組み合わせた言葉で、消費者の誤解を招く表現を用いて、「この商品やサービスは環境に良い」と思わせるビジネス戦略

グリーンウォッシュに関しては、金融庁も懸念を増大しているようです。
Bloomberg:『金融庁幹部「グリーンウォッシュ懸念が増大」、監督指針は3月策定へ』


いかがでしたでしょうか。今回は読み応えしかなかったですよね。カーボンオフセットに関しても上手に活用できるよう、一緒に学んでいきましょう!

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