【映画感想】アステロイド・シティ
ウェス・アンダーソン。
とりあえず色彩の素晴らしさよ。
ウェスブルーとでも言おうか、あの青の美しさはなんだろー。
突然ですがギックリ腰になりまして。
それでベッドの主になっているので、Amazon primeに3月22日から見放題に追加されたこちらを観ようと思った次第。
どうせなら楽しまねば。
本当は映画館で観たかったんだけど、町中の方しかやってなくて、観に行けなかったのです。
物語の舞台は1955年。
アメリカ南西部にある架空の砂漠の町、アステロイド・シティ。
人口87人、宿屋はたった一件だけ。
かつて隕石の落下があったとするその町で行われる科学賞式に、受賞者である5人の子供とその家族がやってくる。
この作品……物語が入れ子のようになっている。
どういうことかと言うと、美しいカラーの映像は、実は舞台劇の中のお話という不思議構造。
最も現実的な景色が劇…とは。
現実的なその風景を見ている私たちは「舞台」のこととして自ら脳内変換しなくてはならない。
そして、映像に枠のあるモノクロシーンがその舞台の裏話を紹介するテレビ番組。
ちゃんと司会者がいる。
そしてもうひとつ。
こちらもモノクロで、司会者のいない画面。つまりここがこの映画の中の現実世界。
3段構え。
劇中劇というスタイルの映画です。
ウェス・アンダーソンの他の映画にも似たようなものはあるけれど、今作、まるまる一本最後まで三つの設定が入れ替わり立ち替わり登場する。
劇中たびたび遠くできのこ雲が上がったり(実際アメリカでは当時よく核実験が行われている)、現実世界では当時タブーであった同性愛がでてきたり。
そして、1950年代にこんな作品が劇になる……ことが果たしてあり得たか。
レストランで幼い三人姉妹に「お姫様たち何を飲む?」と尋ねた店員に
「お姫様じゃない」
「わたしは生きながらにして埋められたエジプトのミイラ」
「わたしは妖精」
なんてセリフ言わせないでしょ。
このおチビさんたち、相当可愛い…。
その感性で生きていけ。
主人公?のオギーはモノクロの現実世界で辛い出来事があり、自暴自棄になったのか、カラー部分(劇中)で突然電球を割ったり、トースターで自らの手を焼くシーンがある。
そもそも台本に火傷のシーン自体はあったようだが、窓越しに対話中の女優役の女優(もうっ)が
「あなた本当に火傷してる…」
と驚くのは、多分役を忘れての一言だ。
とはいえ、そのシーンは本当は舞台上で演じられている筈なので(ややこしい!)そこら辺も謎だ。
だって、舞台上に電源の入ったトースター?なんて普通置かない。
と、まぁ、文章にしてみても難解すぎる。
現実世界に見えるカラー部分の中で群を抜いて作り物臭さを漂わせている宇宙人の登場は最高だ。
あの宇宙人、たまらないなぁ。
この宇宙人、なんとジェフ・ゴールドブラムが演じている(!?)無駄に豪華。
「僕の演じる宇宙人は隠喩だ」
「なんの」
「分からない」
と、舞台裏で話しているシーンに本人が映っている。
宇宙人が隠喩…うん、分からない。
なんだかちょっと春樹っぽいね。
現実シーンで、劇中には写真でしか登場しないオギーの妻役の女性と外階段越しに話すシーンがある。
粉雪舞うそのシーン、なんだかとても心に残る。
ウェス・アンダーソンが伝えたいことや散りばめられた皮肉はたくさんあるだろうが、、、
うん、よく分からない!笑
分からなくてもいい。
多分もう一度みたら新たな気づきや発見があるだろうし、なくても映像美だけで満足すらできる。
何でもかんでも知らなくてもいいんだ。
それでもいつも不思議な余韻を残して満足しちゃうのがウェス・アンダーソンなのでした!!
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