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こどものこと

42歳で結婚し、2ヶ月後に妊娠して、その1ヶ月後に流産した。

今からほぼちょうど6年前

小さな胎嚢は確認できたけど、心拍が弱くて妊娠継続は難しいかもと産婦人科医に言われた1週間後の夕方、押しては返す波のような腹痛がやってきて、たぶん陣痛ってこれのもっとすごいものなんだろうなと思っているうちにどろっと出血した。

あの感覚

身体が記憶しているのだろうか。早桜が咲きそうな季節になると心と背中がゾワゾワと騒ぎだす。

あのときも少し泣いた。泣きながらチョコレートを食べた。あれは死ぬほど嫌いな姑がホワイトデーにくれたやけに美味しいトリュフチョコだった。

あのババア、「こどものいないあんたらにはわからない」って言い放ったことあったよな、ああムカつく。

「こどものいるお前にはわからない」ことがあることがわからないその腐った感性にムカつく。

あのときもそのときもそれなりに泣いた。ただ今となって改めて泣いてみると、本当にきちんと泣けるようになるまでに6年もかかった。

前を向かないと、夫はいう。

いつもそう

そうだよね。

いくら前を向いても、後ろから追い越すように追いかけてくるものに圧倒される。それを振り切るには恐ろしいほど長い痛みと時間がかかることもある。

お互い、そんなどうしようもなさをわかっている。わかっているからこそ、そういうしかどうしようもないこともちゃんとわかっている。

だから、そうだねって答えて適当に笑う。

そうやってまたいつか、もっときちんと泣ける日を待つ。その繰り返しを繰り返す。いつかきちんと死ねる日まで

ああつまらん

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