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クリスマスコンサートまでまだ間に合う! 〜ソプラノ、オススメの曲①

少しマニアックな、まだあまり日本で歌われることの少ない曲を、私の個人的なお話やドイツのお話などを交えながら紹介していきます。
高めのソプラノ、またはドイツもの、と偏りがちです。

クリスマスシリーズで幕開けとします。


今回は、定番の曲を書いた後、最後に一曲、とても素敵な、けれども日本では珍しい曲をご紹介します。
と言っても、今回の曲は、まあ、それなりに知られ渡っている曲です。
そこだけ見たい方は是非スクロールして最後の方だけみてください笑

2020年

このコロナ禍で、今年のクリスマスコンサートは果たしてできるのか、お客様を少なくして、もしくはオンラインで、などと感染予防対策にも力を入れて練っている方もたくさんいらっしゃると思います。

私は現在、ドイツ在住です。11月、再ロックダウンとなり、音楽家にとっては厳しい時期ですね。

しかしながら、私自身、コロナ渦とは関係なく、コンサートなど人前に出て音楽で食べていくにはどちらにしろ難しい実力です。世界には、素晴らしい才能を持った方々はたくさんいらっしゃいます...

ただ、私はなぜか声楽曲を幅広くよく知っている(クラシックに限ります)、とマニアックな方にも言われることがあり、その素敵な曲たちを自分の一生の中、コンサートで全て歌う機会は不可能なので、他の歌い手さんにご紹介して、何かの参考になれば、とこのnoteを書くことにしました。
もちろん、知ってる方もいるでしょうが、そういう方も、改めて曲をまた見てみる機会になれば、と思います。

前置き、長い、、、

定番のクリスマス曲

さて、クリスマスコンサート、皆様は何を歌われますか?
何を聴いたことがありますか? 何が聴きたいですか?

ジングルベール、ジングルベール...
ポップスを含めると, 延々と候補曲は続くので割愛します。

まずは讃美歌の中から
・きよしこの夜
・もろびとこぞりて
・あらのの果てに

等々
→定番中の定番

・O Holy Night さやかに星はきらめき
(曲: Adolph Adam)
→ ジャズ調アレンジや有名歌手の方が歌ったりもしていますが、讃美歌ニ編などにも入っており、こちらも定番のクリスマス・キャロルですね。

ソプラノの曲

いわゆる、「宗教曲」と言われるものにはどのような曲が思い浮かびますか?

まずはメサイアのアリアから

コロコロとコロラトゥーラ、転がるのが得意なら
・Rejoice オラトリオ『メサイア』より (曲: G. F. Händel)

ゆっくりレガートが得意なら
・He schall feed His flock オラトリオ『メサイア』より (曲: G. F. Händel)
→オラトリオの中ではアルトがうたった後に後半、ソプラノがうたいます。

→メサイアの中には他にも3曲、ソプラノのアリアがあります。「How beautiful are the feet of them」は学生で宗教曲として最初に手がける方もいるのではないでしょうか。また、合唱の「Glory to God, in the highest」の直前にうたわれるソプラノのレチタティーヴォもワクワクとしますね。テノールのアリオーソの部分をソプラノがうたうこともあります。
どのソプラノの曲ももちろん良い曲ですが、単独でコンサートで歌われるアリアは上記の2曲が多いでしょう。

ただ、高めのソプラノからの視点だと、若いハイソプラノの方には、メサイアのアリアは少し低い感じがするかもしれません。ハイソプラノの人は地声が低くても、歌となると中低音が苦手な人が多く、その音域で長くのばす音があったり、Rejoiceは見事に中音域でコロコロまわしたり、と。
どちらにしても諦めずに練習です。メサイアは一生使えるレパートリーになるので。

日本でもメサイアはよく演奏されますね。
ドイツでもよく演奏されますが、ドイツ語ヴァージョンで演奏されることもよくあります。アリアを単独でコンサートなどに取り入れる時はなおさらドイツ語ヴァージョンをよく耳にしますね。

個人的に、前奏が終わった後のテノールアリアの出だし、またアルトソロがとても好きです。

ドイツのクリスマスでは定番、バッハのクリスマス・オラトリオにもソプラノの曲が2曲含まれています。

・Flößt, mein Heiland オラトリオ『クリスマス・オラトリオ』より (曲: J. S. Bach)
→ソプラノのエコーがあります。
・Nur ein Wink von seinen Händen オラトリオ『クリスマス・オラトリオ』より (曲:J. S. Bach)
→レチタティーヴォと合わせて試験等で歌う方はいますが、単独のコンサートに取り入れることは少ないかもしれません。

バリトンとの二重唱がとても素敵な曲で、よく歌われていますね。
私もこの曲がどうしてもクリスマスの時期にうたいたく、バリトンの友人に頼んで彼のクラスの試演会のこのデュエットのプログラムを入れてもらいました笑
・Herr, dein Mitleid, dein Erbarmen オラトリオ『クリスマス・オラトリオ』より (曲: J. S. Bach)

→ちなみに、バッハのクリスマス・オラトリオ、「オラトリオ」の定義に当てはまるものでは実はなく、6つのカンタータから成り立っているものなんです。前半はクリスマスをはじめ12月に、後半の第4部からは新年に入ってから、1月6日の当方の三博士の訪問の公現祭の第六部と、それぞれ別日の教会暦のためのカンタータとなっています。
日本はクリスマスの12月25日が終わったら街は一気に模様替えしますが、ドイツはしばらくクリスマス仕様のままです。呑気に片付けを怠っている訳ではなく、教会暦のクリスマスはまだ続くので、普通に正しい風習なのですね。

バッハのクリスマス・オラトリオ、これもまたアルトのアリアがとても個人的に好きです。

Ave Maria アヴェ・マリア

聖母マリア様への祈りである、Ave Mariaと名付けられた曲、たくさんありますね。
アヴェ マリアという題名の曲の中でもご紹介したい曲があるので、この項目に関しては、また別にまとめて書こうと思います。

クリスマス曲?!

勉強のために出された曲、どこかで聞いたことある曲、これらが実はクリスマスの歌だった、ということもあります。

例えば
・O Jesulein süß バッハの『シェメッリ歌曲集』より
・Ich steh an deiner Krippen hier. バッハの『シェメッリ歌曲集』より

他に、
・Sandmännchen 砂の精 (曲: J. Brahms)

などがあリます。

他には??

Max Reger マックス・レーガー (1873 - 1916)

ようやくメインです。
今回、一番紹介したかった曲はこの曲です。

・Mariä Wiegenlied マリアの子守唄,
Op. 76 Nr. 52,
『Schichte Weisen 素朴な歌』より
(曲: Max Reger)

Max Reger (タイトルの写真: Reger 1913. Fotograf: Theo Schafgans, Signatur: Ft. 1913/20q)​、つい数年前に没後100年を迎えたばかりの、後期ロマン派作曲家の短い歌曲です。

この曲は中声用がF-Dur(ヘ長調)で、一点ヘから二点ヘ (f'-f'') の1オクターブの音域であり、ソプラノでも充分歌える高さです。
高声用となると、As-Dur(変イ長調)なので、二点変イ(as'')が最高音。つまり高いラのフラットピアニッシモで伸ばすところを綺麗に歌う必要があるので、高音をpianoで保って歌うことに問題なければ高声用を選んでみると良いでしょう。

ピアノ伴奏のものと、さすがオルガン奏者のM. Reger、オルガン伴奏とヴァイオリンのアドリブつきの楽譜、また、オーケストラ伴奏の合唱曲もあります。

ドイツではまあまあ有名な曲ですが、私がこの曲を初めて譜読みしたのは、副科で習い始めたばかりの、突如やってきたオルガン伴奏ででした...
声楽アンサンブルとそれぞれのソロで教会で歌う本番の予定でしたが、伴奏する予定だった子が直前に腱鞘炎(Sehnenscheidenentzündung) になってしまい、他の歌うメンバーで伴奏をまわすことになり、
私は確かうたう予定だったものを簡単な曲に変更し、この曲をうたう予定だった子の伴奏をする、という流れの成り行きです。

ただ、この曲、転調はしますが、そんなに伴奏は難しくないです。伴奏者さん泣かせの曲ではないのでご安心を!

ところで、この本番の日、私の住む街は大雪でした。見事に積もっていて。小さな教会の本番、リハーサル終わってから、待合室などなく教会のなかで待っていたのですが、すごく厚着していたのもむなしく、もう凍えてどうなるかと...そんな思い出です。
この日以来、冬の教会での本番は、重装備プラスアルファでとにかく暖かくなる道具や着るものを持っていくようにしています。

ドイツの教会で冬に本番がある方

暖房が入る教会もたまにありますが、古い教会、伝統的な教会などは、暖房などなく、普通に外にいるようなものです。
合唱でも黒いコート等の着用も普通に可だったりするので、とにかく厚着、重装備、用意しましょう!
黒コートの下にヒートテック、貼るカイロ、ライトダウン等々。ブーツの人もいます。黒いマフラーも持っていると良いでしょう。暑くて後で脱ぐのは簡単、ですが、逆は難しいので。

さて、話が脱線しました。
マリアの子守唄の話へ戻りましょう。

そう、転調
牧歌的な、8分の6拍子で始まります。しかし、すぐに転調、8分に9拍子を通り、また元の原調、6/8に戻ってきます。そんな具合で、子守唄なのでとても調性的ですが、ロマン派前期までのようにはいかないあたりが、また魅力ですね。

この曲、「素朴な歌」に収録されているのですが、マックス・レーガーの歌曲、よく歌われるものはほとんど「素朴な歌」に収録されています。6巻に分けられていて、この「マリアの子守唄」は1912年、6巻に収録されています。
ちなみに、6巻のタイトルは『Neun Kinderlieder 9つの子供の歌』副題に「Aus Christas und Lottis Kinderleben クリスタとロッティの子供の生活より」とついていて、このクリスタとロッティというのはマックス・レーガーの養子の名前です。

Max Reger の生涯や、細かい曲目解説、作詞者の話、となると私の得意とする分野ではないので、もっと詳しく調べたい方は別の解説のものをぜひ参考にしてみてください...と人任せになったところで、今回は他にマックス・レーガーの短いクリスマス曲をさらに追加で2曲紹介して、閉めさせていただきます。

・Uns ist geboren ein Kindelein
御子はわれらに生まれたたまえり, Op.137 Nr.3,
『Geistliche Lieder 宗教的歌曲集』より
(曲: Max Reger)

・Christkindleins Wiegenlied
キリストの子(イエス)の子守唄, Op.137 Nr. 10,
『Geistliche Lieder 宗教的歌曲集』より
(曲: Max Reger)

今の時代、音源や楽譜が簡単に探すことができますね。
ソプラノの曲、と書きましたが、メゾソプラノやアルトの方がうたっても綺麗でしょう。
特に「宗教的歌曲集」からの曲は、男性の声楽家がうたってもとても素敵だと思います。

Max Regerのクリスマス曲、気になる方はぜひ見てみてください。ぜひぜひ歌ってみてください。
日本の何処かで、今年のクリスマスコンサートにこの曲がプログラムに加わっていると光栄です。

では、また次回をお楽しみに。

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