#77 清らかな薫香

今日は母とお出かけ。
二子玉川駅から少し歩いたところにある玉川大師へ。

ここは本堂の地下に四国八十八ヶ所巡りをするのと同じくらいのご利益があるとされる、地下仏遍照金剛殿というものがあり、真っ暗な地下道を手探りで歩くことができる。

本堂に入り、入り口近くの社務所でチケットを購入してから地下へ続く階段を降りていく。

降りた先は一寸先も見えない暗闇で、壁を伝いながら歩いているといきなり行き止まり。かと思うと鋭角な曲がり角があったりと、かなり入り組んでいる。

所々に仄かな灯りがあり、そこに各所仏様がいるので手を合わせていく。途中、真っ暗な壁の中に鎖に繋がれた五鈷杵があり、そこを掴むと本堂の上に座す大日如来像と繋がるという。

そこを経てからさらに曲がりくねった暗闇の道を歩いていくと、八十八体の仏様がズラリと並ぶ回廊に辿り着く。そこで、自分の数え年の仏様に手を合わせると良いらしい。

奥まで行くと開けた場所になっており、大きな涅槃像と弘法大師像が座している。天井には鳳凰、柱には龍、壁面には天女の豪華な木彫りが飾られており、ほのかな灯りに照らされて何とも荘厳な様相だ。

最後には大願の鐘を鳴らし、階段を上がって終了となる。正味10〜15分程度だったと思うのだが、とても長く感じる。

本堂へ戻るとちょうど護摩業の最中で、そのままお勤めに参列した。本堂はこじんまりとしており、内部は毎日の護摩業による煤が蓄積された様子が見て取れる。壁や天井、仏像や装飾、行燈が赤黒っぽい色で染まっている。

お経が激しくなってくると護摩の炎も勢いよくあがり、本堂内部は煙で満たされていく。煙たい視界の中で、御住職がさまざまな鳴物を使うのが興味深かったので眺めていた。
太鼓はもちろん、シンバルのようなものや、法螺貝など、見応えがあった。まぁ、お経に見応えを求めるのは違うとは思うが。

読経が終わると、お清めとして塗香が配られた。左手を差し出すと、そこに微量な塗香が盛られる。塗香はシナモンパウダーのような見た目で、手を擦り合わせて頭や身体に塗り込むと弥勒菩薩様と同じ体臭になるという。

香りは、まるでメープルシロップのように甘くて香ばしい。塗香の匂いはなかなか強く、家に帰って手を洗ってもまだ残っている。

塗香を塗り終わると、本堂の裏手に並ぶ多数の仏様に手を合わせ、ご焼香を供える。

参拝を終えて、帰宅すると甘い塗香と護摩業の煙の匂いが全身に染み付いているのがより一層際立つ。

飼い猫のシグマがいつもと違う私の匂いに気付いて近づいてきた。クンクン匂いを嗅がれると「オエッ」という顔をされた。

気持ちは分かるが失礼だぞ。
これでも清められた身なのだから。

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