#21 嗚呼、熱きフジロック 後編

The Last Dinner Partyを見た後、例の屋台へ。


ただでさえインパクトのある看板なのに、クラフトワークがツノを生やして鼻水を垂らしているのがよりパンチに拍車をかけている。
ここでプルドポークライスをいただき!
フジロックのフェスメシって本当に美味しいよね。これも美味しかった。

お腹が満たされると、朝早くから活動してたのもあって段々眠くなってきた。適当な森の中でレジャーシートを敷き、木陰で横になったら程よい涼しさでウトウト……

1時間ほど眠ったら、小腹が空いて甘いものを食べに移動。なんだかんだ歩き回るせいか、フジロックって無性に腹が減る。

気になっていたベニエとほうじ茶ラテ。
しっとりした生地にたっぷりの粉砂糖。
ガツンと来る糖分でパワーが出る!

そこからまたブラブラ歩いてると、WHITE STAGEで入場規制とのこと。やっていたのはくるり。確かに遠目に見てもすごい人だった。
RED MARQUEE方面に行くのにぐるりと回り道したら、そこそこの時間に。

夕飯に牛すじビリヤニを購入して、GREEN STAGE方面で腰を落ち着ける。
丁度やっていたのはBETH GIBBONS。初めて聴いたけど、めちゃくちゃ好みの感じだった!
アンビエントな雰囲気に民族的なサウンドが心地よく、夕方から夜へと変化しつつある空に響き渡る世界観がとにかく気持ち良かった。

BETH GIBBONSが終わり、クラフトワークの登場を待ちながら、どのポジションで見るか考えあぐねる。

後方で足を伸ばしてリラックスしながら聴くか、前方で思いきりその音を喰らうか……

そうこう考えていると舞台上の転換で、あの4つ横並びの装置が登場。すると前方から歓声があがる。クラフトワークをどれだけ待ち望んでいるか、それだけで分かるものだろう。

前の方を見ると、上手側に余裕がありそう。
よし、せっかくなら前で見よう!

ほぼ最前くらいのポジションでしばらく待機してると、ライブ映像で見たことのあるあの不思議な音楽。うぉー、いよいよだ……本当に生で見られるのか、クラフトワークを!

4人が登場すると、先ほどまで疲労困憊で座り込んでいた人々の顔と身体にエネルギーが満ちるのを感じる。

これまでCDでしか聴いていなかったクラフトワークが、ライブではこんなにアガるとは思わず、身体が勝手に動き出す。
聴いたことある、あの曲もこの曲も、すげぇよ今生で私聴いてるんだよ……!

途中、いきなりMCが入って驚いた。
え、クラフトワークが途中でMC挟むの珍しいな?と思ったら坂本龍一とのこと。そこから、戦場のメリークリスマスのカバー?!
クラフトワークがカバー曲やるのか!!
マジか……思ってる以上にすごいものを見てしまっていることに気づいて震える。

その後に、賛否の分かれたRadio Activityが続いたが、日本語歌詞の提供をしたのが坂本龍一というもあったから、その追悼の意味合いも強かったのだろうと思う。とはいえ、既に放射能汚染を克服し、世界でも一番厳しい審査基準を継続している福島を、いまだにそのイメージで語るか……とは思う。まぁ、遠く離れた外国に住んでる人に、その実態をどこまで知ってもらえているのかというのもあるが、それはそれで別の問題だな。議論が起こるのも意義があると好意的に考えておくか。

アウトバーン、ツール・ド・フランスと好きな曲ばかりが続き、電卓!まさか、これをみんなで合唱する日が来るなんて……
ボクハ オンガクカ デンタク カタテニ
ボクハ オンガクカ デンタク カタテニ
タシタリ ヒイタリ ソウサシテ サッキョクスル!

新品のトレッキングシューズで立ちっぱなしなのもあって、足の裏は既に悲鳴をあげているがずっと目を離せないまま、とうとう最後の曲。
Music non stop
そうか、最後じゃないか。
ご本人達もそれなりの年齢だし、次にいつ見れるか分からないと思ったから今回見に来たけど、そうか、音楽が止まらないなら最後じゃないかもしれない。なんだよ、泣かせてくれるじゃないか……

終わってから、披露と余韻で思わず芝生の上に座り込んだ。徐々に帰りゆく人々。本当にすごいものを見てしまったという感動。

そういう余韻に浸りたい中、場内のBGMでRage Against the MachineのKilling the Nameが流れてくる。しばらく気付かなかったのだが、これタモリ倶楽部の空耳アワーでサビの部分が「ナゲット割って父ちゃん」に聞こえるやつだ……と気付く。
もうこれに気づいてしまうと「ナゲット割って父ちゃん」の映像が脳内再生されてしまう。
やめて、余韻に浸りたいのに「ナゲット割って父ちゃん」に侵食されてしまう……

GREEN STAGEが閉鎖されるのに伴って移動する。休み休み歩きながら、クリスタルパレス方面へ向かう。

次の目当てはYIN YIN。
それまで、近くに座り込んでいるとサーカスの始まるアナウンスが響く。ぼんやり座ってサーカスをしばらく待っていると、アナウンスの回数に反して中々本編が始まらない。
それどころか、電飾に灯りがつかないトラブルでスタッフが命綱も無しにひょいひょいと高い柱を登っていくのが、もはやサーカス本番さながらの鮮やかさだった。

しばらくしてクリスタルパレスの中に入ると、なんだか異様な盛り上がり方だった。前方を見やると妙齢の紳士。後で調べたらコモエスタ八重樫というDJ。選曲は昭和歌謡や民謡など、それをダンサブルにリミックスされている。
これがめちゃくちゃ楽しかった!
最後に流れたのがドリフのズンドコ節で、これでブチアガるフロアで踊り狂う大人達……なんて素敵なDJなんだ……

その後、YIN YINの登場。
それと同時に人がどっと押し寄せてきて、まともに曲を聴くのも、踊るのも出来なさそうだったので、場外へ離脱。外から演奏を聞くことにした。どこかレトロなのにアッパーで、やっぱり聴いていてとても楽しい。
驚いたのが、YIN YINも戦場のメリークリスマスをカバーしていたこと。やっぱり、海外でも本当に人気なんだな、坂本龍一。

疲労もピークを迎え、夜の冷え込みで少し肌寒さすら感じ始めた。小腹も空いたので、RED MARQUEE周辺の屋台でソーセージを摘みながら、石野卓球のDJを少し待つ。
少し聴いてから、いよいよ寒さに耐えきれなくなったので、歩いて近場の温泉へ。

露天風呂の温泉に浸かっていると、空が白んでくるのか見えてくる。長く思えた夜なのに、もうあっという間に夜が明ける。

身体が温まり、少し疲労回復してバス乗り場へ。長蛇の列に並んで始発のシャトルバスを待ち、駅に到着したら駅中の屋台で野沢菜おやきと笹団子を買って、新幹線の中で食べながら帰路に着く。

新幹線で少し眠っていると音楽が聞こえてくる。厳密には音楽ではない。新幹線が走る音、トンネルの中で反響する音、すれ違う新幹線との間で起こる空気の摩擦の音……
それが全部、誰かが演奏する音楽やハミングのような歌声、観客の歓声に聞こえる。
四六時中どこかから音楽の聞こえる場所にいたからだろうか、リズムのある環境音がすべて苗場で聞こえた音楽すべてに感じられた。

ヘトヘトになりながら無事に家に到着すると、玄関の真ん前でセミファイナル……思わず、共有廊下で「勘弁してくれ!」と叫び、手持ちの折りたたみ座布団を投げると驚いてどこかに飛んでいってくれた。

その後は軽く片付けしてから泥のように眠り、気づけばもう日暮。

久しぶりのフジロック、新しい発見のたくさんあった体験でした。

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