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パフォーマンスビルダー三浦の視点 #1~歌舞伎

こんにちは、パフォーマンスビルダーの三浦千紗子です。
今日はスポーツの話ではなく、「歌舞伎」のお話をさせてもらいますね。
とは言っても私は歌舞伎の専門家ではありませんので、「体を通して歌舞伎をみる」というお話です。
室町時代に起源があるとされる、日本の伝統芸能である歌舞伎。
とある知人に誘われて歌舞伎座へ足を運びましたが、その優雅さや色気、そして臨場感と、やはり何事も自分で足を運んで、五感をフル活用して感じることが大事だなあと学んだ観劇体験でした。
さっそくですが、その観劇をふまえて感じたことをまとめてみたいと思います。


1、 歌舞伎役者の膝を守る

まず一番最初に思ったことがこれでした。
舞台で演じる際になんと中腰姿勢の長いこと。
本番の舞台の最中も中腰の姿勢は長いと思いますが、実際は幼少期からのお稽古、そして年齢制限無く舞台に立ち続ける役者さんの膝への負担は相当大きいものだと思います。
そして万が一、膝に痛みが出てしまった場合にはその痛みを抱えながらもお稽古に、本番にと演技を積み重ねていくのだと思います。膝に限った話ではありませんが、どこかに痛みや不調を抱えたままの動作はつらく、演者さんご自身からすれば不本意なものだと思います。
いかに膝に負担をかけずに、かつしなやかな動きを可能とする中腰姿勢、それに伴う体作りを行うということがひとつ目のポイントになると考えます。
そのためには体中枢にある骨盤の機能を活かすことが重要で、これは以前投稿した「体のトリセツ #3 ~黄金の三角形」に詳しく書きましたので、そちらも参照くださいね。


歌舞伎1


2、 声の幅

次に感じたことは「発声」です。
今回の観劇で一番驚いたことでもあります。マイクや音響設備を使わずに、地声だけで演舞場全体に響き渡る大きさの声が出る。しかもただ声を出すだけではなく、声色や抑揚、声のトーンや艶など様々な表現をされている。
この声の幅を出しやすい体づくりをすることが一つのポイントだと感じました。
そのためには、「締めない体の使い方」がミソです。
要は「筋肉を緊張させない」ということ。緊張している時や力んでいる時にどうしても筋肉は硬くぐっと締めこんだ状態になってしまいますが、それでは発声に必要な喉や肺等に関係性の深い体幹部分(腹筋や背筋)の筋肉も伴って緊張し硬直してしまうのです。
体は必ずどこかと繋がっています。
(詳細は、「体のトリセツ #1〜体を繋がりで考える」 参照)

ということは、どこか一カ所が硬直してしまうと連動して全体的に硬直してしまうのです。そのためにも、「筋肉を締めて動く」のではなく「柔らかく、体全体を繋げて動く」ことに注目した体づくりをすることが大切です。

3、 衣装やかつらを着こなす動作

最後は歌舞伎役者さんが着ている衣装。この重さの衣装を着こなし、演じるという観点です。
役柄によってその重さや形状は多岐にわたるようですが花魁の着物は40kg近く。衣装だけではなく持ち物も含めると60㎏程度になることもあると。これだけの重さの衣装を身に着けて動くなんて…考えただけでも肩が凝りそう…
そこにポイントがあります。

ではこの衣装を着こなし、役柄を演じ切るために必要な体とは…。
いくつかのポイントと順番があります。

① まず、最も合理的な中腰姿勢を身に着ける
…この投稿内「1、歌舞伎役者の膝を守る」参照
→この①ができるということは、骨盤の状態が良い状態になるということでもある

② より良い骨盤の状態での動き(立ち姿勢、踊り、演じる際の動作など)を身に着ける
 …別途投稿記事「体のトリセツ #1 ~体を繋がりで考える」参照

 →骨盤の状態が悪い状態で数十kgの重さを背負うことを想像してみて
  下さい。ちなみにかつらだけでも2kg(牛乳パック2本)を越えるものも
  あると。


③ 腕の使い方を工夫する
 …別途投稿記事「体のトリセツ #2~手と体の繋がり」参照


 →手の使い方が肩の状態に影響を及ぼすため、演じる中で腕の使い方を
  工夫することで重い衣装を着こなすことに繋がってくるのです。
  この取説では「コンタクト」を例に出しましたが、歌舞伎の場合は
  「重さに耐える」という観点からメリットが考えられるということ
  ですね!

歌舞伎2

画像引用:PIXTA

4、3つの観点がもたらしてくれるもの

面白いことに、ここで挙げた3つのポイントが習得されることで、相乗効果が期待できます。

【重い衣装に耐えられる体作りを行うと自然と上半身の使い方が向上し~】
1、下半身に負担のかからない動きを習得していることにもなり、
  結果的に膝への負担が減る
2、体を締めるのではなく、全身を連動させる動きを習得していることに
  もなり、結果的に発声しやすい体になっている

このような仕組みになっているのです。



5、おわりに

このようにいくつかのポイントを述べさせてもらいましたが、もちろん歌舞伎役者さんは幼いころからお稽古を重ね、また実際にこの重い衣装を着こなし演技をされているので自然とこれらのポイントを習得されていると思います。
歌舞伎役者さんの現役期間は長く、また公演期間中は1日に複数の演目をこなし、1カ月にも渡る期間、体をフルに酷使しています。
スポーツ」というカテゴリとはまた別の意味で、ある意味アスリートよりもハードな生活なのではないかと想像します。
私は歌舞伎を鑑賞して、ひとりひとりの歌舞伎役者さんの年齢ごとの美しさのようなものを感じました。少年・青年期のはつらつさ、中堅役者さんの安定感や華、そしてベテラン役者さんの艶や丸み。
それぞれの年代ごとに美しさがあり、それを日々積み重ねて芸を磨いていかれることが芸事なんだなあと感じます。その土台にある体を使いこなすことで、芸事を究めるために怪我や痛みに悩まず質の良い練習が積み重ねられる時間、そしてより体を使いこなすことから生まれる演技の間のようなもの、魅せ方の部分にまた違った変化を起こすお手伝いができたらいいなぁと思っています。

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