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映画のシーンが変わるように、駆け抜けた『投擲』から静かにフェードインしていく『穴』。

ギターの弦がきゅるると摩擦する音がアナログを感じて、良い。

『砂漠』『岩』に通ずる、民族風のサウンドが復活する。

<砂丘から望遠鏡で>という歌詞に案内されて、イメージされるのは砂漠に空いた大きな穴。

<誰ひとりいれるな>

<そのようにきいております>

その穴の中に、何があるのか。

その答えが語られはしない事が、不穏さを表現している。

底の無い真っ暗な闇か。

化物の棲む巣穴か。

いずれにせよ、<そのようにきいて>いる番人だか近くの住民だかが、中身を知らずに言いつけを守っている。


個人的には、中身を知らずに(知ろうともせずに)規範だけ守る者を皮肉って笑う歌詞に思う。

<その穴の内部をのぞいた男がいた>

<砂丘から望遠鏡で>

<翌日風邪ひいた>

途中まで、その男にどんな悲劇が起きたのか緊張してどきどきしてしまった。

結果はなんじゃ~いっていう。

意味ありげな『穴』だろうが、それはただの『穴』。

シュールなコメディを見た気分。

なんだかライブのMCを思い出す。

真面目な顔して人を食ったような事を言う人達ですよね。この人達。


そのノリを分かっていれば、「まあまあ僕たちの曲(歌詞)なんてこんなものですから(笑)」と言われたようで一息つくタイミング。

『空地』も似た役割を担っていると思っていて、その後には高カロリーな『塔(エンパイアステートメント)』『真夜中』『潜水』が控えている。

まじで高カロリー。

『穴』で油断させといて、ブチ込んでくるぞ!!


乞う覚悟。


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"穴の絵"ではなく、"穴の中から見た風景"を描こうというアイデアが先にありました。

歌詞に則れば砂丘や砂漠を題材にするべきだったのでしょうが、当時サカナクションの『ナイロンの糸』を狂ったように聴き続けていたので、"川の中から東京の街を見上げる絵"を描きたくなりました。

日本橋川は、上に首都高が覆いかぶさっている閉塞感が好きです。


そういやタモリ倶楽部で「東京の川から町を眺める」という企画があって、昔見た映像も頭の片隅にありました。

下から見上げる東京のくすんだビルの色と青空のコントラストが非日常的で、ワクワクしたのを思い出しました。