『Wall,Window』トリッキー枠、『馬』。
[トリッキー]
tricky―巧妙であるさまや奇をてらったさまを意味する表現。
対義語は「シンプル」だそう。
「People In The Boxの曲はシンプルだ」と言う人がいたら全く同意できない(そのような音楽猛者がいたら申し訳ない)が、「全てトリッキーだ」という意見にも100%同意はできない。
結局は基準をどこに置いているか、だと思う。
さて『Wall,Window』の基準――つまりアルバムの雰囲気とか、曲の感触とか――は、
・優しい
・穏やか
・自然
このような印象だ。
分かりやすい歌詞や曲調というわけではないが、奇をてらったものでもない。
きっと音楽のことが解る人なら、専門的な演奏や録音に関する知識も挙げられよう。
残念ながら素人なので、このぐらいしか言葉にできない。
『Wall,Window』の印象を"基準"とすると、『馬』は何がトリッキーなのか?
とりあえず第一は馬をテーマにする点ですかね。(雑)
音がねぇ、良いんですよ。
疾走感のあるサウンドはまさに、草原を駆け抜けていく馬の走りを想像させる。
重いベースのフレーズも、逞しい馬が地を蹴る様を表現しているようだ。
(間奏のベーンベベベーンベーベーのところ、伝わります?)
エネルギーを抑え気味の前半は遠くを走る馬を写すようで、サビの爆発力を伴う演奏は、カメラが馬に寄って並走するような迫力。
音楽で何かを表現する曲が好きだ。
一番最初に「すげぇ」と思ったのは、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの『ブルートレイン』だった。
「楽器だけで汽車の走る音がする!」
あれが、自分のロックの入り口だった。
(久しぶりに聴いたけどこれヤッバイな。めちゃくちゃ良い曲じゃん。)
『馬』も同様。
『ブルートレイン』ほど直接的なアプローチではない(例えば、馬のひづめの音をドラムで鳴らすとか)が、あちらが写実的とするとこちらは少し抽象的に感じる。
"列車が走る音"に対し、"馬が駆ける様子"を表現しているからではないだろうか。
エネルギーを溢れさせながら、馬が走ってゆくかのような後奏は縦ノリが気持ちいい。
馬を見送る。
音だけ聴けば、"優しい"や"穏やかだ"というイメージは湧かない。
「『馬』を音楽で表現する」という試みだけがトリッキーな理由ではなく、音楽的にも『Wall,Window』の中では異質の1曲と思う。
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イラストの話。
<星座をほどけ 食卓ぜんぶ 星で汚せ>
の歌詞が好きだから、イラストにも星を描いた。
(意味があるんだか無いんだか、一筋縄ではいかない言葉の羅列のなか急にロマンチックな文脈を差し込まれるのに、弱い。いつものやつです。)
汚すほどの数ではないが、たくさん描いてしまうと頭部の違和感がボヤけてしまうと思ったため控えめに。
はじめは馬の頭部そのものを描いていたのだが、ちょっとリアルすぎてしまったので描き直した。
(デフォルメしてもあまり合わなかった。)
口輪だけで馬の頭部を想像できないかと描いてみたところ、シュールさが曲の雰囲気に合っている気がしたので採用。
描いていても、物の"裏側"を描くのは絵でしか表現できないから、楽しかったです。
是非。