ベルリン
ギラギラしている。
「レッドライト/グリーンライト」!
この曲を象徴する単語かのように、発せられる光は夜に灯る信号機か。
「飛び散るアルファベット
カーテンと窓
深夜の追いかけっこ」
言葉遊びもキレキレだ。
飛び跳ねるような演奏に合わせて言葉が飛び散る。楽しい。
「午前2時の友達
遠く離れた裸の秘密警察
明日にはぼくはここにいない」
ベルリン、秘密警察。
ベルリンの壁とゲシュタポ。
冷戦とナチス=ドイツ。
不穏な物語の背景が、リズミカルで重厚なプレーに乗ってくる。
何度も繰り返される「レッドライト/グリーンライト」の点滅は、意味もなく焦燥感を突きつける。
「アンテナの代わりで逆さに傘を差す」
さながらパラボラアンテナに見立て。
取り巻く“常識”を、ひっくり返して反骨精神を表すような。
どうあがいてもひっくり返せない現実を認めたくないように、主人公は「傘を差す」。差し続ける。
「レッド、レッド、レッド、
ミニチュアの憂鬱に乗り込んで
これが初めての
グリーン、グリーン、グリーン、
単独飛行
このどこかできみに会えるかな」
激しさが少しやみ、やもすれば止まってしまいそうな3つの音は、切なさをはらんで鳴る。
主人公の些細な悩みを“ミニチュアの憂鬱”という皮肉を交えた言い回しがおしゃれ。
寂しいまんま旅に出て、彼は“きみ”に会いたがっている。
「レッド、レッド、レッド、
少しユーモアに欠けた引力の呪いから
グリーン、グリーン、グリーン
人工衛星をすべて
解き放ってみるよ」
重力というピンによって地球に打ち付けられた標本のような人工衛星。
その呪いは面白くないね。
人工衛星は、つまり我々自身の事でもあるかもしれない。
解き放ってくれ。
「リン、リン、リン
はじめまして
未来からの僕の親友」
誰がやって来たんだ。
未来からの親友には心当たりがあるが。
青い色の猫型ロボットは、誰もが子供の頃、友達だった。
彼の見せる“未来”は、確かに自由で夢がある。
『ベルリン』における記録(Record)は何だろう。
登場する単語だけ拾えば、戦争の影がチラつくけど、最終的には“君に会いたい”気持ちや“親友”といった個人的、ミニマムな世界観に収束していく。
“何かから逃げたい”という焦りが、“戦争”や“秘密警察”という(良くも悪くも大げさな)言葉に例えられただけなのか。
読み解けば意外と、個人的な物語だったのかもしれない。
それでは、主人公を変えなくては。
“人類”に見せかけた、“1人の青年”の物語に。
青年の逃走の記録(Record)。
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「とうそう」を文字変換した時、最初に「闘争」と出て来てドキッとしました。入れ替えると「総統」にもなるなぁ、となんとなく思って、またドキッとしました。
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いつ聴いても良いですよね、ベルリン。音に合わせて言葉が組み合う感じや、不穏さ本領発揮!みたいな低音ベースがむちゃくちゃカッコイイです。「傘を差す」のコーラスや、「人工衛星をすべて解き放ってみるよ」あたりの不思議な切なさも大好きです。
結構、最近、うまくいかない事が多くて、困ってますが、良い音楽を聴いてる時はそういうのから解き放たれてる気がします。暴力的に始まって、静かに終わっていく「リン、リン、リン」というベルの音に一連、浸って、なんとか今日も眠れるだろう。