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市民

LovelyTaboos_②市民

『笛吹き男』とは一変、攻撃的で攻撃的なドラムは乱れ打つ銃弾の様。
自分の体が穴だらけにされている錯覚が見える。
『笛吹き男』と同じバンドの曲と思えない。
けど、それがPeople In The Box。
穏やかさと狂気を併せ持った、捉え所の無い素敵なバンド。

ライブで『市民』が演奏される時、正直、舌なめずりしてる。

多分、Cut Twoで聴いたのが初めてだったと思うんだけど。
穏やかさと狂気を行ったり来たり、それがPeopleの魅力のひとつであると思う。
『市民』は狂気への振り幅がぐんと伸びている。たまらねえぜ。

歌詞もヤバイが何がヤバイって曲の構成も振り切ってヤバイ。
<衛星堕ちて 群衆 空へ口を開けている>
<風吹いて 昼下がりは鱗粉にまみれ>
ズドドダダダッと言葉の散弾銃が撃ち込まれる。
ドラム、ギター、声。
全部が揃って撃ち込まれる。

なんかヤバイ曲始まった。動悸がドクドクと続く。

ドラムも、ベースも、ギターも、暴れる。
破壊的な演奏は、それぞれが好き勝手に暴れ回っているように聴こえるが、なにかが琴線となって3つを繋ぎ止めている。
"音楽"が琴線だ。ちゃんと"音楽"だ。破壊的な"音楽"だ。
頭の中に真っ赤なライトが飛び散って、ああいいぞもっと壊してくれと自分の中の獣が這い出る。
何もかもぶち壊してと。


<口のなかで虹がかかる
まただ、血の味だ
まただ、血の味だ、まただ
歴史が七色に濡れる
まただ、血の味だ
まただ、血の味だ、まただ>

そこで急に冷静になる。させる。
折角良い気持ちで居たのになぁ。
★ここが最も狂気ポイントが高いですね!★
悲しそうなギターの撫ぜられる音、冷静にしゃらつくドラム、シンバル。
市民の暴動によって命を落とした者を見下すような、悼むような。
攻撃的なフレーズと、一転、それを淡々と見つめるような静かなパート。
この二面性が、怖い。
いや、危うい。
いや。格好いい。

<構造主義を原理主義者がニンジンさげて走る
聖なるポルノ ハンサムな猿 投獄されてあい、あい、あい
そういうぼくは快楽主義でおまけに不感症
俳優 医者を装って病名告げるブラァ、ブラァ、ブラァ>
再び訪れる攻撃パート。
世間を皮肉っているような、我々を煙に巻くような、意味がありそうで無いかもしれない意味深な歌詞は今回も炸裂。
でも考えてる暇は無い。
3つもの楽器から攻撃を受けてしまい、頭はとっくにやられている。
(カッコイイ~)
それ以外の事を考えてる暇は無い。

blah blah blah は英語で「かくかくしかじか」「なんとかかんとか」「もにょもにょ」みたいな意味らしいです。
こんだけクールに気取って放たれるのは「なんとかかんとか、つってね!」って感じでしょうか。
う~~~ん………
イイ……………

<そういうぼくは快楽主義でおまけに不感症>もメチャ好きな歌詞ですね。
うわぁ……キメてんなぁ~~~って感じですが……
どうあがいても………
やっぱりイイ……………

<柵をまたいだ あっち/こっち どっちがどっちだったっけ>
<格子挟んだ あっち/こっち どっちがどっちだったっけ>
ここまで来てしまうと、どっちがどっちでもどうでも良くなってしまっています。
ただ、わかるのは、ドラムに合わせて頭を振るのが楽しいという事だけ。


<口のなかで虹がかかる
まただ、血の味だ
まただ、血の味だ、まただ
歴史が七色に濡れる
まただ、血の味だ
まただ、血の味だ、まただ>
まただ。
こんなに楽しい熱気の中、またドラムとギターは冷静に変わる。
別人が演奏しているかのように。

口のなかで虹色の血だまりをつくっているのは誰なんだ。
歯を剥き出して笑いながら『市民』を聴いている自分は何なんだ。
ふと、暴動や革命といった言葉が頭をちらつく。
革命の熱気は暴動を生み出さなかったか。
そこに巻き込まれた無関係の人は居なかったか。
歴史の教科書に書かれている"革命"に、血は流れていないか。

自分はどっちの『市民』なんだ。

<衛星堕ちて 群衆 空へ口を開けている>
<風吹いて 昼下がりは鱗粉にまみれ>
<スピーカー今日も見世物小屋の発生 伝える>
<猛威ふるう絶対零度 らっぱで合図鳴らせ>
冷静になるのは一瞬だけ。
凶暴な『市民』は見世物小屋に押しかけ、暴力に酔いしれる。

最後、自分は自分に問う。
攻撃的パートの『市民』が好きなのか、冷静パートの『市民』が好きなのか。

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どっちもじゃボケェ~~~~~!!!

自分を奮い立たせるための曲を人は誰しも持っているかと思います。
BUMP OF CHICKENの『グロリアスレボリューション』でダメだったら
People In The Boxの『市民』で行けます。
最終手段はマキシマムザホルモンの『ぶっ生き返す』なのですが、これは本当に行けるので最終手段です。

"応援ソング"ってわけじゃないんですけど、「これこれこれ~~~!!」ってなる曲です。
そういう位置に居ます。

かといって、<口のなかで虹がかかる>の一連の流れも大好きです。
不穏さがあるのに、どこか諦観しているような、やりきれないような感触。
切ないと一言で言いきれない、感想を言うのがとても難しい部分です。
それゆえに好きなのでしょうか。
それまでバチバチにノッていたのに、ふしぎとここでは泣きそうになります。

舌なめずりする程好きな故、どう書いたらいいのか、とても悩みました。絵もね。
絵も文章も、全然納得できていない。
納得できていない物を公表するのは、見て下さってる方に失礼で申し訳ないと思います。
でも…まぁ…趣味だし…。という気持ちもあり……。
リベンジしたいですね。

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『市民』は特に、他の人の感想を聞いた事の無い曲かもしれません。
どうなんだろう。自分と同じように舌なめずりして聴いてる人、いるんだろうか。
内なる獣とライブのたびに戦ってる人、いるんだろうか。


もしそんな方を見ましたら、危険人物なので、善良な市民の皆さんで袋叩きにしてやりましょう!