『割礼』の歌詞で初めて「物質」というワードが出て来る。
(曲名『物質的胎児』は除く)
物質の洗礼、東京。
言い得て妙な都会の形容。
<あの東京にも原始時代はあった>と、物で溢れる首都をフラットな場に引きずり下ろすクールな一撃。
「割礼」ユダヤ教の宗教的儀式。
旧約聖書、新約聖書をとおして割礼かつれいという言葉がでてきます。(中略)割礼は、神の民の目印であり、ユダヤ人が誇りとしていたものです。
(参考:http://manga.world.coocan.jp/gimon-6.html)
聞き馴染みが無いためイメージは抽象的というか、実態の無いもの、礼儀のようなものを指していると思っていたが、実際には具体的と言うか肉体的な物だった。
でも曲の流れとしては、儀礼とか神の民の目印とか、そういう実態の無いもののイメージで合ってると思う。
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全体的には都会的というか、なんとなくオシャレな音だけど、『ダンス、ダンス、ダンス』にも繋がりそうなカントリー風のギターが印象に残る。
都会とカントリー(田舎)、物質と原始時代。
相反する要素が出会っている。
02:16から始まる間奏はちゃかぽことおもちゃを叩くような打楽器が楽しかったり、歌うように流麗なギターのラインが爽快だが、ベースがぶっ込まれて突然表情を変える後半が格好いい。
激しい音のぶつかり合いで流れが変わったと思ったら、メインテンポに戻って「何もありませんでしたよ?」みたいな顔で演奏を続ける。
(そういうところあるよねー。)
色んな音がして飽きない。
単純に言えば、これが曲の魅力だと思う。
自分で言うのも難だけど、単純な言葉で表せるものは良い物だ。
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『割礼』を受けて神の民になった(と勘違いしている)現代人への皮肉。
と言ってみれば格好いいものの、直接的な表現は感じないし、歌詞は通常運転で聴き手を煙に巻く感じ。
物語を読み取る事は難しい。
しかし<物質の洗礼さ 夜空輝くコイン あの東京にも原始時代はあった>と繰り返される事で、アルバムタイトル『Ave Materia』(こんにちは、物質/おめでとう、物質)と一番密接な曲は、『割礼』なのかなと感じる。
東京の原始時代を思い出せと言いはするが、物質の洗礼を受けた東京に対する祝福でもある『Ave Materia』(おめでとう、物質)。
アルバムの折り返し曲にあたる『割礼』。
後半の曲たちは、ここを通って神(物質)の民となっているのか。
それとも、「原始時代」となじるように物質を否定する曲となっているのだろうか。
残り4曲、物質の結末をはやく見たいね。