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ラーメンを食べに行って異国での不安な気持ちを思い出す(前編)

僕は道を尋ねられる事がたびたびあります。しかも地元でよりも旅先で聞かれる事が多い気がします。また選挙の出口調査もかなりの率で声を掛けられます。
お人好しが服を着て歩いているような見た目だからだと家内には言われます。
そいえば金沢に遊びに行った時も、北國新聞にインタビューされたっけ。
去年の春、恐山に行った時もフランス人に恐山まで連れて行ってくれと言われてアタフタしたなぁ。


先週の日曜日、車で1時間ほどの宮城県南部に位置する、角田市かくだしという町にラーメンを食べに行きました。
ラーメン屋ではなく、いわゆる町中華ですが、そこにくるお客さんのほとんどはラーメンを食べに来ます。中華屋には珍しい真っ黒なスープがウリです。人呼んで角田ブラック。
見た目ほどしょっぱくも無いし、ほのかな甘みも感じる不思議なスープです。

商品名はラーメン

一応紹介しておくと、阿武隈急行角田駅から徒歩一分にある光華飯店こうかはんてんというお店です。
お店の前にも駐車場がありますが田舎あるあるで、駅に無料の広い駐車場があるのでそこに停めて歩いて行きました。

住宅地にある普通の中華屋さん

年一ぐらいで食べに行くのですが、コロナ禍のせいで2年半ぶりの訪問です。
12時丁度に店に着くと誰も並んでいません。たまたま全員入店した直後のようで、先頭で並びます。看板猫の写真を撮ったりしているうちに5分ほどで呼ばれました。

毛ヅヤがいいです

席は基本的に相席ですが、誰もいない丸テーブルに案内されました。
今日は息子は用事があるとの事で、家内と二人です。

間もなくやってきたラーメンのスープをすすり、そうそうこの味!と久しぶりの角田ブラックを堪能しました。

我が家のルーティーンは、ここで食事後角田駅に戻って、駅のトイレを借りてから帰ります。

昔は国鉄丸森線 今は阿武隈急行

この日も駅のトイレに向かいました。
先に用を済ませた僕は、通路にある指名手配犯のポスターなどを眺めていました。
やがて家内が来たので出口に向かおうとすると、突然前から来た非常に小柄なおじいさんに声を掛けられました。

「スミマセーン。スーパードコデスカ」
おじいさんだと思ったその人は、中年(に見えた)の外国人でした。
角田市は市とは言え、人口が三万人にも満たない小さな田舎町なのでスーパーまでは少し歩かないといけません。何よりそれが伝わるか疑問です。スーパーに行きたいという事はコンビニでもいいのかな?と思い、聞いてみました。

「スーパー?コンビニは?」
「アーワタシベトナムノヒト、ニホンゴヨクワカラナイ、スーパーチガウ、アー、バステイドコ?」
「バス停?」
(路線バスはよくわからないし、そこにバス停はあるけどこの人時間とかわかるのかな?)
「バス停はそこ」と外を指差して出口に誘導しようとしました。
「トーキョー、バス、イク?」
「東京にバスで行きたいの?」
「ソウ」

それは無理です。ここからだと仙台まで戻ってそこから東京行きのバスに乗るのがいいと思いましたが、阿武隈急行は東北本線のJR槻木駅つきのきえきで乗り換えないといけません。どう伝えようかと考えていると
「フクスマ、ワタシイク、トーキョー、バス」
「福島からバスで東京に行きたいの?」
「ハイ」
「オーケーオーケー、それなら・・・」

15分後に福島方面行の電車が来るのですが、それも梁川駅やながわえきで乗り換えないといけません。
天井からぶら下がっている時刻表を指差して12時56分に乗ればいいと伝えますが、当然わからない様子。
そこで指を1本、2本、5本、6本と順番に見せてなんとか伝わりました。

次は梁川で乗り換えないといけないのでそれを伝えたいのですが、なんと言えばいいのか。
トランジットは飛行機の乗り換えだけかなぁ?でもこの流れなら電車の乗り換えだとわかるよなぁと考えたところでハッと気づきます。
なんとなく言葉の通じない外国人には、何故か話せないくせに英語で伝えようとしてしまいがちですが、相手は英語話者でも無いし、そもそもこちらはカタカナ英語の発音しかできないのでほぼ伝わりません。

恥ずかしながら僕は英語が全く話せないし、単語もほぼ知りません。折角相手が片言の日本語で話そうとしているので、ここは日本語で押すべきと考えなおして、身振り手振りでなんとか乗り換えを理解してもらえたようでした。

するとまた彼が聞いてきました。
「フクスマ、トーキョー、バスアル、ダイジョブ?」
そこへ家内がスマホのグーグル翻訳画面を表示して僕に渡してくれました。日本語→ベトナム語です。ナイスアシスト!
ゆっくり大きな声でスマホに話します。
「福島からなら東京行きがあります」
すると画面にはこう表示されました。
「福島から奈良京都行きがあります」
えーい!使い物にならんわ!

指でOKマークを作って「オーケーオーケー」と言いながら、あっオーケーも伝わるか怪しいと思いなおして
「福島はバスあります。東京大丈夫」と伝えると理解してもらえたようでした。

今度は有人窓口で切符を買わないといけませんが、彼は一人で窓口の駅員に何か話しかけています。ところが駅員は首を捻るばかりで、どうにも塩対応です。
そこで福島までの切符1枚を注文して、梁川では接続の列車は向かいのホームなのかを確認して、彼に最後の身振り手振りで乗り換えを伝えて改札を抜けるまで見送りました。

いっそのこと仙台まで乗せてあげて、そこで東京行きの高速バスに乗るところまで面倒を見てあげても良かったのですが、距離が延びる分費用が余計にかかるかも知れないし、満員で遅い時間のバスしか乗れない可能性もあるのでやめました。

恐らくこのあたりは大きな工場があるので、そこで働いていたのでしょう。
こんな言葉もロクに通じない国で一人で移動するなんて偉いなと感心するとともに、無事に東京まで行けるか心配になりました。
そんな事を思っていたら、30年近く前の出来事を思い出しました。

つづく

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