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豪雪地帯の暮らし その3

大雪の朝

雪は数センチから20Cmぐらいで大体毎日降るのですが、まれに一晩で30Cm以上積もる場合があります。
こうなると流石に大変な事になります。
前の晩に雪かきをして、玄関から道路までの通路を確保しておくのですが・・・

ある朝起きると珍しく快晴でした。
学校に行く準備をしていると、毎日朝の雪かきをしている母が騒いでいます。
玄関に行くと、なんとドアが開かないと言うのです。凍っているのかと聞くと、そうではなくどうやら雪が積もって開かないらしいと言うのです。
そんな馬鹿なと押してみると、少しだけ開いてあとはググっと何かを押している感じで開きません。
オリャッ!と力を入れて押すと、人が一人通れるぐらいは開きました。
隙間から見ると、ものすごい雪です。
スコップを片手に母が隙間から雪をどかしつつ出て行きました。
その間僕は学校へ行く準備をします。
家を出る時間になりましたが、ここで問題なのが靴のチョイス。
冬用の靴は2種類しか持っていなくて、一つはスノトレ、もう一つは短いウエスタンブーツ。
どう考えても足首から大量の雪が入ってきそうなコンディションなので、少しでも足首周りをきつく紐で締められるスノトレにしました。

やがて母が戻って来て、道路までの道はなんとか付けたと言います。
玄関から道路までは3mぐらいです。
外に出てみると、幅30cmの道が3m先まで続いています。両脇は40Cm近い雪の壁です。
まだ踏み固められていないので、足も沈みます。
そして、人っ子一人通った跡の無い道路へ足を踏み入れました。
ズボズボズボ・・・膝上あたりまで雪の中に埋もれると同時に、学生ズボンの中に雪が上がって来ます。
ひゃー冷たい!学校まで行けるかしら・・・
最初こそ慎重に歩いていましたが、早く雪の無い道路まで進んだ方がましだと気づき、ドスドスと歩いて行きます。

しばらく進むと反対側から歩行者が来ました。大人の女性です。
すれ違う瞬間だけお互い左右に分かれてやり過ごし「ここから先は自分が付けた足跡があるので、そこを歩いて下さい」と心の中でお互いがつぶやいていたと思います。
ようやく新雪地獄からは解放され、足跡をたどるように踏んでいきます。
そして100m程進むと、車が通った跡のある道に出ました。
そこからはタイヤの跡を歩いて、なんとかバス通りまで出ました。
バスは大渋滞に巻き込まれているのでパスして、30分歩いて国道まで行きました。
そこまでの道のりは、人の往来が多い為歩道も歩きやすく、サクサク歩けましたが、足の中に入った雪が溶けて冷たいのなんの。

そんなこんなでいつもより20分ぐらい遅く学校に着きましたが、遅刻をしたわけでも無く、また特別遅れてくる生徒がいるわけでも無く、当たり前に授業が始まるのでした。

歩けなくなる

青森市は雪は降りますが、寒さはそれほどではありません。
海に面しているからでしょう。2月の最低気温の平均値をネットで調べたら、-3.3℃とありました。

そんなある日の事、結構冷え込みがきつかった晩の翌朝、バスを降りて学校へ歩いて行きましたが、前の夜に除雪車が除雪をしていったようで、道路が真っ平のツルツルになっていました。
その日はきれいに晴れていて、恐らく前の夜も雪は降っていなかった様子です。
学校の近くにある道路まで来た時、全く歩く事ができなくなりました。
そこは車通りがかなり少ないのですが、道幅は十分に広い道でした。
そのあたり一帯がスケートリンクのようになっていたのです。
一歩踏み入れたとたん、足がチャップリンの映画のように前後に宙を舞い、手はグルグル状態。
片手に傘を持っていたので、それを突き立てますが刺さりません。
それでも傘を含めた三点支持で、転ぶ事だけは免れましたが、足を前に出すことができません。
前かがみの中腰になったまま、微妙な道路の曲面に沿って勝手に路肩へ滑って行きます。(スケートの初心者が思わぬ方向へ進んでいくアレです)
意思とは関係なく勝手に一回転したりしながら路肩へ進んでいき、電柱に抱き着く事ができました。

今のを誰かに見られたら恥ずかしいと思いあたりを見回すと、同じような格好であちらこちらに手をグルグルしながらひっくり返ったり、雪の壁に突っ込んでいる同じ学校の生徒達の姿が見えました。
傘を頼りに、ツルツルになっていない路肩を歩いて、なんとか学校へたどり着く事ができました。
後にも先にもあそこまで鏡のようにツルツルの道路に出くわしたのはあの時だけです。

書ききれませんでした。もう一回だけ続きます。


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