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豪雪地帯の暮らし その2

除雪

青森市は年間の予算のかなりの額を除雪に費やしていました。
ちなみに昨年度は48億円だそうです。
仙台あたりでは、雪が降っても国道やそれに準ずる道路ぐらいしか除雪はしてくれません。
青森市はそんなことをしていたら生活が成り立たなくなるので、定期的に細い路地にまで除雪車やブルドーザーが来て除雪します。
夜中にゴゴゴと音がして、家が地震のように揺れ始めると除雪車が来た合図です。
ジャラジャラとチェーンの音を鳴らして、行ったり来たりしているのが解ります。
朝起きると、道路は平らになっています。
道路が見えるわけではありません、前の晩に降り積もった雪が無くなり、いくらか道路の雪が削られているだけです。
その代わり、道路と家の敷地の境目には削られた氷の板のようになった雪の塊が縁石のように盛り上がっていて、それを片付けるのが一苦労です。
それにしても、狭い住宅地まで除雪してくれるのはすごい事です。
袋小路にも入って行きます。
こりゃ48億円もかかるわけです。

雪捨て場

市内のあちこちで除雪車が出動するわけですが、その雪をどこへ捨てるかというと、大きく分けて二種類あります。
1か所は海です。青森市は海に面しているので、ダンプカーに積んだ雪は、そのまま岸壁まで行って海に捨てます。
もう1か所は、各地の雪捨て場です。
広い空き地、グラウンドのようなところがそれに割り当てられます。

僕が住んでいた家の道路を挟んだ向かい側には企業の私有グラウンドがありました。
グラウンドと言っても荒れ放題の空き地で、片隅にバックネットがあるので野球ができるんだなと判る程度です。
最初に迎えた冬、そこが雪捨て場になると近所の人に聞いて、道路の向こうまで雪を捨てに行くのは面倒だなと思っていたのですが、雪捨て場は個人が捨てに行く場所ではありませんでした。
降雪シーズンになると、毎日ひっきりなしにダンプカーが雪を捨てに来て、それをブルドーザーが踏み固めます。
警備員も常駐しています。雪か土の違いだけで普通に埋め立て地と同じです。
雪は見る見るうちに積み上げられて、二階の屋根をはるかに超える高さの台形の山になりました。
100m×200mはある空き地で、高さは8mぐらいはあったでしょうか。
それはそれは壮観でした。
そして、黒く汚くなった最後の雪が溶けたのは6月も半ばになってからでした。

融雪パイプ

駅前のメインストリート -といっても片道1車線の狭い道で寂れた感じの通りです- には、センターラインの下に融雪用のパイプが埋め込まれており、噴水のように水が吹き出ます。
30Cmぐらいの高さまで出てたかと思います。
雪国ではよくある光景で、温泉だったり地下水だったりが一般的ですが、青森は海が近いので海水を出していました。
そのため凍る事無く、メインストリートだけは雪がありませんでした。
まわりはゲチャゲチャで大変ですが。

本当に海水なのだろうかと、横断歩道を渡りながら手をかざして舐めてみた事がありますが、確かに海水でした。
自動車、特に足回りが錆びるという事で、車に乗っている人には不評でした。

体育

雪が本格的に積もり始めると、中学の冬の体育はスキーになります。
楽しそうでいいなと思ったあなた!全然楽しくありませんよ。
生徒は家からスキーとスキー靴を持って来て、体育館に並べて置いておきます。これがまた重たいので大変です。

ある日突然ブルドーザーがやって来て、校庭の真ん中に直角三角形を伏せた形の山を作ります。

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そこを滑るわけですが、最初から滑るのではありません。
校庭と見渡す限りはるかかなたまで続く田んぼは、一面雪に覆われて大雪原になっています。
まずは準備運動代わりに、はるか向こうにある高圧電線の鉄塔までスキーのスケーティングで行って、戻って来るというのを2周行います。
小さな頃からスキーに慣れ親しんだ地元の連中は、軽やかにものすごいスピードで滑って行き、片道200mはあるコースをあっという間に回ります。
ところが、僕のように転校してきた生徒はスケーティングなんてできません。
しかも、スケーティングは歩くのとおなじぐらいできて当たり前の事なので、授業では教えてくれません。
結果的に、ただひたすらすきーを履いて、ストックを突きながら歩いていくしかありません。
吹雪の中、遅々として進まないスキーを履いての歩き、地獄です。

2周する頃にはもう授業時間の半分は終わっていて、殆どの連中は校庭の真ん中の坂で滑っています。
今度はその坂をえっちらおっちら登っていき、ようやくヨタヨタとボーゲンで下まで滑ると授業は終わり。
こんな事を週に2回ぐらいやらないといけないのです。
何にも楽しくありません。

高校生になると、僕の学校では冬の間はラグビーをやります。
雪上ラグビーなので、転んでも痛くなく、思い切りプレーする事ができます。
ただ、脚が雪の中に埋まりますので、素早く走る事はできません。
体力的にはかなりキツイものでした。
難点は、授業が終わると靴がびちょびちょになる事です。
授業用にスノトレ(雪の中で履くトレーニングシューズ)を学校に置いているので、通学では使いませんが、次の体育の授業までに乾かしておかないと悲惨な事になるので、教室のストーブの周りに置いて乾かさないといけません。

この時の授業があったので、ラグビーはなんとなくルールを覚える事ができました。

思いのほか長くなったので、もう一回続きます。

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