見出し画像

エイハブの六分儀-西香織

【今月の星空案内】

星空の模様替え、進んでいますね。主張強めの冬の星座は西へ、南の空には眠たげでひかえめな印象の春の星々がのんびりと高く昇ってきています。

宵時の南西の空の冬の大三角は、オリオン座ベテルギウスおおいぬ座シリウスそして、こいぬ座プロキオンで形づくられています。その上にならんだ2つの星はふたご座の右からカストルポルックスです。オリオン座のかたむき加減に、冬の終わりを実感します。

北の空高く7つの星をむすんで大きなひしゃくのカタチができれば、それが北斗七星ですね。この星のならびは、春の代表的な星たちへ私たちを導く大切な目印です。水をくむ部分の先の星ふたつを結ぶ線を、水が出る方へひしゃくの注ぎ口を起点にして、そこから5倍のばした先に北極星が輝いています。反対のひしゃくの柄の部分のラインを南へ伸ばした先に、うしかい座アルクトゥールス、その先におとめ座スピカを見つけられます。このラインが春の大曲線です。北斗七星はおおぐま座のおしりからしっぽの部分にあたります。

おおぐま座のすぐ下(南)に位置しているのが、ししの大鎌という星の並びとレグルスデネボラなどで描かれるしし座です。レグルスは、78光年彼方の生まれてから数億年しかたっていない若い恒星で、春の星々を先導する星です。よく晴れた夜の渋谷でなんとか見つけることができるくらいで、全天で21個ある1等星の中で最も暗いのですが、それでも古くから大切に見上げられてきました。それは太陽の通り道である黄道上に輝く1等星だからです。

レグルスは「小さな王様」という意味。その名が見かけ以上の血筋の良さを表しています。かのコペルニクスが命名したともいわれています。別名コル・レオニスは「ライオンの心臓」という意味で、かつて占星術が確立した頃には王の運命をつかさどる重要な星とされていたとか。たてがみと心臓が見つけられたら後は簡単です。東にある小さな直角三角形がおしりからシッポにかけて。デネボラ、シッポを意味する名の星がシッポの先で輝いています。よくできた形ですから、勢いよく駆け上ってきた春のライオンを捕獲するのは意外と簡単ですね。

しし座はギリシアのネメアの谷に住む人食いライオンで、通りがかる人をひと飲みにしては口のまわりはいつも血だらけ。ギリシア神話の英雄ヘラクレス(星座名はヘルクレス座)によって、首を3日3晩締め上げられ退治されて星になりました。実はピラミッドを守るスフィンクスとは母親が同じ兄弟だったりします。

さて、4月9日(火)の新月はアメリカで皆既日食をおこします。太陽地球の順で一直線にならび、月が太陽をすっぽりと隠す現象です。場所はカナダ・アメリカ・メキシコにかけて。そのためのツアーに申し込んでいる!という方もいらっしゃるでしょうか。太陽と月の偉大さを身をもって実感できるので、機会があれば一度はぜひ挑戦してみて頂きたいとてもおススメの天文現象です。太陽と月が偶然たまたま、同じ大きさに見える今だからこそ楽しめるレアな経験なのです。月は年間3㎝弱ずつ遠ざかっているため、遠い将来には決して見られない現象です。(人間の一生などおよばない、はるか未来の話です…)

2035年9月2日には、日本のおもに北関東(群馬・栃木・茨城ほか)で皆既日食が起きますが、とにかくお天気でないと見られません。台風の季節でもあるため晴天を祈るのみです。

ちなみに私個人的に、2028年7月22日にオーストラリア、ニュージーランドなどで起きる皆既日食がねらい目ではないかと…。季節が逆なので冬ですが、オーストラリアの砂漠のエリアなら雨の心配がぐんと減るかな、と。2017年8月アメリカの皆既日食は、砂漠エリアだったので二泊三日という弾丸トリップでしたが、イチかバチかで挑戦したところ読み通りお天気バッチリで、それこそ人生観が変わるほどの経験でした。


2017年8月皆既日食@アメリカ・オレゴン州 ©KazuoNishi
2017年8月ダイヤモンドリング@アメリカ・オレゴン州 ©KazuoNishi

ということで、2028年7月オーストラリア皆既日食観測旅を目標に、今から準備を進めていきたいな、と思っています。「アクセスと治安が良く、晴天率が高い場所(砂漠地帯など)」を条件に皆さんも調査して、ぜひ人生のスケジュールに組み込んでみてくださいね!

この先の皆既日食および金環日食の予定は、国立天文台のHPをご参照ください。

https://www.nao.ac.jp/astro/basic/solar-eclipse-list.html


4月6日(土)細い有明の月と火星、夜明け前の東の空です。土星も近い!
このころ、月を含めた惑星たちが並びます。7日(日)、さらに細い月金星。こちらも明け方の東の空です。4月9日(火)10日(木)、火星と土星が最も接近します。
4月11日(木)には月齢3の極細の月と木星が夕方西の空で。その更に低い位置にポン・ブルックス彗星も見つかるかもとの情報もあります。双眼鏡や望遠鏡で挑戦してみてはいかがでしょう?すぐに見えにくくなってしまうようです。

4月22日(月)16時ころ、こと座流星群がピークを迎えます。月明りがじゃまですが、14日から30日ころまで数は少ないながら、明るい流れ星が期待できるので、夜空を見上げがちに過ごしてください。

さて、去年からずっと夜空を彩ってきてくれた明るい木星も、4月中旬以降には太陽の向こう側に移動するためしばしのお別れです。

激しい気温差や天気の急激な変化…春先の不安定な環境についていけず、しんどさを感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。寒い冬を乗り越えてきた心身は想像以上に疲れていて、実はこの時期にバランスが乱れて体調を崩す方も多いのです。私も、2日間寝込んだ直後に年度末最後のイベント投影に全力で挑んだ結果、声が出なくなって、椿姓のお酒が大好きな女性芸人さんのような声になってまして…場末のスナック感あふれるアンニュイな星空解説になりそうです。

皆さんも疲労がたまっていると感じたら無理をせず時間を見つけて、プラネタリウムでぼーっとして寝落ちしてしまうもよし、温泉もよし。チョコレートやお気に入りの音楽など、ご自分の大好きなものに囲まれてリラックスできるよう心がけるようにしてみてくださいね。

西 香織
コスモプラネタリウム渋谷「星を詠む和みの解説員」。幼い頃からプラネタリウムに通う。宇宙メルマガTHEVOYAGE 「エイハブの六分儀」で毎月の星空案内を担当。そそっかしく、公私ともに自分で掘った穴に自分でハマり(ついでに周囲の人も巻き込んで)大騒ぎしながらも、地球だからこそ楽しめる眺めを満喫する日々。
コスモプラネタリウム渋谷 https://shibu-cul.jp/planetarium


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?