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宇宙曝露実験プロジェクト~ギモンをぶつけてみた! 後編[高萩 航/宮下 裕策]

あけましておめでとうございます! 宇宙メルマガTHE VOYAGEの読者のみなさんは、年末年始どのように過ごされましたか?はやぶさ2のカプセルも帰還したということで、2021年はより一層宇宙がアツくなる年となりそうです。今年もSpace Seedlingsは最新の宇宙に関するトピックをご紹介できるように、頑張って記事を書いていこうと思います!

さて12月号の前編ではパナソニックの最新の光ディスク「アーカイバル・ディスク」についてご紹介しましたが、今回の後編ではインタビューで実際に説明を聞いて、私たちSpace Seedlingsのインタビュアーがギモンに思ったことをぶつけた様子をお届けします!!

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インタビューの様子:右上SS宮下/左上SS高萩/中段中央Panasonic宮下さん/その他、Panasonic関係者

ギモンをぶつけてみた!
※Space Seedlingsのメンバー (SS)・パナソニックの宮下さん (PA)

SS高萩:では、早速お話を伺って気になった点を質問させて頂きます。 私が生まれてから今までの間でも、フロッピーディスクなどのデータを記録するものがどんどん新しくなってきて、古いデバイス (装置や機械のこと)は使えなくなってしまったと思います。アーカイバル・ディスクはデータを100年保存して未来に残すということですが、100年後にアーカイバル・ディスクを読み書きするデバイスも残っていないと意味がないのではないでしょうか?

PA宮下さん:パナソニックが100年後も存続しているかは置いといてですね (笑)このような技術を開発するときには「バック・コンバージョン (古いものとの互換性)」が考えられています。例えばブルーレイ・ディスクレコーダで古いCDやDVDが再生できるように、新しいデバイスでも古いものが読み書きできるように考えられています。アーカイバル・ディスクも同じように、今後新しい技術が生まれてもその装置で問題なく読み書きできるようになっていくと思います。

SS高萩:パナソニックとしては、100年後までどのようなデータを残していきたいですか?

PA宮下さん:お客様が残したいデータを残す技術を開発するのが我々の仕事です。実際に残したいものは、お客様に決めていただきたいと思っています…もちろん、どんな需要があるかは想定しています。最近では、研究機関の研究データを半永久的に残したい、中国では監視カメラのデータを保存したいなどという需要があります 。時代が進むにつれて、お客様がどんなデータを残したいのか?は移り変わっていくものです。その時代の需要に応えるように、安心安全にデータを保存するための技術を提供できればと思います。

SS宮下:将来、月面基地での利用やもっと遠くの星にアーカイバル・ディスクを送りたいといったことは考えていますか? コストの問題もあると思いますが…

PA宮下さん:遠くに運ぼうとすると、やはり多くのコストがかかります。宇宙での輸送にはコストがかかるので、宇宙で積極的に光ディスクを使おうというアイディアはまだありません。むしろアイディアがほしいです (笑)

SS高萩:深海や、月や火星に設置する地震計のデータを保存するのに利用するのは良いと思います (月の地震は月震、火星の地震は火震といいます)数十年記録し続けて、あとは回収するだけですから…

PA宮下さん:メンテナンスしやすいところがいいですね (笑)アーカイバル・ディスク自体は100年持つのですが、読み書きする機械のほうはやはりどうしてもメンテナンスが必要になってしまいます。コストをかけてもいいという前提であれば、読み書きする機械も100年持たせる技術を開発するという選択肢もでてくると思います。

SS宮下:アーカイバル・ディスクで残したいようなデータの需要は、近年ではどのような傾向にあるのでしょうか?

PA宮下さん:需要はうなぎ登りで増えています(笑) テレビの画質は4Kや8Kのように年々上がってますし、YouTubeやFacebookなどのユーザーも増えています。それにともなってテレビの録画や、YouTubeにアップロードするための動画といった、たくさんのデータを保存したいという要望はどんどん増えています。たくさんの情報を記録するには電気代がかかってしまう問題もあり、一度書き込めばコストをかけずに保存できるアーカイバル・ディスクの需要は今後も増えていくことが想定されます。

SS宮下:アーカイバル・ディスクを使ってもらうための障壁などはありますか?

PA宮下さん:まずみなさん、アーカイバル・ディスク知らないですよね (笑) ブルーレイ・ディスクなんかはよく知られていますけど…知名度が低いと障壁になります。それもあって、宇宙曝露実験プロジェクトで認知度を上げたいという目的もあります。

SS宮下:国際宇宙ステーションには、マガジン (12枚のアーカイバル・ディスクが入っている箱)を送り出したのですか? それとも、1枚のアーカイバル・ディスクですか?

PA宮下さん:アーカイバル・ディスク1枚です。宇宙で曝露するためのアダプターには大きさの制約があり、実は直径12 cmのアーカイバル・ディスクの外周を少しカットしたものを宇宙に送り出しました (直径8 cmのサイズ)。

SS高萩:アーカイバル・ディスクは今後どのように改良していくのでしょうか?

PA宮下さん:基本的には、データを記録できる容量を増やしていきたいと考えています。あとは通信速度の高速化や、コストを下げるなど…安くて安心なものができれば、コストを気にせず「とりあえず保存しておこう」と思ってもらえ、そういう時代をつくっていければと思っています。

SS高萩:記録できる容量がいっぱいになったらストレージごと全部交換することになると思うのですが、取り出したストレージはどのように保管するのでしょうか?

PA宮下さん:基本的には大きなラック (棚)にマガジンを積んでもらっているので、データが増えていけばそれだけのスペースが必要になっていきます。

SS高萩:そうなると、どんどんスペースが必要になってしまうので、宇宙空間や深海にアーカイバル・ディスクを持って行き、そこで保存するということも考えられますね…その時は、今回のお話にあったようなアーカイバル・ディスクの耐久性が重要になってきますね。将来的には、パナソニック専用の地球周回軌道なんてことも⁉

PA宮下さん:現時点では、他のストレージで宇宙空間に耐えられるものはなかなか無いんですよね。例えば、HDD (ハードディスク)やSDD (ソリッドステートドライブ)は磁気を利用したものなので太陽光や放射線に弱い。そういう意味で、アーカイバル・ディスクは利点があると思います。

SS宮下:サイバー攻撃や電波攻撃を受けたときのセキュリティ対策として、今回のアーカイバル・ディスクを使用することで、データが盗まれたりするといったリスクが減ったりするのでしょうか?

PA宮下さん:セキュリティも重要なキーワードになってくると思います。光ディスクの安心安全のコンセプトの中にデータの真正性というものがあります。パナソニックの光ディスクは1回書きの使用だからこそ、上書きすると後でわかるようになっています。光ディスクのデータが本当の元データであるかが検証しやすくなっています。必要であればそういったソリューションを提供することは考えられますね…HDDとかだと上書きすると元のデータが消えてしまうので、そこが消えないというのは光ディスクの売りになると思います。

SS高萩:最後に、僕からの要望が…(笑)どうしても会社規模じゃないとできないことなので、この場で言わせて下さい!!将来まで残したいデータとして、ゲノム (生物の遺伝子の情報)を後世まで、人類の遺産として保存して欲しいです!!アーカイバル・ディスクの特徴を生かして、いろんな生物の遺伝子の情報を未来まで残すことができれば、これほど価値のあることは無いと思います。

PA宮下さん:ゲノム情報の保存とは相性がいいと思います。保存してどう活用するのかというサービスも含めて、ポイントになってくると思います。パナソニックだけでできるかはまだわからないが、いろんな企業や人と協力しながらぜひチャレンジしていきたい。

SS高萩:恐竜の情報とかも今まで残っていればと考えることがあります (笑)今見られる生物が、いつまで生き残っていけるかわからないので、そのような取り組みは重要だと思っています。

PA宮下さん:夢がありますね!

1時間みっちりインタビューさせていただき、インタビュアーの私たちが気になったこともたくさんお聞きすることができました!私たちの大切なデータを、100年先まで残す。「アーカイバル・ディスク」読者の皆さん、覚えていただけたでしょうか。

最後に、今回のパナソニック「宇宙曝露実験プロジェクト」で実際に宇宙を旅しているデータの一部をご紹介させていただきます。宇宙に想いをはせながら夜空や家族、ペットとの思い出の写真、100年後も残したい日本の風景などのご応募がありました。その中から、100年後も残したい日本の風景としてアーカイバル・ディスクに記録され、宇宙を旅している写真がこちら。

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画像:京都 日本の美しい風景を永遠に!#宇宙ストレージ


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宮下 晴旬
パナソニック株式会社 コネクティッドソリューションズ社 
ストレージ事業開発センター 
アーカイブビジネスソリューション開発室 室長

【職歴】
約20年間光ディスクの技術開発に従事、現在はマーケティング、企画を担当


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高萩 航
東京大学 理学系研究科化学専攻 博士3年

【専門・研究・興味】
アストロバイオロジー、地球初期における金属元素の循環

【活動】
Astrobiology Club


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宮下 裕策
京都大学 医学部 2年

【専門・研究・興味】
医学科・DNA修復のイメージング・宇宙医学
(特に宇宙線の生物影響に関心があります)

【活動】
Space Medicine Japan Youth Community
Astrobiology Club
宇宙ユニット
宇宙人クラブ

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