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【スターバックの本棚】『空にピース』

空にピース 藤岡陽子/著  幻冬舎

以前、ご紹介させていただいたノンフィクション本、村上靖彦著『子どもたちがつくる町 大阪・西成の子育て支援 』や、黒川祥子著『シングルマザー その後』に出てくるような厳しい環境に置かれている親と子どもたちのことを、小説にしたような本です。

藤岡陽子さんが、初めて社会派小説に挑まれたように感じました。ジャーナリスティックな視点を感じ、ご本人にお聞きしましたら、実際に、「日本社会の底」にあるような地域で、小学校と中学校の教員をされているご友人に、それぞれに何度も会いに行かれ、緻密な取材をされて書かれたそうです。聞かれた話は、辛いものばかりで話を聞きながら泣いてしまったこともあると話されました。そして、「ほとんど実話なんです」とも、仰っていました。

2020年の7月に発表された「2019年 国民生活基礎調査」によると2018年の子ども(17歳以下)の貧困率は、13.5%、約7人に一人の子どもが、貧困状態にあることがわかります。難民として日本に来ている家族の子どもたちの生活や虐待や貧困といった問題が、真正面から描かれる中、主人公の一貫した姿勢に、勇気と確かな力をもらえます。誰か一人でも本気で向き合ってくれる人がいれば、それだけで頑張れる。情熱のある先生の存在が、子どもたちの心を、少しずつ変えていきます。

【あらすじ】
公立小学校の教師になって五年目のひかりは、都内の赴任先で衝撃を受ける。立ち歩き、暴力、通じない日本語……。日本語が話せないベトナム国籍のグエン・ティ・ロン、授業中に教室を出て行く今田真亜紅、不登校気味で給食だけ食べに来る佐内大河、クラス分けに抗議をしにくる児童の母親…。ひかりの前任者は鬱で休職中。さらに同僚からは「この学校ではなにもしないことです。多くのことを見ないようにしてください」と釘をさされてしまう。持ち前の負けん気に火がついたひかりは、前向きな性格と行動力で、ひとりひとりの児童に向き合おうとするが……。虐待、貧困、性暴力――。過酷な環境で生き延びる子らに、悩みながら寄り添うひかりが最後に見た希望とは。

隆祥館書店:二村 知子 | Tomoko Futamura
隆祥館書店店主 井村雅代コーチ(当時)に師事し、シンクロナイズドスイミングを始め、現役時代はチーム競技で2年連続日本1位、日本代表として2年連続世界第3位に。現役引退後、隆祥館書店に入社。2011年から「作家と読者の集い」と称したト-クイベントを開催、2016年からは「ママと赤ちゃんのための集い場」を毎月開き、2019年4月からは、宝上真弓先生と子育てに悩む親御さんのために絵本選書の無料サ-ビス、2020年6月より、お客様からのリクエストを受け一万円選書を始めている。

隆祥館書店:http://atta2.weblogs.jp/ryushokan/

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