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竹を切る人たちから見つけた幸せのコツ -メインログ-

前回のお話↓


彼らが竹を切りにやってきた日。その日は雨だった。かなり激しめの雨だ。

この時期の新潟県は基本、曇り空。

逆に、雨が降っていなかったら「今日は天気いいねぇ〜」となるくらいなので天気が悪いのが当たり前、雨か雪が降っていないことの方が少ない。とはいえ、この日は今にもひょうが降ってきそうな寒さだった。外での作業になるから中止になるだろうと思いながらエンヒケたちを待っていた。


エンヒケたちが到着した。

外を見ながら「雨すごいねぇ〜、よし!少しやろうか!」

竹切り決行。しかも、なんだか嬉しそう。

その時は、本当に!?と驚いてしまった。ただ、「仕事だから」と思いながら彼らについてしぶしぶ行った。


冬間近、しかも今にはひょうに変わってしまうような雨が降りつける中、竹切り作業が始まった。

この日は正月に向けて、かどまつ用の竹を探していた。

太さは13~15cmくらい。長さは6~7mはあるだろうか。それくらい大きな竹を切り出しては人力で竹林から運び出し続けていく。もちろん、人力で運び出すのにはかなりの重さだ。さらに長くて持ち運ぶのにバランスを取りながらゆっくり運ばないとならない。やじろべいのように絶妙なバランスを保って降りていく。乱暴に扱うと竹が割れてしまって、商品にならなくなるのでだいじにだいじに運ばないといけない。そんな単純だけど神経を使う作業をひたすらとつづける。

ホームセンターで売られている竹や軒先に置かれている「かどまつ」にこんな裏側ががあることを知って感謝をしつつ、自分はこの仕事ずっとやれるだろうかと考えてしまった。漠然と自分のやりたいことってなんだろうと考えて続けてしまう。もやもやと自分のやれることの少なさを痛感してどうしたらもっと周りの人のためになるのだろうと考えていた。正直、考えることはいいのだと思う。だけど、自分の生き方ややりたいことに明確な答えが出ないことを考えることがすごく息苦しかった。そんなことを考えているとエンヒケ達はどんな思いで竹を運び出しているのだろうと興味が湧く。

エンヒケ達の幸せってなんだろう?

もちろん、竹を買った人が喜ぶ顔やそれに値する報酬があるのかもしれない。だけど、それだけではなんとなく腑に落ちなかった。

雨の中、重い竹を切り出して運ばないといけない。大変な作業だ。

あ、ひょうが降ってきた。つらい。

作業は中断。

寒さ対策のために竹林整備で出てくる間引かないといけない竹を燃やしていたのでそこに集まって暖を取る。

そのうち、考えるのがめんどくせ〜と思い、考えることをやめる。そうすると彼らのよく発するある言葉が耳に入ってきた。

「贅沢だね〜」

その言葉が耳に入ってくる。彼らはその言葉をすごく頻繁に使ってくれる。この時は、竹を燃やしながら暖を取ってることに「贅沢だね〜」と言ってくれた。

確かによく考えると納得。かつては、真竹は生活用品にもなれば、建築素材になる優れものの素材だった。欲しい人は大勢いたし、お金になるから岩首にも多く存在していた。

今ではプラスチックが竹に置き換わってしまっていて、竹は里山を荒らしてしまうなど悪いところが目立ってしまっている。ただ、そんな素晴らしい素材を燃料としてふんだんに使って暖をとっている。昔の人からみたら罰当たりなくらい贅沢なことだ。

なんだか、雨に打たれているのも楽しくなってきた。

そうすると竹のコップでコーヒーが出てきた。コーヒーを飲みながら贅沢な暖炉を囲う。

「幸せだね」

いつの間にかそんな気分でみんなの口から溢れていた。素敵な時間だった。そう考えると寒いし、雨が降っているからこんなに素敵な体験をできている。一気に見方が変わってきた。

竹が風に揺られて擦れ合っている音。雨が当たって竹に当たっている音。暖をとっていた竹が膨張して弾ける音。

竹林の中でしか聞こえない音が聞こえ始める。神秘的だった。なんで今まで聞こえてこなかったんだろう。

始める前にエンヒケ達が楽しそうにしてた理由がわかった気がする。彼らの幸せのほんのすこしがわかった気がする。楽しんでいるんだ。


その日は薄暗くなってきたので火をつけていた竹の周りに集まり、消えるまで見続ける。なんだか、仕事終わりなのに名残惜しい。もっと竹林にいたいと思った。

名残惜しく竹林を出て、家に帰る。

.

雨に当たらないって幸せ。

カレーの中にお肉が入ってた幸せ。

ビールが一本あった幸せ。

みんなで分けて飲めた幸せ。

いつの間にか、僕の口からも溢れていた。



長い竹を担いで運ぶ。
やじろべいのようにバランスをとりながら慎重に
雨が降りつける竹林。
ここの世界の音がする。
ぜいたく者め。
竹の爆発する音が体に響き渡る。
雨が降る。


終わり。
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いつも応援していただきありがとうございます。 多分、山にいくか不思議なものを食べる力になります。