タスマニア・サヴァイバル5

洞窟についてからは、高橋のムダ知識…ではなく、サヴァイバル知識が存分に発揮された。焚き火の火はあっという間につき、食料である魚や水もそれなりに確保された。
「火はついたけど、一酸化炭素中毒には注意しないとね。まあこんなに風が通る洞窟なら問題ないだろうけど」高橋の手際の良さに、僕もキッシーも呆然として見ているしかなかった。
「ところで、だ。ここで僕らの目標を明確にしよう」高橋がその辺に落ちていた木の枝を使って地面に何やら書き始めた。
「まず絶対の目標。このジャングルから脱出すること。これは何があっても果たさなければならない。こんなところで野垂れ死になんてゴメンだ」僕はうんうんと頷く。キッシーも頷いていたが、それでいいのだろうか。
「…それから、もう一つ。オトリちゃんを探すことだ。色々あるにはあったし、恨みもないこともないが…しかし大事な友達であることに変わりはない。オトリちゃんは生きているだろうが…やはり安否は確認しておきたい」オトリちゃんは何だかんだで運がいいし、死ぬようなやつではない。そんなことはわかっているけれど、状況が状況だ。どんな事態も覚悟しなければならない。
「オトリちゃんがいそうな場所に心当たりはあるかい?」僕らは黙るしかなかった。そんなのわからない。そもそもこんな鬱蒼と繁るジャングルで、どうやって探そうというのだ。
「食べ物で釣るのはどうかな?」キッシーが言う。オトリちゃんなら釣られる可能性は十分にあるが、しかしなんせジャングルが広すぎる。もちろんその意見は却下された。
「いずれにせよ、生き延びることが大切だ。待っていれば、いつか助けが来るかもしれない」高橋はそう言ったが、はたしてその助けは一体いつになるのか…。
夜もふけ、洞窟の暗闇で希望も見えぬまま、僕らは眠りについた。

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