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ドラマ『ユーミンストーリーズ』第三週「春よ、こい」(ネタバレ雑感 )

その制作発表があった時から楽しみにしていたドラマ。特にこの話。
その割に、諸事情で観られず、録画したものを後から一気見。

「春よ、こい」
(2024年3月18日(月)~21日(木))
・原作:川上弘美「Yuming Tribute Stories」より
・脚本:澤井香織
・演出:奥山大史
・撮影:市橋織江

脚本と演出はこれまでご縁のなかった方々なのですが、撮影は市橋織江さんですね。一度、スチールカメラマンとしてのお仕事を直に拝見したことがあります。
『恋は雨上がりのように』(2018年)とか、映画の撮影も上品で綺麗な画面で好きです。
そして原作が、天才・川上弘美ですからね。
この作品だけ原作を先に読んでいました。ドラマ化が決定する以前に。
しかもドラマは僕たちの宮崎あおいタンですよ!

豪華キャストだったな

ドラマの話の前に、「春よ、こい」という1994年(平成6年)のこの曲について少し触れます。

春の歌ですが、歌詞に「桜」は登場しません。
桜が歌われるようになったのっていつ頃からなんだろう?
森山直太朗『さくら(独唱)』(03年(平成15年))辺りからのような気がするんですが、どうでしょう?
それ以前は『同期の桜』とかね。桜散る=特攻隊的なイメージが付き纏い、昭和の時代には歌詞に「桜」が出てこなかったという話を聞いたことがあります。本当かどうか知りませんけど。
実際、福山雅治『桜坂』(00年(平成12年))も歌詞には桜そのものは出てこないんですよね。松田聖子『チェリーブラッサム』(1981年(昭和56年))もそう。
井上陽水が日本初のミリオンセラーアルバム『氷の世界』(1973年(昭和49年))の中で『桜三月散歩道』というイカれた曲があるのですが、「狂った桜が散るのは三月」と歌っているんです。
そう、桜は「狂った」ものなんです。
曲ではありませんが、坂口安吾の傑作短編小説『桜の森の満開の下』(1947年(昭和22年))なんかは狂気の話ですからね。

長々と本筋と関係ない「桜」の話を書きましたが、「春よ、こい」はユーミンの中でも異質の歌詞だと思うんです。
「日本の恋と、ユーミンと」というベスト盤のタイトルが示唆するように、彼女の曲の多くは、恋を中心とした「誰か」の物語なんです。
ところがこの曲の歌詞は、誰の何の物語なんだかサッパリ分からない。

そんな誰の何の物語なんだかサッパリ分からない歌詞を、天才・川上弘美は誰の何の物語なんだかサッパリ分からない物語に仕立て上げるんですね。
凡人が躊躇するような設定をぶっ込んでくる。
何だよ「アレ」って。岡田彰布かよ。

でもね、見事に歌詞にピタッとハマるんです。小説を読み終えるとグッとくるんです。
それはドラマも同じで、正直、原作を知らない人は「キョトン?」なお話だったと思うんです。
だって、天才・川上弘美の小説は映像化に向かないもん。
いや、川上弘美自身は「映像化する前提で」という依頼を受けて、生まれて初めて「映像化する前提で」小説を書いたそうですけどね。
でもね、でもね、原作を知ってるせいかもしれませんが、小説の読後感とドラマを見終えた感じが似ているんです。
グッとくるんですよ。
終わってみれば、「春よ、こい」というタイトルが、誰かの幸せを願う祈りの言葉のように思えてくるんです。
ちょっと泣いちゃった。

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