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マンチェスターシティ23-24総評〜史上初の4連覇、そして未来へ〜

選手批評



#2 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 K・ウォーカー 輪の中央へ


ペップに「ウォーカーは偽SBできない」と公の場で言われて傷ついてしまったのかシーズン前にはバイエルン移籍の噂が取り沙汰された。日本ツアーには帯同し、ピッチではお馴染みの霧吹きパフォーマンス見せてくれたものの、帰国時には赤いジャージを着て帰るのではとも言われていた。ところがイングランドに戻った後にペップとお寿司屋さんでディナーを共にし、残留を決断したと思われる。お寿司屋さんなら日本ツアーのときに行けばよかったのではと思ったがウォーカーの香水がキツくて断られたのだろう。(知らん)
このお寿司屋さんでの会談で出場機会の約束をしたのか序盤からかなりのペースで起用されていた。その弊害なのかどうかわからないが、3月の代表ウィークで負傷してしまい、アーセナル戦、マドリー戦の1stlegを欠場することになってしまった。衰えなのか、ピーキングなのか、格下相手の方が突破を許したり、不用意なプレーが見られるものの、やはりビッグマッチでのウォーカーは頼りになる。
プライベートでの問題や相手とのイザコザがあった際に自らもその輪の中に入っていく姿は、コンパニ、シルバ、フェルナンジーニョ、ギュンドアンといったかつてのキャプテンとは異なる姿でファンの間でも疑問の声が挙がっていた。だがウォーカーもシティ在籍7年目を終え、功労者であることに違いはない。節度を持った行動と彼らしさを出しつつ、来シーズンも真ん中でトロフィーを掲げるところを見たいものである。

#3 🇵🇹 R・ディアス 4SEASONS 4CHAMPIONS


19/20シーズン、コロナによって中立地で一発勝負となったCL決勝トーナメント。バックスに怪我人が相次ぎ、コンディションも上がらなかったシティは格下かと思われたリヨン相手にフェルナンジーニョ、E・ガルシア、ラポルトの3バックを組むことを余儀なくされた。
翌シーズンになっても不安定な守備は続き、レスター戦ではE・ガルシアと新加入のアケがコンビを組み、5失点と大敗。下位に沈むチームは"ペップ時代の終わり"と揶揄された。
そんな中でベンフィカから加入したのが筋肉ムキムキ、短髪イケメンのルベンである。
彼が来てからチームはPL4連覇、CLでも初優勝を含む、ベスト4以上3回と安定した成績を収めるように。
足が抜群に速いわけではないが、ディレイさせながらの守備対応は天下一品である。またスライディングする際はハンドにならないように後ろに手を組みながら滑ることあり、変わりゆくルールへの対応も素晴らしい。
興味深かったのが過去4年間で今シーズンが1番リーグ戦での1試合あたりのタックル数が多かったにも関わらず、イエローカードを1枚も提示されていないところである。クリーンなタックルが多いとも言えるし、もしかしたら若干対応が甘くなりそれが失点の増加の要因になっている可能性もある。
シティのリーダーグループの中では在籍年数が1番短いが、そのリーダーシップやキャプテンシーでもチームに貢献している。例えばアウェイのユナイテッド戦やスパーズ戦でハーランドがPKを蹴る際には、相手の挑発や芝をボコボコにされないように横に居て声をかけるなどしていた。
PL5連覇とCL奪還へ、来シーズンもルベンが後ろからチームを支えてくれるだろう。

#4 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 K・フィリップス フォーエバーKP4

ハーランドやアカンジと同じ22/23シーズンの加入組。チームが3冠を達成する一方、フィリップス個人としては何もできなかった1年目だった。「まあベルナルドもマフレズもグリーリッシュも2年目から活躍したし、フィリップスも今年はやってくれるだろ」というシティズンの期待も虚しく、日本ツアーのときもパフォーマンスは良くなかった。
ロドリが1発レッドを受け、欠場したリーグカップのニューカッスル戦ではスタメン出場するものの1-0で敗戦。その後のプレミアリーグの2試合はロドリ不在にも関わらず、ベンチスタートとなった。
ウェストハムにレンタル移籍後には「ペップに体重超過のことを会見で言われて悲しかった」と当時の心境を吐露。正直、高い移籍金で来て1年何もできなかった選手にそれでも期待してたファンの方がよっぽど悲しいよとツッコミたいところだが、今更そんなことを言っても仕方ないのでお互いがそれぞれの場所で幸せになろうな、フィリップス。

#5 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 J・ストーンズ Imitation Injury


試合に出場すれば最高の選手。だが怪我が多く、計算しづらいユーティリティDF。
巨人で監督を務めた原辰徳の「上手い選手よりも強い選手」やキャリアハイの成績を残した選手にも「最悪でしょう、どれだけ(怪我)で自分の仕事に穴開けたんだ」という中日の落合監督の言葉を聞かせてあげたい選手の1人。
22/23シーズンは後半戦から偽SBや偽CBとしてロドリの横でビルドアップに関与。ストーンズがいることで押し込んだ状況で動けるレンジが広くなったロドリはミドルシュートやパスなど得点に絡むような動きが増えた。CL決勝ではインテルの5バックに対応するため、ビルドアップ時にロドリの横ではなく、ライン間に位置する役割まで与えられ新たなDF像を切り拓いた。
そんな活躍を見せつつも翌シーズン、フルで活躍とならないのがストーンズで今シーズンも怪我と復帰を行ったりきたり。エバートン戦で明らかなオフサイドを取ってもらえず、プレーを続けたら怪我しちゃうという不運もあったがそれにしてもPLで先発出場12試合は少なすぎる。
年齢も30歳を迎え、ますます慎重な起用が必要になってくるが彼がいるといないではチーム全体の配置も変わってくるので元気に1年プレーしてほしい。

#6 🇳🇱 N・アケ ナタン・アケましておめでとうございます


22/23シーズンは4CBの一角としてレギュラーを掴んだ。足元が器用な選手ではないが、粘り強い対人守備、エアバトルの強さ、ハーフスペース背後に落とす左足のキックなどでトレブルに貢献した。
シティ加入後、個人としてもベストなシーズンを過ごしたことに疑いの余地はないが、そのオフに140億で同じ左利きのCBがやってくるんだから俺がアケだったら溜まったもんじゃない。前半戦はグヴァがLSBとして出場するときはLCBとして出場しつつ、グヴァ不在時には定位置のLSBとしても出場した。
CBとSB固定されなかったことが影響したのか、それとも順足WGが苦手なのか、ウルブズのネト相手に珍しく劣勢に回る場面も見られた。しかしながらシーズンを通して安定したパフォーマンスを見せた選手の1人であり、こういう選手の存在はチームにとっても大きい。
来シーズンチームが3-2のビルドアップの形を採用し、グヴァが上がらないSBとして起用されると左からグヴァ-ルベン-ストorアカの並びになり、必然的にアケのポジションはなくなってしまう。しかしながらユニホームを買うくらい、アケの献身性や逆境でも腐らない姿勢が大好きなのでそんなことも乗り越えてくれると信じてます。

#8 🇭🇷 M・コバチッチ 任務遂行 


昨夏の移籍市場で1番初めに加入が決まったクロアチア人MF。マドリーでレギュラーを掴めずもチェルシーでCL優勝、前年度CL優勝のシティからお呼びがかかるなど珍しいキャリアを辿っている。
シーズン開幕直後の選手名鑑でも記したようにギュンドアンのようなボックス内での働きというよりは、ロドリの横や脇でのサポートが主なタスクとしてこなした。そのため得点直後にスタジアムDJからマテオ・コバチッチの名を聞くことは少なかったが、クラブW杯決勝では得点を決めた。
コバチッチらしい運ぶドリブルで文字通りチームを前進させた。保持局面での安定感が高く、ベンチスタートでも試合終盤にクローザーとしての起用も多かった。また点差がついた展開ではロドリの代わりにアンカーに入るなどコバチッチができる役割は十分に果たしたと言えるのではないだろうか。
ロドリが凄すぎるあまり、同じポジションで若手を取ったところで超えることも代わりを務めることもできないのでコバチッチのような30歳前後の経験ある選手にカバーしてもらうが1番いいだろう。

#9 🇳🇴 E・ハーランド 最高の選手


加入1年でチームをCL優勝、しかも3冠のオマケ付き、個人としてもバロンドール一歩手前まで迫った怪物。今シーズンも何ゴール決めてくれるのかシティズン以外のサッカーファンも注目するところだったが開幕戦で最愛の相棒を失ってしまった。相棒不在やLWGにドクが起用されたこともあり、ハーランドが欲しいタイミングで中々ボールが入ってこないことも目立った。また自身も11月途中から怪我に見舞われてクラブW杯は出場を回避。チームが対ビック6やCLのマドリー戦で勝ちきれなかったこともあり、ハーランドの決定力を揶揄する声も聞かれたシーズンになった。しかしながら
そして何よりゴールやアシストと言った数字以外でも貢献できるのがハーランドの良さである。マドリーとの2ndlegでは交代で入るアルバレスを抱き寄せて激励したり、交代してるにも関わらず円陣でペップの話をしっかり聞いたり、PKを外したベルナルドをカメラから遠ざけたり、最後までチームのために戦った。
以前、ダルビッシュ有が大谷翔平に関して「日々の過ごし方やどういう物を食べているか、そこが凄い。大谷くんのそこを見なきゃダメなんですよ」と大谷の影の努力を絶賛していたが、ハーランドに関しても同じことが言えるだろう。
23歳でプレミアリーグの得点記録を塗り替えた選手が驕らずにチームのために戦えるのだから彼もチームもまだ進化できるはずである。
来シーズン、チームはPL5連覇とCL奪還に向けて戦うシーズンとなる。ハーランド個人としては50ゴール決めてバロンドールも獲ってしまえばいい。だって君は最高の選手なのだから。

#10 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 J・グリーリッシュ 一人の男として


加入2年目の22/23シーズンは、大外で時間を作りつつ、逆サイドにボールがあるときは内に入ってくるWGとしてLWGに定着。1億£の真価を見せたが、にも関わらず両サイドでプレー可能な若手WGがやってくるのがシティである。
序盤はドクとの併用という形で起用された。決して悪いプレーをしていたとは思わないし、実際に12月のスパーズ戦、パレス戦ではゴールもあげているのだが何せチームの状態も上がっておらず2試合共引き分けだったのが気の毒だった。またシーズン中盤には怪我にも悩まされた。2月のCL・コペンハーゲン戦で鼠径部を痛め離脱。週間後のFAカップ・ルートン戦で先発復帰するもそこでまた鼠径部を痛めてしまい途中交代。普段は明るいグリーリッシュもさすがに辛そうだった。
4月入るとスタメンでの起用が増え、CL・マドリー戦でも確かな存在感を示した。数字に残る活躍はなかったものの、この間チームの得点数向上に貢献した。
昨シーズンと違い、常にスタメン表に名前があるわけではなかったがアウェイ・スパーズ戦では味方のゴールをアルバレスと一緒に喜んだり、優勝セレモニーでは新加入の選手にトロフィーリフトするように促すなどチームへのコミットメントも高い。
そんなグリーリッシュなら、来シーズンサヴィオがジローナから加入しようとも再び輝きを放ってくれるはずである。

#11 🇧🇪 J・ドク 流行語大賞ノミネート


マフレズの退団に伴い獲得されたベルギー人WG。右でも左でもプレー可能でダンスのように相手SBを翻弄するドリブルは"ドクのドリブルは独特"と林陵平さんに評され、一時は海外サッカー界隈の流行語になった。
11月のボーンマス戦では1G4Aを記録するなど順調な滑り出しをしたかに見えたが、決して高いとはいえないフィニッシュ精度や途中出場で自分がボールロストしたにも関わらず、プレスバックしない様子はスターリング味も感じさせた。またアンフィールドのリバプール戦では最後のプレーで頭上に上がったボールをクリアをしようと足を上げたらマクアリスターと接触。ドクはボールしか見ておらず、フォローが難しいくらいファールに見えたがペップ×クロップのラストマッチに華を添えたいレフェリーによって命拾いした。
守備に関してはペップにお灸を据えられたのか、その後はプレスバックの意識も高くなっており、着実にシティの選手としての成長曲線を辿っている。
シーズン後半戦は途中出場からチームに勢いをもたらした。特に延期分のアウェイでのスパーズ戦ではカウンターから持ち前のドリブルでPKとシティズンの心をゲット。そのPKをハーランドが沈めてPL4連覇へ最大の山を越えたのだった。
B・シウバとグリーリッシュの両WGでCLを取ったペップシティにおいてドクのようなタイプの選手がどこまでシティを高い次元に押し上げられるか注目である。

#16 🇪🇸 ロドリ グラシアス・ロドリ


シティに来て4年チーム状況と本人の実力もあってほとんど休みなしを強いられてきた男。
そんな男の4年をザッと振り返ってみよう。

19/20 CBに怪我人が続出し、アンカーのフェルナンジーニョをCBに回したことで加入1年目のロドリもハイペースで稼働。

20/21 レギュラーとして出場するもシーズン後半に調子を落とし、CL準決勝2ndleg、決勝ではスタメン落ち。

21/22 アンカーの地位を確固たるものにして最終戦で同点ゴール。

22/23 フィリップス加入で出場時間をコントロールできるかと思いきや、フィリップスの体重超過やパフォーマンスの悪さもあり、ほぼ休みなし。

そんなこんなで過酷労働を強いられてきた4年間だったわけだが、遂に休みを取る方法を思いついたのか9月のフォレスト戦で後半開始早々に相手の選手の首を掴んでしまい退場。合法的に休みを得ることに成功した。ただ、アンカーのポジションを4年間ほぼ1人で担っていたロドリの存在はあまりにも大きく、ロドリ不在の間チームはしっかり3連敗。
それもそのはずで、ビルドアップ時の上手さと機転の利き方、押し込んだ状況での大外を駆け上がる選手へのミドルパスと即時奪回、ビッグマッチでのクラッチ能力など彼の凄さを挙げたらキリがない。
ロドリの代えが存在しないことはペップもチームメイトもわかっているはずなのでロドリがまた暴れ出しそうになったら近くにいる選手はすぐに「利き手はやめろブルガリア、ブルガリア!」と叫んでほしい。

#17 🇧🇪 K・デ・ブライネ 神に残された時間


22/23シーズンはハーランドが加入したことでデブハラのホットライン開通しつつも勝負所では自分も点を取るという正に神に相応しい活躍だった。CL決勝での怪我の影響で日本ツアーでも出番はなかったが、サポーターのユニホーム率や歓声を顧みても流石の人気だった。
バーンリーとのPL開幕戦には間に合ったものの、再びハムストリングを痛めてしまい、そのまま前半戦は全休。
1月のFAカップ・ハダースフィルード戦で実戦復帰。直後のPL・ニューカッスル戦では1点ビハインドの状況で途中投入され、1G1A。この逆転勝ちがチームに勢いをもたらしたのは間違いないだろう。
復帰後のデ・ブライネはいつもと違い、ミスをした味方にキレたり、レフェリーにイライラしてる様子も少なく、ピッチを離れたことが良い意味で栄養になったのかもしれない。それでもマドリーにCLで敗れた後のFAカップ・チェルシー戦では久々に闘志剥き出しでプレーしており、CL敗戦のショックを自らのプレーでかき消そうとしているように感じた。
終わってみれば後半戦だけの出場で4G10Aと驚異的な数字だが、ビッグマッチでの神通力や運動量の低下は否めない。
EUROもあるので来シーズンも休ませながらの起用になるであろう。シティズンがまだ見てない夢があるとすれば、それはデブ神がCLのファイナルでデブ神であることを証明することだろう。

#18 🇩🇪 S・オルテガ Substitution Hero


ハーランドやアカンジと同じ年にドイツからやってきた逞しきGK。昨シーズンは主にFAカップでゴールマウスを守り、決勝のPKによる1点以外は無失点に抑えるなどチームの3冠に貢献。
当然他のチームからも触手はあったが、無事に残留を果たした今シーズンはエデルソンの怪我などもありリーグ戦でも途中出場を含めて9試合に出場した。途中出場4試合の内訳は、ニューカッスル、リバプール、フォレスト、スパーズと難敵揃いで、しかも全てアウェイという状況ながら何度も救われたのはシティズンなら誰もが知るところだろう。
アンフィールドでのリバプール戦では62分にこの日キレキレだったルイス・ディアスのシュートを体を大きく見せて枠内に飛ばさせず。結果的にチームは1-1の引き分けで勝ち点1を持って帰った。
更に極め付けは、延期分のアウェイ・スパーズ戦で70分にクルゼフスキのシュートをブロック。85分にはロドリからのパスが浮き球で処理が難しかったことと近くのルベンの方もソン・フンミンが狙っていたこともあり、右足で処理しようとしたアカンジがB・ジョンソンに寄せる時間を作ってしまいボールロスト。その後ソンと1vs1になり、万事休すかと思われたが、オルテガが前に出てシュートコースを防ぎ、最後は股を閉じてチームを救った。
試合後にペップも「あのセーブが無ければアーセナルが優勝していただろう」と語る程のビックセーブだった。その言葉に偽りはなく、もしあそこで決められていたらシティズン全員、ソンアレルギーになっていたことだろう。

#19 🇦🇷 J・アルバレス 更なる高みへ


欧州初挑戦となった22/23シーズンは、CFにハーランドがいるため途中から出場が多かったが普通にリーグ戦9G。サッカー選手なら誰もが夢見るW杯制覇とCL優勝をたった1年で叶えた。
移籍2年目となった今シーズンは、デ・ブライネの長期離脱でポジションが1つ空いたこともあり、序盤はハーランドと共存させる形でスタメン起用された。11月にハーランドが怪我で離脱するとアルバレスのプレータイムもかなり伸びた。シーズン決めた11ゴール中、8ゴールが1月までに決めており、デブハラ不在をしっかり埋めたといっていいだろう。
2人の復帰後は、控えに回ることも増えたからか本来得意であるはずのシュートを外す場面もあったが、終わってみれば11G9Aと充実した2年目を送ったと言えるだろう。補強次第ではあるが、守備時中盤、攻撃時セカンドストライカーの役割に本格的にチャレンジしてもらえるとチームとしての幅も広がる。
また2025年の1月から古巣のリーベルからエチェベリが加入することも決まっており、アルゼンチンの先輩としてピッチ内外で良き手本になってもらいたい。

#20 🇵🇹 B・シウバ 小さな体に大きなハート


シティズンも大好き、チームメイトも大好き、ペップも大好き。みんなに愛される小さな巨人。
22/23シーズンは中盤でロドリの横を務めたり、カンセロ退団後はLSBもやったりしたものの、最終的にはRWGに落ち着いた。バイエルンやマドリーとの試合でもゴールを決めて世界一のポリバレント職人であることを証明した。
ベルナルドが凄すぎるのか、そのポジションに絶対的な選手がいない故なのか今シーズンも複数のポジションで起用された。有給が欲しくて相手の選手の首を掴んでレッドカードを受けたロドリが出場できなかったエミレーツでのアーセナル戦ではアンカーも務め、これで公式戦でやったことないポジションはCBとGKだけになった。
CL準々決勝のマドリーとの2ndlegでは120分走り回ったがその後のPK戦で痛恨の失敗。肩を落としながらピッチを後にし、その日はほとんど眠れなかったそう。それでも彼の心は折れておらず、中2日で臨んだFAカップ準決勝、チェルシー戦では85分に両チーム唯一の得点を決めた。ゴールセレブレーションではガッツポーズを見せ、チームメイトとの輪がほどけた後にシティのエンブレムに何度も手を当てたところは今シーズンのベストシーンの1つだろう。
毎年、移籍の噂が出るので、いっそのことマンチェスターのベルナルドの家の周りをちょっとだけリスボンに寄せた感じにしちゃえばいいんじゃないかな?

#21 🇪🇸 S・ゴメス リスペクト・ゴメス


22/23シーズン開幕前、ジンチェンコを放出しククレジャを狙っていたもののチェルシーに横取りされ獲得ならず。そこで白羽の矢が立ったのがアンデルレヒトでコンパニ監督の下でプレーしていたゴメスだった。
SBとしては対人守備の弱さを露呈したためか、昨季は点差のついた展開で中盤やWGとして使われた。今シーズンも少ない出場機会ながら9月のフラム戦ではハーランドの3得点目をアシストし、2シーズン連続での怪物へのアシストを記録した。
出番はかなり限定されたものだが、それでも腐らずにチームに徹する姿は賞賛に値する。バレンシアから来て21番を付けておきながら「シティに移籍したのは踏み台だった」とか平気で言っちゃう人もいるからね。

#24 🇭🇷 J・グヴァルディオル Return on investment


昨夏の移籍市場序盤でギュンドアンと入れ替わるようにコバチッチが入団。シティズンの次なる楽しみは鎌田がパラシュートで国立のピッチに降り立つこととグヴァルディオルの獲得だった。獲得に費やした移籍金はあのマグワイアさんに次ぐDF史上2番目の額らしい。若手ナンバーワンの左利きCBとルベンのコンビはプレミア屈指のコンビになるかと思いきや、デビュー戦はLSB。しかも大外のレーンで幅を取らせるタスクを与えられた。その後もスタメン起用はされるものの、LSBで攻撃時は大外を取る、純正SBの役割を与えられた。
確かに上手いんだけど見たいのはこれじゃない感が強く、まるでA5ランクの肉をコースの前菜で使っているような感じだった。
年明け後に負傷離脱が1度あったが、復帰後のアーセナル戦やアストン・ヴィラ戦では相手のWGに対して優位にたった。特にアストン・ヴィラ戦ではビルドアップ時に後方に残って3枚を作る役割を与えられチームも快勝。
「ほらな、やっぱりグヴァはCBやらせた方がいいだろ」って思ってたらベルナベウのマドリー戦では右足でゴラッソ。その後のルートン戦でも右足でゴラッソ。初ゴールから後半戦だけで5ゴールの荒稼ぎだった。来シーズンはCBをやるのか、或いは純正SBと偽SBの兼用をするのか楽しみは尽きない。
加入時のインタビューを見るとあまり饒舌なタイプには見えないが、ルベンと共にDFラインのリーダーとして長くシティを支えてほしいところである。

#25 🇨🇭M・アカンジ Utility stag beetle  


ハーランドやオルテガと同じ年にドイツからやってきたスイス人CB。クワガタみたいな髪型と対人守備が強いのが特徴で更にDFラインならどこでもプレー可能なユーティリティ性も兼ね備える。今シーズン序盤は、ビルドアップ時に偽CBで1列上がるタスクも与えられた。だが偽CBといってもストーンズのそれがポジショニングやプレス耐性の高さを活かすものである一方でアカンジのは即時奪回により重心を置いたものに見えた。
スピード面ではウォーカーと同じくらい信頼ができるものの、裏ケアを怠る場面が多く、失点シーンの原因になっていることもしばしば。
しかしながらこのレベルでほとんど怪我しないのが本当に有難い。シティのバックスだとウォーカー、アカンジ、ルベン、グヴァの4人が28〜30試合のスタメン出場で2500〜2700分のプレーをしている。ストーンズが怪我がちなことを考えてもアカンジが元気だからこそルベンや新加入のグヴァの負担を減らせた面はあるだろう。
というわけでアカンジ君、来シーズンは裏ケアをしっかりしような。

#27 🇵🇹 M・ヌネス 膨らむ期待


デ・ブライネの長期離脱が決まっていた昨夏、シティはウェストハムのパケタを狙っていた。本人も移籍に前向きのようだったが、賭博疑惑が浮上したために撤退。そして代わりに名前があがったのが当時ウルブズ に所属していたヌネスだった。プレシーズンをシティで過ごしていないこともあって優先的に出番が与えられたわけではなかった。9月のフォレスト戦でスタメン出場すると右サイドを駆け上がってハーランドのゴールをアシストするなど上々のスタートをきった。
負けられない試合が続くシーズン終盤になると中々スタメンでの出場はなかったが、スパーズ戦で交代を余儀なくされたエデルソンに寄り添ったり、優勝直後にはエデルソンと一緒にワインを嗜んでいた。
うちのサイコパス・エディと気が合うのは貴重な存在であり、来シーズンはエデルソンの友達とギュンドアンロール、2つの役割をこなしてもらいたい。

#31 🇧🇷 エデルソン 君と一緒に


シティズン界隈で有名なボーリー男子の牽牛星さんが"エデルソンLSB"を推すならば、こちらは"エデルソン、マイルいっぱい貯まる説"を提唱したい。
プレシーズンで日本と韓国に行き、クラブW杯でサウジアラビアに行き、代表ウィークでは南米まで行ってるはずなのでシティの選手の中でも1番マイル貯まっていることだろう。
そんなエデルソンの今シーズンだが、相手との接触などもなりリーグ戦で3回の途中交代を余儀なくされた。特に延期分のアウェイ・スパーズ戦ではクロスボールをキャッチした後にロメロの足が顔面に入り、チームメイトも只事じゃない様子で心配していた。本人はプレー続行に意欲を示したがメディカルの判断を優先して交代、ベンチに下がった際には珍しく悔しさを露わにしていた。
ハーランド加入前は、チームのPK成功率の低さからエデルソンが蹴るべきではないかとの声も挙がっていたが、CLのマドリーとのPK戦で遂にPKキッカーデビューを果たした。
しかも先攻の5人目、1本負けている状況だったため外せばマドリーの5本目を待たずして敗戦が決まる状況だったが、長めの助走からコースにきっちり決めた。エデルソンが決めたのかベンチが決めたか非常に気になるのでそういう点でも勝ちたかった試合である。
オルテガの印象的なセーブが多いので何かと批判されがちなエデルソンだが蹴れるボールの種類と飛距離はオルテガにはないものがある。
ペップシティに必要な要素だからこそ、もう少しだけエティハドのゴールマウスを守ってほしい。

#33 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 S・カーソン 人生の先輩


シティ加入5年目を迎えた第3GK兼ムードメーカー。シティのドキュメンタリーでは疲れた様子を見せるギュンドアンに声を掛け、練習前にプロレスをしていた。またブリストル・シティとの対戦で遠征した際にはボヴリルという牛肉飲料にグリーリッシュやフォーデンが夢中になる中、「あきれた奴らだ」と食の方でも圧倒的な経験値を見せつけていた。
チキやペップからの信頼も厚く、先日2025年夏までの契約延長を発表した。

#47 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 F・フォーデン Stockportから世界へ


今から5年前の18/19シーズン、チームはCLを含めた全てのタイトルを狙い、シーズン終盤の戦いに挑んでいた。CL準々決勝の相手は同国のスパーズ。できるだけリスクを犯さず、試合をクローズさせることを目指した1stlegは、アグエロがPKを外したこともあり、1-0で敗戦。得点が欲しい2ndlegでは打ち合いとなり、4-3(トータルスコア4-4)のまま試合終盤へと差し掛かった。その後、シティが合計スコアで前に出るゴールを決めたかに思われたが、VARによってオフサイドで取り消し。今はなき、アウェイゴールに泣き、シティはここで姿を消すこととなったのだった。
そんな悲劇的な敗戦から2日後には、今度はリーグ戦でスパーズとの試合が待っていた。その試合にスタメンで起用されたのが当時18歳だったフォーデンである。フォーデンを抜擢した理由についてペップは「CLの敗戦でチームがショックを受ける中、翌朝のトレーニングで彼はハツラツとしたプレーをしていた」と語った。
たった18歳の青年が、まだ何も成し遂げていない若武者が、チームを救った瞬間でもあった。
それから4年の時が経った今シーズンは、序盤からスタメンで起用されてはいたものの、もう一皮剥けて欲しいというのが本音だった。
チーム状態も上がらず、勝ちきれないことが続いた11月〜12月。その悪い流れに呑まれるようにパレス戦ではATに判断ミスからPKを献上してしまった。当時、「もうワンランク上のプレイヤーになってほしい。自分がキャプテンくらいのつもりでプレーしてほしいし、ましてやATに判断ミスからPK献上なんて有り得ない」と厳しめのツイートをしたのを覚えているが、やはり彼ははここで終わる選手ではなかった。
ハーランドやデ・ブライネ不在の中で臨んだクラブW杯では決勝でゴールを決め、また1つクラブに新しいタイトルをもたらした。
大黒柱不在の中、タイトルを獲得したことが自信となったのか、イングランド帰国後のアウェイ・エバートン戦では反撃の狼煙となるミドルシュートを決めた。
2月のアウェイ・ブレントフォード戦ではハットトリック、3月のダービーでは中々点が取れない状況の中、左足を振り抜き同点弾。更にポジションを左に移した直後に逆転ゴールを決め、シーズンダブルに大きく貢献した。ベルナベウのマドリー戦でも左足ミドルシュートを決めたり、ホームのヴィラ戦では再びハットトリックを達成するなどクラブW杯後のフォーデンは水を得たフィッシュのようだった。
最終節のホーム・ウェストハム戦でも開始2分に得意の左足ミドルシュート、18分にはワンタッチでゴールを決め、年間MVPに相応しい活躍でリーグ戦を締め括った。
今シーズンは、ギュンドアン退団が響き、例年のように最適解を決めきれなかったシーズンだと言える。それでもチームが史上初のPL4連覇を達成できたのはフォーデンの覚醒があったからこそ。
5年前のあの時と同じようにフォーデンはチームを救ったのである。今度はワールドクラスのプレイヤーとしてね。

#57 🇳🇴 O・ボブ ボブはできる子


リコ・ルイスと共にシティ1軍本隊への帯同を許可されたノルウェー・オスロ出身のWG。
どうやらシーズン前にチキ・ベギリスタンから「U-23ではボブが最高の選手だ」と言われたことで日本ツアーの帯同が決まったようである。
フラム戦でトップチームデビューを果たすと、クラブW杯でも2試合途中出場し、着実に経験を積んだ。
1月のニューカッスル戦では同点の状況で途中出場し、91分に背後へのランニングでデ・ブライネからのパスを引き出し、冷静なダブルタッチからネットを揺らした。左がメインポジションになるだろうが、右やトップ下でもプレーできそうなこと、そして何よりシティで生き残りたいというメンタリティが彼をより成長させてくれるはずである。「ボブはできる子だよ」って声を大にして言いたい。

#82 🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿 R・ルイス 小さな起爆剤


22/23シーズンにトップチームデビューを果たすと偽SBとして上手さを見せ、小さなフィリップ・ラームの名を受けた。まだ20歳にもなっていない若者が屈強な相手選手に挑み、倒れても立ち上がる姿は、ペップからも絶賛され、ロッカールームで「彼を見習え」と言われているシーンがNetflixのドキュメンタリー内で挙がっていた。
4月に入るとウォーカーやアケが怪我で離脱したこともあり、スタメン起用も増え最終的にはスタメン8試合、途中出場8試合と着実に経験を積んだ。内側に入ってプレーできる強みを活かし、パレス戦ではホームでもアウェイでもゴールを決めてみせた。
来シーズンからはCLの試合数も増えるので、SBと中盤とマルチな活躍を期待したい。

シーズン振り返り


取り逃した魚の大きさ


昨夏、コバチッチの獲得が噂された際に出てきた情報としてこんなものがあった。「コバチッチの獲得はギュンドアンの去就とは関係ない」
結局ギュンドアンはバルセロナへ移籍し、ギュンドアンの退団発表と入れ替わる様にコバチッチの獲得が発表されたわけだが、もし上記の情報が事実だとすればシティフロントはギュンドアンの代わりとしてもう一人狙っていたはずである。そしてそれはほぼ100%ベリンガムであろう。つまりシティフロントはグヴァルディオル+コバチッチ+ギュンドアンの残留orベリンガムの獲得を狙っていたと思われる。
だが、グヴァにお金を使いすぎたからか、ギュンドアンの去就が中々決まらなかったからか、或いはベリンガムのマドリーへの憧れが強かったからか、そのプランは叶わず。
なんなら鎌田のパラシュートで国立上陸も叶わなかった夏だった。
シーズン開幕戦でデ・ブライネが負傷し、前半戦の全休が確定。そのリプレイスとして期待されたパケタも賭博疑惑が浮上して獲得ならず。
ペップはシーズン序盤から昨シーズン鉄板だった中盤3枚の内の2枚の後釜探しを余儀なくされたのだった。
そこで起用を増やしたのがアルバレスやフォーデン。2人ともキックの質が高いのでデ・ブライネ側の役割はできる。しかもアルバレスはギュンドアンのようにセカンドストライカーとしてハーランドの空けたスペースにも入っていける。しかしながら2人とも撤退時に4-4-2の中央を守らせるには心許ない。そこで白羽の矢が立ったのがコバチッチだったが、逆にコバチッチはギュンドアンのように高い位置で得点に絡むようなプレーを得意とする選手ではない。コバチッチが高い位置に上がらない分のマイナス1を補うようにグヴァがLSBから押し込んだらWG化する起用が続いたシーズン前半だった。

完成しない絵とフォーデンの覚醒


シティが優勝したシーズンを振り返ってみると1月頃から最適解を見つけ、それをベースに多少メンバーをいじりながら連勝街道突き進んでいくことが多い。しかしながら今シーズンは年を明けても中々メンバーが定まらなかった。ストーンズやグリーリッシュといった昨シーズンレギュラーだった選手のコンディションが安定しなかったことやデ・ブライネが怪我明けだったことも影響しただろう。絶対的な選手以外は、相手のシステムに合わせて好調な選手を使う度合いが例年より強いように感じた。
そんなシーズン後半戦、ハーランドが作ったライン間で呼吸をしたのは皆が期待するフォーデンだった。得意の左足で劣勢のスコアを振り出しに戻し、何度もチームに勢いをもたらした。更にはボックス内でハーランドが空けたスペースに侵入してゴールを決めることさえあり、得点パターンも増えた。シーズン終盤に強いシティを今季も実現できたのは間違いなく、彼の活躍あってこそだろう。
トップチームでも活躍し始めた頃、フォーデンが最初に掴んだポジションはシティやイングランド代表でも中心だったスターリングのLWGだった。来季、フォーデンがデ・ブライネのポジションを地位を奪うことがあれば複雑だが、それはそれで来るべきときが来たのかもしれない。
以前ペップはこんなことを言っていた。
「言っておこう。絶対に放出があり得ない選手は彼だけだ。彼だけはどんなことがあっても手放さなさない。移籍金5億ポンドでも有り得ない。フィルは誰にも渡さない。フィルこそ、シティだ」
"フィルこそ、シティ"そのフレーズを今シーズン何度口にしただろうか。
末っ子の立ち位置をリコやボブに譲ったとて、ロニー君がシャンパンを開けようとて、フィルこそシティであり続けるだろう。

最終年へ


4連覇達成後のペップは2025年6月で切れる自身の去就についてThe reality is I’m closer to leaving than stayingとコメントしていた。シティにとっては初の、ペップにとってもメッシ無きチームで初のCLを昨シーズン獲得し、今シーズンは史上初のPL4連覇も達成した。ドイツ時代からのライバルであるクロップも退任した。おそらくペップも1年後には居ないだろう。
ペップがシティの監督就任時、中心だったコンパニはルベンに、フェルナンジーニョはロドリに、D・シルバはB・シウバに、アグエロはハーランドになった。そしてデ・ブライネからフォーデンへの戴冠式の日もそう遠くはないだろう。
さあペップシティの最終年へ、どんな夢を見るか。そしてその前にどんな夏を過ごすのか。オフシーズンもじっくり楽しませてもらいたい。

Congratulations 4-IN-A-ROW

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