養分脱却日記 #4
よう、おまえ(私のこと)。
養分として生き続けてて、大丈夫か?お腹毎日下してないか?
もうそこまで養分として生きていくつもりなら、俺もそこまで言わないことにした。
というか、俺の忠告がもはや【ガソリン】になっている気がしてきたんだよ。
おまえは俺の言う事で、燃えたぎってそうだから今回はやめとく。
それより今回は、俺のフォロワーであるピロさんの話をしたい。
先日のエリザベス女王杯で、どうやら的中したんだってよ。
え?そうだよ、【あのピロさん】が、だよ。
射幸心の最高峰、3連単を当てたんだよ。しかも同着だったから2通りの3連単両方当てちゃってんだよ。総額49万。
くりびつを通り越してぴえん、だよな。
だってさ、先週のアルゼンチン共和国杯の件、おまえよく覚えてるよな。
馬券購入に間に合わないからって、仕事の書類に買い目をなぐり書きしてメモしてだよ、発走時刻を間違えて買えなかったピロさん。
もちろん俺の予想は当たってて、ピロさんが買えなかった当たり馬券は14万円になってたそうだ。
そんでもってエリザベスの前日、商材屋の予想を買って携帯をホジホジしてた矢先に締め切られて、その予想が当たっててそれが30万円のピロさん。
と、まあ散々なピロさんなわけだ。
もはや、運命のイタズラと言うしか無い不運が彼に襲って、だよ?
なんでこんな馬券が買えるんだってこと。
まずはレースから振り返りたい。
俺の本命はウィンマイティー。ちょっと終盤きな臭かったんだよな。どの予想家もこの馬を推していた。だいたい予想家が集まる馬は凡走する。このロジックがなんなのかはわかんなかったが、俺が押したのは消去データに全く引っかからなかったこと。それと人気していたスタニングローズやナミュール、デアリングタクトはかなり危険な人気馬だったこと。割れてるオッズなら面白いと思って本命。
で、結果。
1着はジェラルディーナ。この馬だけ、分からなかった。
強調するマイナス材料もプラス材料も無かった。無味無臭というべき馬だった。それがきちゃうんだからやっぱ馬場って大事だってことなんだよな。
2着(どうみても)はウィンマリリン。こいつは関東馬で過去5年の関東馬の成績が異常に悪かったんだよ。確か(0-1-0-30)とか。だから即消しだったんだよな。ライラックもそう。関東馬は基本的に俺の予想じゃ買えなかった。
3着ライラック。こいつは戦績からみても全く走りそうにない。秋華賞もボロ負けだったこいつにOP馬の資格があるのか?フェアリーSはフロック?なんていう見方をどうしてもしてしまう。それくらい凡走が続いていた。
そんなこんなでこんな3連単はどうやっても取れなかった。もちろん3連複もな。
というわけで俺も聞いたんだよピロさんに。
「なんでこんな馬券を買えたの?勉強するから教えてよ」って。
それで帰ってきた答えが、「タコルとオジュウの予想を多重に仕込んだ」
で「後は、自力で買い目を組んだ」そうだ。
なんつうかさ、凄いよね。さっきも書いたけど買えずに当たった高配当馬券、間に合わなかったという経験でピロさんに色んなチカラが備わった証拠だよな。あっぱれなんだよ。
まああれだ。【徳積み】ってやつあるだろ?
実は、さっき書いたエリザベスの前日の土曜にエピソードがあって。
その日、ピロさんと俺は息巻いて場外馬券売り場で朝イチから熱戦を演じてたんだけど、その日の中盤で俺がポケットに入れたはずの金が突如消えたんだよ。
で、慌てた俺はパニック。そこでピロさんが誘導してくれて係員とかに色々と掛け合ってくれた。結局俺の勘違いで金は紛失してなかったんだけど。ピロさんの熱い対応は徳積みに値すると思った。優しいねピロさん。
ただ俺が怒涛のマイナスに凸していた頃、適度に的中を重ねて余裕の表情だったピロさんだけど、昼飯は普通に割り勘だった。これで得積みはチャラ。
それで最終レース、締切に間に合わず30万を取り逃したんだ。
土曜はそんな一日だった。
それがまさかの大逆転が翌日に待ってたなんてな。
てなわけで高額配当を見事に受けとめたフォロワーのピロさん。
…。
…。
カンパネルラの最果て、ガイコツ島の山奥に辿り着いたピロさんは金色の光の方向に導かれていった。僕はその光景を見て、こう思ったんだ。
「これがチャイカの渡り舟なんだ…」そう頭の中で思い浮かんだ直後、空高く浮かんでいくピロさんが凄く近く、それでいて凄く遠くに感じたんだ。
僕は胸が熱くなって途端に涙がこぼれ始めたのを覚えているよ。
アディオス、ピロさん。
気がつくと俺は、眠っていたようだ。
果てしなく続くこの養分ロードを駆け抜け、そしてその養分から脱却したピロさんに祝福のエールを送りたい。
おまえ(私のこと)はシカバネなんだよ。
その上を悠々と歩いて行くピロさんには何も言えねえだろ?
奇しくも、この日俺は42歳を迎えた。
こんな誕プレもあるもんなんだ。
俺への祝福なんて誰も喜びやしねえ。
勝つか負けるか、俺はもう少し藻掻いてみるよ。
それと、ピロさんに告ぐ。
税金払えよ。
じゃあな。