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クラゲの基本的な分類と生活環について

アドベントカレンダー9日目の記事です。はい……。

本当はクラゲの論文紹介をしたかったのですが、まったくもって論文を読み終わっておらず紹介できないというのが現状です。しかし今後間違いなく紹介するので、その前段階としてクラゲについて知ってもらう記事を書きます。

クリスマスが近づくと、水族館に行ってクラゲを見ながら優雅な時間を過ごす人が増えると思いますので、そんな素敵な時間によりクラゲと向き合ってもらえると幸いです。そういうのはいいからのんびりクラゲを見たいという方は、全文読んだ後にすべて忘れてください。

※用語解説はページの一番下にあります。


クラゲの定義

クラゲの定義は実は曖昧です。
狭義では「刺胞動物門(1)に属するゼラチン状のプランクトン(2)」とされていますが、最も広い意味では「ゼラチン状のプランクトン」すべてを指します。
つまり、クラゲとは系統的に分類された生物の集まりではなく、形態的な特徴(見た目や構造)をもとに分類されたグループなのです。

Wikipediaでは以下のように説明されています。

クラゲ(水母、海月、水月、蚱)は、刺胞動物門に属する動物のうち、淡水または海水中に生息し浮遊生活をする種の総称。体がゼラチン質で、普通は触手を持って捕食生活をしている。また、それに似たものもそう呼ぶこともある。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B2

こちらは海遊館の展示です。クリオネまでクラゲと分類するのはなかなかアグレッシブですね。

fig.1 海遊館での展示@海月銀河 「クラゲって?」

クラゲの系統分類

クラゲの分類についてもう少し詳しく解説します。
一般的にクラゲと呼ばれるのは刺胞動物門と有櫛動物門に属するゼラチン状のプランクトンです(fig.2)。

刺胞動物のクラゲは触手のある、いわゆる皆さんの想像するクラゲです。
一方、有櫛動物のクラゲは「光る」クラゲです。光るクラゲと言っても、発光しているわけではなく反射してキラキラ見えているだけですので、GFP(緑色蛍光タンパク質)で有名なオワンクラゲとは違います。

fig.2 刺胞動物と有櫛動物
左:刺胞動物(ミズクラゲ、サムクラゲ)、右:有櫛動物(どちらもカブトクラゲ)

刺胞動物門のクラゲ

刺胞動物門の中でもより細かく分けると、鉢虫綱、箱虫綱、ヒドロ虫綱が属しています(fig.3)。

鉢虫綱のクラゲは肉厚で大きく、一般的によく知られるクラゲの多くは旗口クラゲ目、根口クラゲ目に属しています。
一方、箱虫クラゲ綱立方クラゲ目は、その名のとおりはこのような形をした傘を持つクラゲです。強い毒を持つアンドンクラゲをはじめとするクラゲが属しています。
ヒドロ虫綱に属するクラゲは、傘が透明で宝石のような美しさを持っていますが、非常に小さく観察が困難です。

fig.3 刺胞動物門に属するクラゲの分類
上:タコクラゲ(根口クラゲ目)、下:ハナガサクラゲ(淡水クラゲ目)

少し詳しく紹介しましたが、クラゲ博士になるつもりでもなければこれらを覚える必要はありません。ただ、次にクラゲを見る際には、自分なりの基準でいいのでぜひグループ分けをしてみてください。グループ分けすることで、今まで見えていなかった側面に焦点を当てられるかもしれません。

ミズクラゲの生活環

ミズクラゲについて

さて、ここからはミズクラゲにフォーカスして話を進めます。ミズクラゲは、傘にある四つのわっかが特徴的なクラゲです(fig.4)。おそらく最も知名度の高いクラゲでしょう。
このわっかは胃にあたります。そのため、赤いプランクトンを食べた後は、わっかがオレンジ色に染まります。また、わっかは基本4つですが、よく観察すると数の異なる変異体がたくさんいます(fig.5)。僕は最高で7つのわっかを持つ個体を見つけています。もし8つ以上の個体が居ましたら写真を撮ってお知らせください!!

※このわっかには生殖腺も位置していると聞くのですが、僕自身詳しいところを理解できていません。もしミズクラゲに詳しい方が居ましたら、どのように胃と生殖腺が配置しているか教えてください!

fig.4 ミズクラゲ@四国水族館
食後のため、わっかがオレンジ色に染まっている。
fig.5 5つの輪を持つ個体

生活環

クラゲは面白い生活環(3)をたどります。クラゲの一般的な生活環は以下の3つの時期に分けられます。そして、ミズクラゲの生活環はfig.6のようになっています。

  1. プラヌラ幼生:繊毛(たくさんの細かい毛)を持った受精後すぐの姿

  2. ポリプ:イソギンチャクのような姿

  3. 成体:水族館で見かけるような、傘を持った姿

fig.6 クラゲの生活環
以前作成したクラゲのペーパー

京都水族館ではこの生活環ごとに分けられた水槽の展示があります。

ここでは写真がないのでイラストで紹介しましたが、ぜひ画像検索してください。皆さんがクラゲとして認識している姿は、クラゲのライフサイクルの中ではほんの一部でしかないのです。実際の写真を見ることで、クラゲの「クラゲらしからぬ姿」にも興味を持ってもらえると思います。

おわりに

今回の記事はここまでです。最後まで読んでいただきありがとうございました。

今度紹介しようと思っている論文が鉢虫綱の発生と系統に関するものなので、それに必要な知識をまとめるつもりで記事を書きました。
ちなみに、ここまで知っているとかなりクラゲに詳しい人として見られるので、クラゲコーナーでかっこつけたい!という人はぜひこの記事の内容を披露してください。
受けたら記事の紹介もしてください。引かれたらしないでください……。

用語解説

(1) 刺胞動物門

生物はその特徴と系統を利用してグループ分けされています。グループは大きい方から順に「(ドメイン >)界 > 門 > 綱 > 目 > 科 > 属 > 種」となります。
例えばヒトは以下のようになります。
真核生物ドメイン 動物界 脊椎動物門 哺乳綱 霊長目 ヒト科 ヒト属 ヒト

刺胞動物門は動物界の下位分類で、刺胞という毒針を持った動物がまとめられているグループです。ミズクラゲの分類は以下の通りです。
真核生物ドメイン 動物界 刺胞動物門 鉢虫綱 旗口クラゲ目 ミズクラゲ科 ミズクラゲ属 ミズクラゲ

(2) プランクトン

プランクトンは小さな生き物ではなく、「水中を漂うものという意味で,遊泳能力が比較的弱く,水中 に浮かんでいる生物のこと」(プランクトンの世界, 国立科学博物館)を指します。つまり、自力で泳げない(水流に逆らえない)生物のことを指します。

(3) 生活環

生物は生まれた状態から、子孫を残す状態を経て、また新たな個体を生み出します。このような、生まれた個体が次の世代を生み出すまでの1サイクルを生活環と言います。

参考文献

「クラゲ」, Wikipedia, アクセス:2023/12/23, URL: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B2

「クラゲガイドブック」, 並河洋ら, 2010, 阪急コミュニケーションズ

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