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不帰(かえらず)の魔力。

2000文字/5分。
イラスト:花笠ペノコ。
語り師:ハナガサペノコ©️note.





噺家。

別名:落語家。相手を15分ほど別世界に引き込み、脳内に映像を点ける仕事。





現代人風に言えば「人間映画館YouTube


卓越した凄まじい話力と技法で老若男女、観客席全員に、一瞬で。
脳裏の情景として形態模写し、時には笑い、時には涙を誘う会場の主役。




あれは常人には真似できない特殊技術者。長い試行錯誤の上辿り着く無我の境地。それが「噺家」





今日は噺家、「立川志の輔」師匠に纏わるワタシ目線の小話の前に。


情報を少しだけ、



すでに寄席よせにて高座を体験して、ご存知の方も多いと思います。
中央に笑いながら腰掛け、身振り手振りで話す落語一門のおひとりです。

え。知らない?

知らない方は国営TV「試してガッテン」&「龍角的のど飴」などでCM出演しているゴホンといえばのあの方です。





出来れば3分で終わるお読みモノですか、出来るだけ緩急をつけ、「ゆっくり読み進め」て頂き、

「音楽はお控えされる」と依り、当時風景や情感、感情が伝われば嬉しいです。






では、いつも通り。




「短く刻み」ます。








...と言っても直接戸を叩き入門した訳ではありません。


沖縄の一角にあった、
芸能文化の坩堝ごった煮「寄せ屋」


劇場の楽屋裏、
...を職種に選んだ新人時代。

.....の毎度、馬鹿馬鹿しい話をひとつ。

電気代をご消費の上、お付き合い頂きありがとうございます。







舞台、約100人を収容する「寄せ席」


みなさま「観客席」と「出演者」の間、約三歩ほどで舞台に上がれる「ミニミニ小劇場」で管理のお仕事をしていたひよっこ時代のボク。




芸能関係者なら
誰でも知っている右左上手・下手



観客席から見て、



右手が「上手《かみて》」
左手が「下手《しもて》」




はい!たまに皆さんが会話の際に使う
「上手!ヘタ!」の語源です。





....の裏には、ご存知の通り「舞台裏」



さらに奥に進むと「楽屋がくや」....と呼ばれる出演者が出番を待つ場所がありました。




とても小さな小劇場でしたので、大きなテレビ施設などとは違った空間でした。


たまに映像などで目にする「メイク室・出番待ち控え室」とほぼ同じ意味ですね。



その雰囲気を一変させる雰囲気。



はい。冒頭でお話しした
「優しい噺家」立川志の輔、師匠。




にこやかに入室して来て、ボクらと軽い雑談をしたり沖縄の飲み物が側にゆったりとした雰囲気が流れていました。


高座、1時間前までは。


ボクが現在でもココロに秘めている「対人行動示範」は間違いなく立川志の輔師匠のお陰です。



「集中に時間が掛かる為、
楽屋裏に他人を入れないように」

「当然、キミも入らないように」



ひよっこのボクに諭してくれたのは藤木勇人さん、後の「立川志ぃさー」大親分。お元気かなぁ?




当時は理解できないひよっこ時代のボクに「わかる様に」教示頂き、本当にありがとうございました。



今ならすこしだけ分かります。




噺家の凄まじさを。
今後語る、人生の凄まじさを。





並の決意ではありません、




全ての人生、全ての時間。
全ての空間を消し、自分も消す技術。





失敗したら2度と高座に登れない。

「帰らずの覚悟」






常人では上手《かみて》にも上がれない特殊技術職。




それが、噺家。

簡単にボタンを押して見れるスマホ動画とは比較にならない集中力。




細やかなキッカケで観客の紐が解け、一瞬で現実空間に帰る事の無い様に。

それが、落語家。






高座の最中は観客席ですら「携帯電話」のスイッチを切るよう願う空間。





それがボクのココロの師匠。

「立川志の輔」




観客前に立つ出番を待つ時間が、



永遠に続く緊張感。




前日、舞台転換を済ませたはずのボクが冷や汗を掻く刹那の時間。







客入り後は手直し不可で誤ったら全て無為に帰すのは準備の担当たる責務。

のしかかる重圧感。






緞帳《どんちょう》
舞台と観客席を区切るテープが剥がれていないだろうか?




芯《しん》
「+」、センターラインは剥がれていないだろうか?




恐怖を数え始めたらキリがない。
職業を変え老獪となった現在でも緊張する長い時間。

失敗した事は一度も無い。
失敗は死を意味するからだ。





今後、時折語る人生内容も。
今は子供達へと登る教壇という名の寄席も。


全てこの技術が現代へ続くボクの出発点。




ただ、






当時は、
ひたすら恐怖した。





今なら多少、不退転の覚悟も、
「帰らずの魔力」もある自信がある。




人生を折り返し、場数は数え切れないくらい踏んだ筈だ。





でも、
いまだに噺家にだけはなれない。

能力が桁違いに高いのだ。






死の覚悟が高いのだ。





そうして、



高座に上がった師匠は。


もう、それはそれは。
観客を巻き込み、笑いと大絶賛の嵐の中。

乗車率200パーセントの客入り満員御礼の1時間半でした。








ボク以外💦






打ち上げで楽しそうに話す師匠や親分を横目に苦笑いしていたボクはいうまでもありません。


携帯電話を鳴らしてしまった客のせいで高座が中断した話はまた今度。

いや。封印しよう。
あの時は10滴チビった。





あとが宜しいようで。

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