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SUNTORY将棋オールスター2021②解説会(出場棋士編)

SUNTORY将棋オールスター東西対抗戦2021は、オールスターの名にふさわしく知名度・実力バランスのとれた東西10名の棋士が改めて素晴らしかった。

ファンによる人気投票選出の羽生善治九段、永瀬拓矢王座、藤井聡太竜王、豊島将之九段。
PRONTOで行われた雰囲気もオシャレな東京トーナメントを1日5連勝と破竹の勢いで権利を獲得した戸辺誠七段、横山泰明七段、佐藤秀司八段。
高勝率の若手からA級棋士まで強豪ひしめく関西トーナメントを勝ち上がった澤田真吾七段、稲葉陽八段、古賀悠聖四段。

壇上に登場され横一例に整列された姿は壮観で、どの先生もこの棋戦に参加できる晴れがましさと喜びの表情を浮かべておられた。

将棋ファンならその折り紙つきの実力を知る佐藤秀司先生や横山泰明先生に関しては、恥ずかしながらこれまでお名前を存じ上げず、この観戦をきっかけにそのトークセンスや気遣いにすっかりファンになった。

見どころ満載のこの棋戦で最も目玉となるのが、団体戦ということもあって、対局待ちの出場棋士が解説にも参加してくださるところだ。普段ならまず見られない光景に観客席は大いに湧いた。

同時に進行した第2局豊島将之九段VS横山泰明七段戦と、第3局永瀬拓矢王座VS古賀悠聖四段戦では、レジェンド羽生善治先生と藤井聡太先生のW解説が行われた。

詳しい内容はYouTubeスポニチチャンネルで動画配信されている。
【将棋オールスター】 藤井聡太竜王初解説

私は以前から羽生善治先生が将棋を解説される時の理知的な語り口が大好きだ。本題から外れてしまうので紹介のみにとどめるが、羽生先生が2013年12月5日に東大教養学部の特別講義を行った際の動画などは、当時将棋の意味が全く分からなかった私でも興味深く拝聴した。

羽生善治三冠 特別講演「格言から学ぶ将棋」
https://youtu.be/fvg2sjk5XBk

ちゃんと解説をするのはこれが初めてだと仰る藤井先生を気遣って、司会者のような進行ぶりで藤井先生からうまく言葉を引き出している。さすが、どこを取っても一流の羽生先生には隙がない。(このフレーズはこの時の対局者のかたの印象が強いが)

藤井先生は表情も柔らかく、豊島先生と今年たくさん対局してきたので、と印象を聞かれた際に、朝と夜の写真を並べられてもどっちがどっちかわからないとポーカーフェイスぶりをユーモアたっぷりに表現されていた。藤井先生安心してください、熱心な豊島ファンの私でさえ判別は難しいです、と思って大笑いした。

藤井先生が早口で符号を仰るスピードは、何度観ても理解不能なタイトル戦の感想戦をたくさん観てきて覚悟はしていたが、それでも初心者には理解が厳しかった。もっと勉強しなければと思わされた。

続いてこちらも同時に進行した第4局藤井聡太竜王VS佐藤秀司八段戦と、第5局羽生善治九段VS稲葉陽八段戦では、前期叡王戦での激闘が記憶に新しい永瀬拓矢先生と豊島将之先生のW解説が行われた。

※2022年1月4日追記
YouTubeスポニチチャンネルで永瀬豊島W解説が公開されたので仲の良いお二人をぜひご覧頂きたい。

【将棋オールスター】豊島将之九段 永瀬拓矢王座 解説

私はこのお2人の先生方に関しては、感想戦以外で会話されている姿さえ想像がつかなかったので、ツーショットがただただ斬新だった。第5期叡王戦では双方譲らず、七番勝負の第9局で決着という将棋史上稀にみる大接戦を戦い抜いたお2人なので、決着がついた後もライバル同士というイメージが強かった。

第5期 叡王戦七番勝負

しかし登場されたお2人のなんとも言えないニコイチ感。将棋が本当にお好きな事が伝わる名(迷⁈)解説ぶりだった。

登場と同時に盤面モニターに釘づけで、両対局の状況を把握しようと興味津々。放送事故かと思う約10秒ほどの沈黙に我にかえり、慌てて解説を始める豊島先生。漫才でいうところのどうも〜というつかみの挨拶無しで始まる感じだった。

永瀬先生が今日は観る将のかたが多いそうなのであまり符号が多いとよくないですかね、と反省され、豊島先生も飛車を切って後手がどれだけ攻めていけるかというところです、などとなんとかうまく伝えようと努力されるも、結局お2人とも符号、符号での解説に戻ってしまい全然直っていないところも笑いを誘った。

いつも(藤井先生と)VSしていると手の予想がついたりするんですか?という豊島先生の永瀬先生への質問に対しては、候補にも無い手を指されてしかも良い手なのでどうしようもない、と仰るのが印象的だった。実際には永瀬先生も豊島先生もAI最善手との一致率がかなり高いトップ中のトップ棋士である。

豊島先生のインタビューでもいつも感じていたことだが、トップ棋士のかたというのは相当謙遜して話されるのだなと改めて感じた。それだけ決して現状に満足せず、高い目標意識でお2人は将棋に取り組んでおられるのだろう。

観戦していた側としては、次どうするつもりなんでしょうね…おーっ、と盛り上がって楽しそうなお2人を眺めるだけで楽しかった。解説の8割は2人のハハハ、フフフ、という笑い声に満ちていたように思う。

タイトル争奪の熾烈な争いではしのぎを削っていたお2人が、立場を離れて将棋が好きな青年に戻って将棋の感想を言い合っている。仲良きことは美しき哉。なんだか微笑ましくて温かい気持ちになった。これからもこのようなイベントなどの機会に、このお2人のハイレベルな解説(感想)をぜひ聴いてみたい。

対局は関西の5勝0敗とストレートの星取となったが、一方的な展開の対局は一局も無く、30秒の早指し棋戦ならではともいえる形勢がどんどん入れ替わる内容の将棋で、見応えは抜群だった。

この対局のあと、エキシビションマッチとして東西のファン投票選出棋士によるリレー将棋が行われた。こちらもファンが観ているだけで楽しい演出が満載だったが、長くなってきたので次の③の記事で紹介したい。
(③エキシビション リレー将棋に続く)

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