「今、幸せですか?」
10年ほど前、実家へ宗教の勧誘にきた青年のことをふと思い出した。当時はひとり暮らしをしており、その日は平日で有給をとって実家に泊まっていた。
まったりと雑誌を読みながらごろごろしていた午後、玄関チャイムが鳴ったのでなんとなく出てみると、ひとりの青年がとある宗教の冊子を手に「あの…今、幸せですか?」と唐突に訊ねてきた。
咄嗟のことに驚いて「アーソウデスネ…幸せデスネ〜」と棒読みで返答すると、
「え!?平日の昼間に家にいるって無職ですよね?それでも幸せなんですか!?」と質問を重ねてくる青年。
そこは「世の中には有給休暇という制度やシフト制の勤務もあるよ?どちらにしろ今の生活に不満もないので、幸せといってもいいと思いますね〜」と大真面目に答えておいた。
青年は少し戸惑ったような表情を見せた後「そうですか」と一言残して去って行った。それだけ。
今考えると、めちゃめちゃ煽られていた気もしないではないが、彼はその後『幸せではない誰か』を見つけることができたのだろうか。
この文章を書いていたら今さら気になったのでググってみると「これ、同じ宗教の勧誘の人だよね?」と思うような話がいくつか出てきた。
……失礼すぎて誰も勧誘できていないのでは?
私の幸せ実感レベルは低めなので、それが幸せと言い切れる要因かもしれない。
例えばスーパーのお刺身のさくを眺めて、どんな豪華な海鮮丼を作れるか思案しているときにも非常にワクワクする。
特にまぐろは素晴らしい。大葉を刻んで酢飯に混ぜて、一緒にめかぶを乗せちゃったりすると最高じゃない?
とはいえ、人生は昇り調子のみとはいかないので辛い出来事だって起きる。落ち込みすぎて食事が全く摂れず急性胃腸炎になり8kg痩せたこともあったが、所詮私の苦しみは自分にしか理解できないし、幸せもまた然りだと思う。
弱った人につけいるような新興宗教も似非スピもマルチも、縋ったところで余計な煩わしさが増えるだけだ。人間関係のあるところに悩みは生まれるのだから。
台湾で出会ったとある新興宗教の信者さんには「信仰心がないのに生きられるって本当にすごいと思います、不安ではないのですか?」と本気の表情で訊かれ、思わず言葉に詰まってしまった。
信仰心がないというより節操がないのだが。お腹を壊したら得体の知れない神様にお祈りするし、嫌な人に絡まれたら縁切り神社をハシゴするし、とりあえず藁人形もなぜか常備してある。
※夫からのプレゼントなので未使用
ちなみに台湾では、今問題が取り沙汰されている韓国系のキリスト教・モルモン教・エホバの証人の方から明るく優しく控えめに信仰の勧誘を受けた。詳しくないので曖昧な表現になるが、キリスト教の亜種が向こうでは多いのかなと感じた。
もちろん台湾で主なのは仏教の信仰で、熱心に廟で祈りを捧げている姿はよく見られる光景だった。仏教徒だからと肉と魚を食べない友人もいた。卵はまだ生命ではないのでOK!と菓子パンはいつも食べていたな。
宗教も信仰も本人が選択しているなら自由だと思うので、関係なく世間話・趣味の話ができる人とは付き合える。
しかし善意であってもその信仰を強制しようという気配を感じたら、残念だけど一緒にいるのは不可能。自身が徳を積むために誰かを利用する感覚が分からない。
そもそも、まともな宗教はわざわざ勧誘してこないので「教会にゴスペルを聴きに来て」「集まりに参加して」と誘われたその時点でヤバい宗教なんだなと逃げる。
洗脳状態にあって思い込みが激しい人には極力関わらないと決めている。
というか、昔から身内や友人を脱会させようと近づいた人が逆に取り込まれて信者になったり、最悪なのが元死刑囚になってしまった人が実在するので、本来は興味を持つのも危険だと思う。
すべてを捧げたとしても、信じる者は救われるとは限らないのが残酷だな…。
この世に存在している以外の天国も地獄も、空想の物語に過ぎないと考えているため「信仰しないと地獄に落ちる」と脅されたところで「だから?」と言うだけだ。天国へ行ってきてから勧誘しないと説得力に欠けると思う。
たとえ肉うどん(※芸人さんのネタ)に生まれ変わったとしてもそれはもう私ではないし、美味しく食べられるしかないので諦めて受け入れよう。地獄へ落とされるほどの悪行はおそらくしていないはず。
しかし2世の人は、自分で選んだわけではないのに教義にも縛られるため、とても苦しい思いをしている方が多いそうで、そう考えると「近づかない」は全員ができることではない。簡単な問題ではないと知り、複雑な気持ちになる。
あと信仰は関係なく、一見して人あたりが良く親切そうな人よりも、仲良くなって遊びに行くようになったときに「他人のことなんて正直どうでも良いよね」とあっけらかんと言うタイプの人とずっと友人でいたいと思う。綺麗事を言う人より、行動がマトモな人のほうがよっぽど信頼できるね。
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