ぶどうジュースを作るには...

2020年。動物村には、コンピューターが普及していた。もう動物村は、人間のような世界になっていた。
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「コンー?今日のおやつ、コンの好きなぶどうジュースよー!」
「えっ!本当!?」
「うん!」
「やったー!」

家に帰ると…
ガチャッ!
「ただい…あれ?」
机の上に…
「なんだろ?」
『コンへ、今日のおやつはぶどうジュース…だったはずなのですが、ぶどうジュースを作る材料がありませんでした(汗)ごめんなさい。お母さんが帰ってくるまでに、ぶどう畑のウサスケさんのところにぶどうをとりに行ってくれませんか?お願いします! お母さん』
朝はあんなこと言ってたくせに…
「よし!」
僕は着替えて外に出た。

僕はコン。狐の男の子。ぶどうジュースが大好き!実は…ぶどう畑のウサコちゃんが好き。ウサコちゃんの頼みは断れないんだ…
僕は今10歳で、学校にも通っている。学校では結構人気者で、テストはほとんど90点台。今学校から帰って来た。
それに比べてお母さんは…
おっちょこちょいでいつもミスばかり。僕がどれだけ助けてあげてるか…
今日もそうだよ…
でも、ぶどうジュースは飲みたいからね。特別にとりに行ってあげるの。

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お母さんが帰ってくるのは一時間後。ここからぶどう畑のある山はあと700mくらい。そこに行くまでに、リス商店街と、蛇横丁の6丁目の住宅街を通るんだ。多分間に合うだろう。
しばらく歩いていると…
「あっ!コンくん」
狸のポン太くんが僕を呼んできた。
ポン太くんは最近僕の学校に転向して来た、ちょっとぽっちゃりしてる子。その子はまだこの街のことも知らない。
まだ時間はありそうだから、ポン太くんの話を聞くことにした。
「どうしたの?」
「郵便局に行きたいんだけど…場所がわからなくて…」
えっ!
郵便局はここから20分くらいかかる。結構時間がなくなる。
でも、こういう時に僕は助けたくなる。
「…わかった!教えてあげる!」
「ありがとう!」
「えっと、まずあそこの角を曲がって…………………」
僕は国語が苦手なので、変な説明になった。
「えっと…えっと…」
「…ごめん。よく分からないから案内してくれない?」
「う!!」
今説明するのにも5分はたったのに案内しろだあ?
普通の人は怒鳴ってるところだけど、こういうところで僕は優しいんだ。
「……いいよ。」
「本当!?ありがとう!」

郵便局で…
「ありがとうね!コンくん!」
「…うん!」
僕はポン太くんに嫌な思いをさせたくなかった。だから明るく振る舞ったんだ。
「はあ。」
山は遠くなった。多分30分はかかる!!!!!!!!!!!

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はあ!急がなきゃ!
僕は走って行った。すると…
「おお!コンくんじゃないか?」
「はあ!?」
そこにはよくお母さんが行っている魚屋さんが。
「魚、買わないのかい?」
「ああ、多分お母さんが買いに来ると思います!」
「そうかい?」
「ちょっと僕急いでいるので!」
走れ走れ走れ!
あと30分でお母さんが帰ってくる!!!!!
「おーい!コンくん!」
キキーッ!
「!?」
そこにはまたお母さんがよく行っているお肉屋さん。
先ほどと同じやりとりをして…
適当なところで、
「ちょっと僕急いでいるので!」
と言って走り抜ける。でも…
「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」「おーい!」
いろんなお店の人に呼びかけられて同じようなやりとりをした。そして
「ちょっと僕急いでいるので!」
と言い逃げる。
「はあはあはあはあはあはあはあはあはあはあはあ」
お母さん、こんなにたくさんの店に行ってるの!?
「お母さんも大変だなあ。」
あと25分!
ついに…
出口だ!
と思ったのも束の間。
「あらコンくん!」
うわっ…あの話の長いネズミおばさん…
「あの…ちょっと僕急いでいるんですが…」
「あのねえ…」
ネズミおばさんは僕を無視して話し始めた。
「あそこの猫のカップル、結婚したらしいわー!おほほほほほほほ!」
ちょっとこのおばさん、僕くらいの年の子には大人な話をする…
まるで仲のいい同い年のおばさんと話してるみたい…
「でねえ…」
おばさんは話に集中している。
こそっ
左に3歩…
「それで…」
こそっ
左に4歩…
5歩、6歩、7歩、8歩…
「よし!」
僕はなんとか抜け出した。
タッタッタッタ!
「あっぶな!」
あの人の話はいつも2時間はかかるんだよ!前には3時間くらい話してお母さんを困らせてた…
あとは住宅街…
あと15分…
行こう!!!!!

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走れ走れ走れ!
「!コンくん!」
今度は何!?
「何!?」
僕はぶっきらぼうに答えて振り返った。そのあと、言葉を失った。なぜだと思う?分からないだろう?
そこには、ウサコちゃんが立っていたんだ!
「あっ!」
「ごめん。コンくん、私、お母さんの薬を買いにきたんだ。」
「お母さん病気なの!?」
「…うん。」
「!!お大事にね。」
「うん!それで、薬屋さんに入って薬を買おうとしたら、その薬の入ってる棚が高くて…。コンくん、とってくれる?」

言い忘れてたけど、僕の街の薬屋は、本屋のような棚にたくさん薬が並んでる。
じゃあ話に戻るね?

うーん?どうしよう?あと10分しかないけれど…
ウサコちゃんの頼みは断れないからなあ。
僕はやってあげた。

そして…

「ありがとう!」
「い、いやあ、いいよ!」
そしてウサコちゃんは帰って行った。
「…ああ!!やばい!!」
やばい!あと4分!!!!!!!!
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
急いでも、間に合わない!!
けど!できるだけ急ごう!!!
タッタッタッタッタッタッ!!!!!!!!
「おーい!コンくん!」
「!??」
まただ。もういい!悪いのはあの人たち!もういい!
「はあい。」
そこにはお茶が好きな熊次郎さんが。
「お茶でも飲まないかい?今日は黒茶があるよお!」
「飲みたいですー。」
僕は熊次郎さんの家に入った。

そうして家から出て走っていると、運悪くいろんな家の人に呼び込まれ、あっという間に4分なんて過ぎて行った。

ああ。もう。ああ。最悪。もう嫌。
僕が絶望して歩いていると…………………
「おお!どうかしたのかコンくん?」
老人の声がした。
もうこれで最後にしてやろう!!
僕はその老人のもとに行った。

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その老人は…
「あっ!ワン博士!!!!」
「おお。どうしたんだ。」
このワン博士は、『時間』ということについて研究していた。
まあ、研究してると言っても……未来を見れるテレビを作ったり…もう、SFに出てくる科学者じゃん。
「それは…」
僕はさっきまでのことを話した。
「…そういうことか………………………………」
博士は何か考え込んで言った。
「じゃあ、わしの開発したタイムマシンを…」
「それは無理だよ!」
「なんで!?」
「だって…」
僕は説明した。
「もし過去に行けたとしても、そこには過去の僕がいる。僕が二人いたら大騒ぎになるじゃん!その子をここに置いていくとしても状況が理解できなくなる!だからいいよ。僕は僕なりの方法でなんとかする。ありがとうございましたー!」
僕は走って山に向かった。
話しかけて来た人もいたけど、
「ちょっと僕急いでいるので!」
と言って走って行った。

山を駆け上り、(そこまで山は高くはない。)ぶどう畑にきた。
「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ、や、やっと着いた…」
「ああ!コンくん!!!」
「あ、ウ、ウサスケさん!!」
「どうしたんだい?」
「あ、あの、ぶどうを4ふさ下さい。」
「あ、うん。」
僕はぶどうをもらった後に行った。
「あ、あの、僕、本当は5:30には帰らないといけないのですが…」
そして先ほどのことを全て話した。
「ああ、それで?」
「あの、遅く帰るとお母さんに電話してくれませんか??」
「ああ!いいよ」
プルルルルルル。プルルルルルル。プルルルルルル。ガチャッ。
「ああ、もしもし……………………」
そしてウサスケさんは電話をし始めた。
そして…
「OKって。」
「ありがとうございます!!!!」
そして僕は家に帰って行った。

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6:08
鍵を開け、入っていった。
ガチャッ。
「ただい…あれ!?」
お母さんがいない。
はあ!?あんなに急いで帰って来たのに…
「もう!待ってあげるか…」
僕はテレビを見たり、ずっと読んでなかった小説を読んだりして、時間を潰した。

6:40
流石におかしい。
僕は探しにいくことにした。
着替えて…
「よし。」
ガチャッ
お母さんが立っている!

コンが立っている!

「えっ!」
「えっ!」
「お母さん!」
僕は飛びついた。
「もお!心配したじゃん!!!!」
「ごめんごめん。今日のデザートはぶどうジュースにするからね!」
「!!!!やったあ!!!!!!!!!」
あははははは!

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